283 討伐――それぞれの想い――
伊世高校校庭、平坦なグラウンド。
その場所で二人が幾重にも衝突し合っていた。
校長であるアムダスと、生徒である和猫の二人だ。
戦闘、というよりは稽古の方が合っている。先程からアムダスが剣を振るうばかりで、和猫からは一切攻撃をしていない。
身長ほどある大剣をアムダスが振って、和猫はそれを小指で止める。自信とかプライドとかが粉微塵になる稽古だが気にする余裕はない。
一歩踏み込んでアムダスが大剣を振り下ろす。
「スキル〈絶つツルギ〉!」
切れ味を上昇させるスキルを使用したにもかかわらず、和猫が取った行動は変わらず小指で受け止められる。爪すら斬れないのには苦笑するしかない。
「ここまでにしましょうかあ」
欠伸しながら告げる和猫にアムダスは賛同する。
もうこうして稽古を始めて三時間は経つ。一度くらい休憩をはさんでも文句など出るはずもない。
剣を地面に突き立ててからアムダスのみ腰を下ろす。
「ふぅ、ここまで一方的だと自信なくなるね」
ここまで戦力差が開いていれば誰でも自信はなくなるが、特にアムダスは人一倍落ち込んでいた。
異世界の勇者である彼は魔王を討伐して世界を救っている。だというのにそこから光天使、神をも喰らう犬、深山和猫と全力でやっても勝ち目が薄い相手ばかり遭遇する。まあ和猫は別に敵ではないので実力云々は問題ない。
「いやいや、かなり強いですよ校長。私が知ってる中なら四百八十番目くらいに」
「微妙な数字に喜んでいいのか分からないな」
ふとアムダスは空を見上げる。
青空は綺麗であるが、なぜか雲の形がよく変わっていた。唐突に穴が開いたり消滅したりしている。
空を見て思い浮かぶのは魔人という脅威に立ち向かっているだろう生徒と教師。あの神をも喰らう犬にも勝利した神奈がいるためそこまで心配はしていない……とはいえ焔の発言から考えれば相当な手練れであることは間違いない。少し心配になってしまうのは仕方ないことだろう。
「彼女達は大丈夫だろうか……」
「うーん、平気そうですけどねえ」
アムダスの独り言だったのだが和猫は空を見て答える。
自分より圧倒的に強い人が言うのだから問題ないだろうと心が安らぐ。
「……どうして」
「はい?」
「今さら聞くのもおかしいと思うんだけど、どうして君は俺に手を貸してくれたんだ? この世界に来て何も分からなかった俺に色々教えてくれたのは、強者を集めた学校を造ろうと提案したのは、こうして俺の修行に付き合ってくれるのは……どうしてだ?」
まだこの世界に転移したばかりの頃、当然異世界の知識などないアムダスは死を覚悟していた。
世界が違えば様々なことが違う。言語、生活、通貨、危険度、どれもこれも違いすぎて生きていく自信はあまりなかった。それでも今日まで生きてこれているのは、転移して五日目に声を掛けてきた和猫のおかげである。
五日も経てばそれなりに学習はできる。
この世界に魔物は少ない。通貨に紙が交じっている。何やら難しい言語を操る。魔法は秘匿されている。スキルが存在しない。海が広い。……などなど数えきれない程違いはある。
今後どうしようかと思い悩むアムダスの元に突如現れたのが和猫なのだ。彼女のおかげで色々助かっているのは感謝してもしきれない。
「いやあ私も個人的にアレが鬱陶しくなりましてですねえ。校長の境遇には同情しましたけど、私的には都合がよかったので利用したんですよ。まあつまり私達はギブアンドテイクな関係ってことかな」
「そのギブアンドテイクの関係とやらで目的は達成できそうかな。光天使を生み出す存在について何か手がかりは……」
「さぁ、そこらへんはまだまだ……まあただ、近々全ての片が付きそうですよ。ずっと傍観していた連中も本気を出したことだし、天敵も現れそうですし」
