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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
三章 神谷神奈と文芸部
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33.1 共通――宇宙人?――

2025/09/23 文章一部修正









 休日。神奈は夢咲と二人、彼女が最近よく行く本屋へ出掛けている。

 目的地の本屋を目指す神奈達は商店街を歩きながら話をしていた。


 ――宇宙人。その存在を神奈に知らせてくれたのは夢咲だ。

 宇宙人撃退について夢咲は礼を言っていたが……彼女は知らない。まだその宇宙人が地球に居続けていることを。


 宇宙人の中でもディスト、レイの二人は、夢咲が正体を知らないので会っても問題ない。しかし一人だけ、グラヴィーだけは別。元々夢咲が語っていた地球の危機は彼のこと。姿を予知夢で見ている夢咲が彼と会ってしまえば、宇宙人を追い出していないことが知られてしまう。


 それはマズい。まるで騙しているようだと神奈は一人悩む。

 撃退したと夢咲が思い込んでいるだけで、騙したことになるのかはグレーゾーンだが、彼女からすれば騙されたと思ってもおかしくない。結論として、彼女とグラヴィーは絶対会わせないよう上手く立ち回る必要がある。


「あの本屋よ。最近行くことが多いの」


「あれか、普通の本屋だな」


「逆に普通じゃない本屋が見てみたい気がするけど……」


 夢咲が本屋の入口付近で立ち止まる。


「神奈さん、あれ」


 夢咲が指す方向には、本を買ったのかビニール袋を持った青髪の少年。間違いなく、変装を得意とするトルバ人のグラヴィーだった。なんという不幸なのか。会わせないようにする努力はする前に終わった。


「どれ?」


 とりあえず神奈はしらを切ってみる。


「あれってどう見ても――」


「いやごめんどれ?」


「私が写真を見せたよね?」


 夢咲が見てくるので神奈は顔を逸らす。


「宇宙人だよね?」


 ジト目で見てくるので神奈は突然変な踊りをしてみた。

 両手両足をくねくねと、ワカメのように動かす奇行に走る。


(いや違う、やりたくてやってるわけじゃない! 何か誤魔化す方法ないかなと思っていたらこうなっただけだ! 実際効果はありそうだけど……精神的苦痛を伴うな)


 通行人が変なものを見る目で神奈を見て去っていく。

 夢咲は呆気にとられて、いつの間にか目前に来ていたグラヴィーも信じられないものを見る目で見ている。


「……お前、バカか?」


 その一言で神奈はやっていることがバカらしくなって終わらせる。


「ねえ、あなたは宇宙人なの?」


「夢咲さん、それもし別人だったら変な人扱いされるよ?」


 神奈はグラヴィーに対して目配せして状況を伝える。

 グラヴィーが目配せに頷いたので神奈は一安心した。


「お前達からするならそうだが?」


「なんで馬鹿正直に答えてんだよ! お前がバカじゃん!」


「はぁ? どうせお前の関係者だろう。なら隠してもしょうがないだろうに」


「隠せよ! お前はさっきの私を見て何も思わなかったのか!?」


「……バカだと思った」


 今すぐぶん殴りたい。神奈が拳を振りかぶるとグラヴィーは怯んで一歩下がる。このまま殴りたかったが、夢咲が説明しろとばかりに凝視してくるので、神奈は一旦止めて自分の家に三人で行くことにした。詳細を説明するためにディストとレイも呼ぶ。宇宙人組を揃えたのは隠すことを諦めたからだ。


 神谷家にて鋭い目線を神奈達に向ける夢咲は「それで」と切り出す。

 因みにテーブルの傍の椅子は四つなので、グラヴィーだけ床に正座している。


「この三人が宇宙人というわけ?」


「……そうなんです」


「噓、吐いてたの?」


「違う! とは言えないか。でも信じてくれ、悪気があったわけじゃない。世の中知らない方がいいことだってあるだろ?」


「少なくとも、これは知っておいた方がいい部類だと思うんだけど」


 神奈と夢咲の雰囲気がピリッとしたことをレイが感じ取り、二人の間に手を伸ばして「まあまあ」と宥める。そんな他人事に思っていそうな彼に夢咲はジト目を向ける。


「あなたも宇宙人だったのね。レイ君、だったよね」


「……そうです」


「噓、吐いてたの?」


「違う! とは言えないね。でも信じてくれ、悪気があったわけじゃない。世の中知らない方がいいこともあるし」


「少なくとも知っておいた方がいい部類の話だと思うんだけど! なんで同じこと言うの!?」


 それから神奈は夢咲に全てを話した。

 グラヴィーやディストとの戦いは以前話したので、それ以降の出来事。レイとの戦闘、和解から、エクエスとの死闘まで語る。宇宙人の存在に一早く気付いたのは他ならぬ夢咲だから、神奈は最初から隠さず話すべきだったのだ。


