幼馴染である執事様は外れスキル持ちの私でも溺愛してくれるらしい
私が外れスキルを得たのはほんの数日前のことである。
我が家、アルスト家では代々国に仕える士官を排出しており、私ことネネカ・アルストはアルスト家唯一の女の子だ。
そのため、幼少期から家族からは疎まれてきた。
だが私はお父様、お母様が大好きだ。だから必死で頑張ってきたのだけれど……。
「あなたはもう、この家には必要ありません」
十五歳の誕生日。スキルの鑑定を受けたところ、私は〈家事〉と言う外れスキルを手に入れていたらしい。
その事実を知った途端、私の視界は真っ暗になった。あれほど愛していた家族にもついに見放されてしまった。
もうお終いなのかもしれない。
「どうしましょう……」
涙を堪えながら、私は自室のベッドで眠っていた。ここで眠るのも今日が最後。
明日にはどこかの家でメイドとして働かされるらしい。
悔しい……あれほど頑張ってきたのに……!
考えていると、涙が止まらなくなってくる。どんどん溢れてくる。
誰でもいい。誰か、私に手を差し伸べてくれないかな……。
「お嬢様! 大丈夫でございますか!?」
バタンと扉が大きな音を立てて開いた。
私は何事かと思い、開いた扉の方を見る。
――シュバル!
私の幼馴染であり、我が家に仕えている執事がそこにはいたのだ。
「もうっ! ノックぐらいしなさいよ!」
せっかく来てくれたのに、私は強がってしまう。
「す、すみません……」
しゅん、と顔を暗くするシュバル。
違うの。私は……!
言おうとしたのだけれど、既のところでつぐんでしまう。
彼に助けを求めたって、何も変わらない。家を出ることには変わりない。
その時だった。
「……ネネカ様、俺も着いて行かせてください」
お願いします、と頭を下げてきたのだ。
「えっと……理由を訊いても構わないかしら……」
分からない。彼はどうして、こんな私と一緒に出ていこうとしているのだ。
私に着いてきたって、良いことなんて一つもないのに……。
「俺……ずっと前から、ネネカ様――いや、ネネカのことが好きだったんだ」
――え?
あまりにも突飛なことで、私は口元を覆ってしまう。
彼は、私のことを好きと言ったの?
こんな、外れスキル持ちで、家を出ろと言われた私のことを?
「嘘、嘘、嘘!」
「本当です!」
本当に嘘だと思った。一瞬、そんなでまかせを言う彼のことが本気で嫌いになってしまい、枕を投げつけてしまう。
けれど、彼は私に近づいてきて――
「大丈夫です。落ち着いてください」
私を抱きしめてくれたのだ。
それからはあまり覚えていない。
ただ、ひたすらに泣きじゃくったことだけは確かだ。
結局、私は家を追放されたけれど。
今も時々、彼は私を抱きしめてくれる。
私は、今、幸せです。
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