言葉の一つ一つをアムダスは理解できていない。どうにも和猫の言葉は難しい、というより知らない情報から構築されているために分からないのだ。
突然、空を見上げている和猫の瞳が少し大きく広がった。
「まあとにかく続きをしましょうか。次は空に向かって最大の一撃を放ってください。どれほどの力が現段階であるか見ておきたいです」
「分かった、全力で奥義を放とう」
アムダスは全身の神経を研ぎ澄ます。
これを行う意味など考えずに無心となり、己の中にあるエネルギーを剣へと集中させていく。
軽く息を吸い、大きく吐き出すと同時に前方へ踏み込む。
「スキル〈星光竜滅斬〉!」
一等星の如き三日月状の光が剣から放たれる。
最強の種族とされる竜すら一撃で消滅するような威力の斬撃刃。大抵の生命体は余波だけで消し飛ぶアムダスの誇る奥義であり、最大最強のスキル。
それが青空へと向かっていき――
「爆発的向上」
――和猫が指を鳴らした瞬間、五倍以上に巨大化した。
いきなり起きた異常にアムダスは目を見開く。
明らかに和猫の仕業。しかしそれでは最大の技を見たいという先程の発言と矛盾している。どうしてそんなことをしたのか問いたいところだが、周囲の物質を消滅させながら空へ進むエネルギーから目が離せない。
凄まじい速度で飛んでいくそれはやがて――
「あ、そういえば深山さん今日語尾が抜けてるな……」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!?」
* * *
聖剣の形状になったソラシドを持って神奈と速人の二人は敵を見据える。
全身に大ダメージを負っていた二人であったが、ソラシドを手にした瞬間痛みが緩和された。怪我が完治したわけではなくとも強大なパワーアップにより僅かに回復したのだ。
「……ソラシド、だよな?」
「聖剣とやらの姿か」
『母上、父上、大丈夫そうで何よりです』
「いやちょっと治ったけどさっきまで一部粉砕されてたからね?」
空に浮かぶクウリの視線が二人の元へと下りた。最優先すべきは聖剣を持つ相手の排除……脅威となる者はそれしかいないからである。
神奈達とクウリの視線と敵意が交錯する。
「さて、気分スッキリしたし」
「家族団欒に邪魔な輩を排除するか」
微笑を浮かべて言い放つ……と、神奈がうげっというような顔で速人を見やる。
「……似合わねえええ」
「まずはお前からぶった斬ってやろうか」
『二人共集中してください! 敵は、強大です!』
ソラシドの言う通り真の実力を発揮できるクウリは強敵だろう。しかし神奈達はこの状況で、敗北という二文字を全く感じない程自信に満ち溢れていた。
聖剣によるパワーアップで一時的に強くなっている二人の戦闘能力値を、並の天使達が見たなら驚愕で腰を抜かしても、ショック死してもおかしくない。――もっともそれはクウリ相手でも同じだが。
「……時閃剣」
憎悪に駆られた魔人も冷静に神奈達の力を分析する。
自分と同等、もしくはそれ以上。極めて冷静に目を凝らして推し量る。
力量差が僅差であるのは間違いないので先手は譲れない。クウリはすかさず剣を振るい斬撃刃を飛ばす。
――それは神奈達の飛ばした斬撃刃とぶつかって爆発した。
小さく舌打ちしたクウリは接近戦を選び降下していくが、神奈達も同じく接近戦を望んで上昇していく。
空中で二本の剣がぶつかり合い、それを中心として数百メートル規模の衝撃波の爆発が起こる。
「やはり恐ろしい。聖剣、そしてお前達……組み合わさると凄まじい」
「素直に認めるんだな。今の私達三人には誰も勝てないってことを!」
――クウリの脇腹に神奈の蹴りが突き刺さる。
魔力を集中させて一気に放出することで、作用反作用の法則を利用して加速する技術――魔力加速。それにより速度が上昇していた左足での蹴りには、さすがのクウリも反応できない。
体勢が崩されたことで現れた致命的な隙。