 宇宙人を倒してほしいというのが夢咲の願い。それに反して神奈はレイを助けるために行動した。どういう理由と結果であろうと約束を破ったも同然。夢咲にどんな顔をされるか、どんなことを言われるかを恐れ、神奈は今まで言えなかったのである。


「つまり、危険はないから安心してほしいってことなの?」


「僕はまだ諦めていないぞ」


 グラヴィーが余計なことを言った。


「空気読めや!」


「どういうこと?」


「僕はレイのように甘くない。もし神谷神奈が何かの拍子に死んでしまったら、その時は侵略を再開する!」


「いや大丈夫大丈夫、私頑丈だから! てかグラヴィー空気読んでくれよ! 確かにお前は侵略一時停止状態だけどそれ今言う必要ないよね!?」


 夢咲は深くため息を吐いて頭を抱える。


「もう、いいよ。神奈さんが生きているだけで抑止力になるなら、あと数十年以上は平和でしょうし。それにそれくらい経てば情くらい沸くでしょうし」


 結局、全てを終わらせたのは神奈だ。神奈がいなければレイが地球を侵略していた。もし出来なくてもエクエスが侵略していた。地球侵略の危機から救ったのは神奈なのだから、彼女の好きにさせようと夢咲は諦めたのだ。


「長年使ってた玩具とか中々捨てられないよな、そんな感じか」


「スケールが違うだろ。というか、いつまで僕を正座させておくつもりだ! 客人に対するもてなしがなってないぞ貴様!」


「誰が客人だよ! そもそもお前が宇宙人なの隠してればよかったのに!」


「そういえばグラヴィー、買いたがっていた本は買えたのかい?」


 神奈とグラヴィーが口論していると、レイがふと思い出したように問う。 


「ん、買えたとも。僕が読み終わったら読んでいいぞ。ただしページを折り曲げたり汚れをつけたら許さないが」


 グラヴィーの言葉を聞いて夢咲の目が輝く。

 本が大好きな彼女が本の話題に飛びつかないわけがない。


「あなた、本が好きなの?」


「ああ、以前からな。トルバでもよく図書館に行っていた」


「そう……誤解していたわ。本好きな人間に悪い人はいないよね」


 侵略されるかもと恐れていたのが嘘のように、あからさまな手のひら返し。神奈が「極論すぎないそれ?」と疑問を呈すが聞き入れられない。今までの話から、グラヴィーが悪人ではないかもしれないが善人でもないと分かるはずなのだが。


 グラヴィーと夢咲はシリーズのミステリーものだったり、恋愛ものだったり本の話題で盛り上がる。本の話をしてから二時間半が経過したのに終わる素振りがない。


「ねえ、それでやっぱり読みたいのは女王シリーズ最新巻だよね! 悪魔の動向も気になるし、一巻からの伏線も明かされるかもしれないし!」


「女王シリーズか……。確かに涙を誘う感動ものではあるな。明日発売だったし僕は買いに行くか」


「あのさ、自分から家に上げといてなんだけど……」


 我慢できずに神奈が話に割って入ると、二人が息を合わせたように「ん?」と向き直る。


「もう帰ってくれない?」


 二人は神奈に謝ってからあっさり家を出てどこかへ行く。どうやらまだ話す気でいるらしく、それを察したレイとディストは互いの顔を見て頷く。宇宙人二人は神奈の家に残るつもりらしい。


「ゲームでもしないかい? 三人用で何かないかな?」


「ああそれならモンスターハント、通称モンハトがあるからやろうか。あれなら三人でも出来るから」


「ふっ、いいのか? 俺は弓しか使わないぞ」

「そうなのかい? 僕は太刀派だけど」

「私はボウガン派だな」


 結局その後は三人で遊んでから解散した。

 この一件後、夢咲はグラヴィーとよく話をするようになる。本の話題で盛り上がるので、グラヴィーが小学校に……というか、文芸部にいないことを悔やんでいた。


「仲直り……元から仲良かったわけじゃないから違うか。なんていうのかな? 誤解が解けたってのも微妙に違うな」


「普通に友達になった。それでいいんじゃありませんか?」


「そうだな、それだ」


 たとえ母星が違っても、趣味が一緒ならすぐに仲良くなれるだろう。

 しかしモンハトではディストが三回死んでクエストを失敗したせいで、神奈達の間には少しピリピリした空気が漂うことになった。母星が違っても友達になり喧嘩することもあるのだ。









神奈「宇宙人もゲームとかするんだな」

グラヴィー「そ、そうだな……ス、スク○ニとか任○堂とかやるな!」

神奈「それは会社だよ! お前はやらないことが証明されたな……」


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