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異世界でも普通が良いです  作者: シバトヨ
5/5

ボスは普通が良いです

 俺の蹂躙劇が続く。という予想は外れた。

 が、狼達は、襲いかかってくる獲物はいないかと、挑発行為を繰り返しながら洞窟を進むこととなった。

 あまりにも酷いので内容は割愛するが……俺の精神はかなり削られた。


 そして、ボス部屋の前。

 『初心者の洞窟』と呼ばれているわりに、立派な両開きの扉が閉ざされていた。

「この中に……」

「あぁ。我らがボスがいる」

 俺は緊張のせいで喉をならす。

 ここまでの道中で聞いたボスの情報を整理しておこう。うん。


 まず、体の大きさ。

 俺の周りにいる狼も、熊みたいな巨体たが……ボスはこいつらの二倍から三倍の大きさらしい。

 その体躯から放たれる一撃は、まさしく必殺の一撃。少なくとも、ここいらの生き物には防ぎきれるだけの堅さはない。俺なんか、周りの狼でも致命傷になること間違いなしだというのに。

 さらに、かなりの巨躯にも関わらず、草原を走り抜ける速度は種族一位だとか。

「ボスが疾走すれば、それだけで雑魚は死ぬ」

 そんな発言すら飛び出すしまつだ。

 俺の想像だが……四トントラックが高速道路を駆け抜けていくような感じだろうか。とにかく、大きさと速度がヤバイのだろう。


 さて。

 帰りたい気分になってきたところだが、目の前にある扉は、魔物や動物では触れることしか出来ないらしい。

 人間は動物では? と、俺は思うのだが……理屈はさっぱりだ。

 ともかく、この場では俺にしか開くことが出来ない扉の奥には、化け物のような狼がいるわけだ。

「……いきなり殺されたりしないだろうな?」

「大丈夫だ」

 ……本当か?

 同族のボスだから、なんていうの? いい人補正? でも入ってんじゃねぇのか?

「だ、大丈夫だと言っているだろうっ!? そんな眼でっ! 俺を見るんじゃないっ!!」

 ジトーッと見ていたら、慌てふためくように言い募る狼。

 怪しさ満点だが、今断れば、即座に餌になるだろうしなぁ……。

「はぁ……そんじゃあ、開けるぞ?」

 俺は両方の扉に手を付き、力強く押し開いた。




 ボス部屋というのは、なぜ広く造られているのか。

 ゲームなんかだと、縦横無尽に動けるようにするため。なんて理由を思い浮かべるわけなんだが、現実だとよく分からん。

 この『初心者の洞窟』も、ゲームなんかと同じように、かなりの広さが設けられていた。

 その中央に、僅かな光すらも反射させている毛玉が鎮座していた。

「ボスっ!!」

 俺の周りにいた六頭の狼は、その巨大な毛玉へと駆け寄っていく。

 扉の側で取り残された俺は、その様子を眺めては思いを馳せる。


 どうやって逃げようか。


 と。

 無理だな。うん。まず、想像よりもデカイ。

 普通、想像よりも一割か二割くらい小さいなぁ~と思うだろう。

 ……俺の想像を軽く越えてやがった。

「さて……」

「はい、ボス……」

 ボスという巨大な狼と、その周りにいる熊並みの狼が六頭。

 そいつらが一斉に、丸腰で帰宅部だった俺を見つめてくる。

「いやいや。あの目付きは睨むというのが正しいからな」

 というセルフツッコミを入れるも、俺が捕食される未来しか見えてこない。


 か、考えろっ! 俺っ!!

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