すかさず神奈達はソラシドを振るも、クウリも体勢が整わないまま無理に時閃剣で迎え撃つ。そして両者の武器が弾かれると、一度距離をとって体勢を整えようとクウリは背を向けて逃げる。
背を向けるという行為は戦いにおいて愚策でしかない。あえて弱点を晒すような行為に対し、神奈達は当然追う。
だがそこで、十分な距離をとれたクウリが小さくUターンした。
逃亡したわけではないのだ、不利に感じた戦況をどうにかするための策。愚策だろうとなんだろうと要は使いよう。戦闘においての駆け引きだ。
急な方向転換と振り上げられた時閃剣に神奈達は焦る。
神奈は左に、速人は右に、二人が逆方向に躱そうとしたことにより動きが止まった。普段なら難なく躱せただろうが、ソラシドを手に持っている今は息をぴったりと合わせなければ致命的な隙になってしまう。
クウリの時閃剣が向かう先は速人だ。
先程の急加速した神奈だと避けられる可能性があるので、実力的に一歩劣る速人へと狙いを定めていた。
「不動の空気」
それでも速人とて抜群の戦闘センスがある。
唯一使える魔法で右側の空気を固体とし、蹴ることで空中でも体勢を変えて迫る時閃剣から逃れる。
左に移動したことで神奈が速人の肩に押され、それに苛つきながらもソラシドでクウリの右腕を斬り飛ばす。
紫の鮮血が噴出し、痛みに顔を歪めるとクウリは高速で後ろに下がった。
「おい今のは左に避けるだろ。ていうかもうお前ソラシド放せよ、戦いづらいから」
「何を言っている、今のは右だろう。というかお前が放せ、剣を使ったこともないんだから俺が戦った方がいいに決まっている」
さっきまでの緊張感はどこへやら、お互いを睨んで「はあ?」と神奈達は口喧嘩を始めた。
実際にソラシドを二人で持って戦うと、常に二人三脚のような状態で戦わなければならないので動きが制限されるのは確かだ。互いが互いを邪魔だと思いつつもクウリ相手にここまでやれるのは、高い実力あってこそである。
『ダメです母上父上! どっちかが放したらダメですからね!』
突如言い放たれた言葉に神奈達は睨むのを止めて、少し照れたような表情と仕草で目を逸らす。
「なっ、なんだよソラシドおぉ~二人に握られてたいのお? だったらしょうがないから隼を許してやってもいいけどお」
「ふっ、気に入らんが気持ちは分かるぞ。幼子が親を求めるのは至極当然だからな。よって神谷神奈、俺と一緒に持つことを許してやる」
再び「はあ?」と喧嘩腰で互いを睨む神奈達に、ソラシドが真実を語る。
『そういう気持ちも確かにあるんですけど……感じるんです。母上も父上も、覚醒した僕を単独で持つことができない……小さくとも確かに存在する悪の心が、聖剣の姿の僕を拒絶させようとしているんです。どっちかが放したらその瞬間に持っている一人の肉体にダメージが……』
朧気ながら神奈達は焔の一例を目にしていた。
悪人というほどでもないが、決して自分達を善人と言いきれるわけでもない。焔の二の舞になる可能性は高いと思い、ソラシドの言葉を親バカ的感情抜きにして信じる。
「だとよ殺し屋」
「だとさ馬鹿力」
「馬鹿力関係ないだろ」
一方。クウリはといえば、アホらしいやり取りを聞かされて苛立ちを抑えられないでいる。
右腕を斬り飛ばされたうえ、完全に舐められているので怒りが湧く。全身を小刻みに震えさせて「増殖」と小さく呟いた。
クウリから新しいクウリが現れるが――右腕を欠損していた。これには分身を出した本人も目を剥いて驚く。
知らなかったのだ。これまで怪我をしたことはほとんどなく、あっても由治を相手にしたとき以外は掠り傷。まさか〈増殖〉に欠点があるなど考えもしなかった。
(右腕がないのは俺様も同じ。つまり本当に俺様の身体をもう一つ作っているというわけか……だが、左腕はある。これで腕は分身体含めて二本、そしてもっと増やせば有利になるのは間違いない。この勝負に俺様の負けはない!)
