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異世界でも普通が良いです  作者: シバトヨ
3/5

翻訳は普通が良いです

 元の場所まで戻ってきた。

 看板の文字も、日本語に変換されるらしく、ちゃんと読むことが出来るようになった。なったわけなんだが……

「どう見ても街や村の名前じゃねぇな」

 覆面のお兄さんに出会った街の名は『スタト』というらしい。

 で、肝心の反対側なんだが……『初心者の洞窟』って名前の街なんだろう。

 名前から察するに、ドワーフとかが炭鉱とかを掘り進んで出来た工業都市に違いない。うん。

「って、そんなわけあるかっ!」

 どう読んでも魔物が出る感じのダンジョンとかだろっ!

 っと、セルフボケとツッコミをしていた。

「……仕方がない」

 覆面のお兄さんには会いたくないが、街に戻るとするか。

 そんな諦めモード全開で足を踏み出したところで、俺は気付いた。


 一匹の熊みたいな犬……というか、狼に。


 その一匹は、二匹、三匹と増殖を繰り返し(いや、本当に増殖した訳じゃねぇけど)、あっという間に六頭の狼に囲まれてしまった。


 鋭い牙と爪を持つ熊みたいな狼が六体。

 対して俺は、丸腰な上に翻訳スキルのみ。なお、小学生の頃はバスケ部で、中、高、大と体育以外の運動はゼロ。

 あれ? 俺、死ぬんじゃね?


 と、とにかく!

「無抵抗で死んでたまるかっ!」

 と、大声を出しながらも、プロボクサーを意識して両手の拳を顎の近くで構える。

 俺の大声にビビったのか、狼らは少しだけ身を引いた。

 お? これはワンチャン勝てるんじゃねぇ? わんちゃんだけに。

「おい、あれって、俺らの言葉じゃね?」

 ……うん?

 どこからか、声が聞こえてくる。辺りを見渡しても、狼しかいない見晴らしのいい草原のど真ん中で。

「おいおい、アレが獣人に見えるのか? どう見ても雑魚だろ?」

「誰が雑魚だっ!? しばくぞっ!」

 まぁ丸腰の帰宅部だったがよ。これでも商社マンとして足腰は鍛わってんだよ。

「お、おい、マジかよ……」

「俺の雑魚発言が聞こえたのか?」

「だが、反応しているように見えたでおじゃる」

「ヘイボーイ! リッスン出来るなら、セイホー言うてみ?」

「なんでラッパーみたいになってんだよ、お前は」

 と、一番近くまで歩いて寄ってきた狼の頭部にチョップを入れる。もちろん、優しくだ。パファリンよりも優しさ成分多めだ。

「「「「「「…………マジかよ」」」」」」

 六頭の声がハモった。


 どうやら俺の得た翻訳スキルは、人間に限らず、言葉を持つ生物なら日本語に変換する。という、馬鹿げたものだったようだ。

 お陰で動物の声まで分かるようになった。


 あ、で。

「なんで俺が、狼のボスに会わなきゃならんのだ?」

 六頭の狼らに引っ張られるようにして、俺は『初心者の洞窟』へとやって来た。

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