自信過剰と一概には言えない。無限増殖できる能力など持っていれば便利ゆえに敗北など無縁だからだ。目前にいるのは由治ではない、強いといっても善戦できる程度でしかない。それならば何も恐れることはない。
「終わりにしてやる。目障りな人間共、そして聖剣よ! 俺様の絶大な力によって滅ぼされるがいい!」
総勢五人のクウリが神奈達へと向かう。
すぐに反応して迎撃する神奈達だが数の差で防戦一方になる。左腕でしか攻撃しないとはいえクウリが実力者であることに変わりない。それを五人相手にするとなれば相当に体力と精神を削られる。さらには二人の動きがぎこちないことにも戦況の有利さを加速させていた。
踊るように移動し攻撃するクウリに翻弄されつつも、神奈達は必死に時閃剣を防ぐ。途中防ぎきれずに二人の体にはいくつもの小さな傷がつけられる。
単純に脅威は聖剣のみ。クウリが警戒するのはそれだけで他は恐れもせずに突っ込んでいく。いくら殴られようが蹴られようが知ったことではない。ダメージがゼロなら何も怖くないのだ。
「隼、策がある! 協力しろ!」
「なんだ早く言え!」
戦いの隙を見ながら神奈達が作戦会議を始める。
小声で聞き取れないクウリだが何も問題などないのだ。気をつけるべきは聖剣だと思っておけば、自分は目前の敵からは無敵でいられるのだから。
やがて作戦会議が終了したのか神奈達が口角を上げる。
「どんな策を思いついたのか知らんが……往生際が悪い! 潔く生涯を閉じろ!」
「はっ、やだね! そうだろ隼あああ!」
「死ぬのはお前だ、ついでに暑苦しいバカもな」
前後左右から攻撃するクウリから目を離さずに神奈達は上昇する。
見失う程の速度ではないので五人のクウリは追いかけ、ソラシドが一人のクウリに向けられているのに気付く。
「不動の空気」
空中で逆さまになっている神奈達は、固体化された足元の空気を思いっきり踏みしめて急降下する。一直線に向かうのは先程の攻防で背後にいることが多かった個体。
「バカがっそんな単調な攻撃が当たるか間抜けめええ!」
ただ単に速いだけの刺突。
少し軌道から逸れれば躱せる。その隙を突いて五人で串刺しにしてやればいいと思い、愚策を嗤う。
「魔力加速」
そう、躱せるはずだった――軌道が直線状なら。
躱した方向に向けて、神奈達が加速したうえで斬りかかってきた。
魔力放出により方向転換したのだとクウリは遅れて気付く。
(愚策? 単調? 何をバカな……一番おめでたい頭をしていたのは俺様だったのだ。この人間という種族を甘く見ていた俺様こそ……)
ソラシドの向きが変わって、狙いを定められていた個体は勢いよく突貫された。
心臓を的確に貫かれて紫の血液が大量に噴出する。吐血の量も半端ではない。
「本体はお前だ。ずっと目を離してなかったんだよ、分身出してからも本体からはさ」
「背後に回っていることが多いのも攻撃を恐れたからだ。ソラシドだけがお前の脅威だからな」
貫かれた個体の視界は霞んでいく。
ソラシドによる反撃を警戒して背後に回っていたこと。分身体と何度も交差しているにもかかわらず見失わなかったこと。どちらも見事としか表せない――だから嗤う。
息を切らしている神奈達は異常に気がつく。
刺殺された個体は落ちていくが、どれだけ時間が経っても分身体が消えることはない――なぜなら本体が健在だから。
「惜しかったなあ、実に! 実に惜しかったなあ人間!」
声が神奈達の元まで届くと同時、周囲に残存しているクウリ四人が時閃剣を振るう。
なんとかソラシドで二撃は防御したものの、残りの二撃は神奈と速人の肩から胸辺りまで切り裂いた。すぐに膨大な魔力で傷が塞がり始めるが深すぎて治りは遅い。
「すごいよお前達は、だからこちらも策を講じてよかった」
神奈達よりさらに上空に――もう一人のクウリ、本体がいた。
先程言い当てられたことは承知しているうえでのデコイだ。背後から例の個体が攻撃していたのも、それを理解しているからこそ捨て石になる覚悟を持っての囮。
クウリは神奈達が目を離さないのを感じていた。だから〈増殖〉で分身体を出現させたとき、神奈達の視線を読んでバレないように前面にもう一体出現させたのだ。そして五体と思わせた後に、囮の動きに合わせるよう飛翔しつつタイミングを見計らってもっと上空へと避難し、高みの見物を決め込んでいた。
「こうして自分の策に相手が嵌まるというのは実に気分がいい! さあフィナーレだ、無様にこの俺様へとその死に様を見せてみろ!」
意気揚々と声を上げて本体含めたクウリは時閃剣を振りかぶる。
そして分身体が――突如飛来してきた巨大な斬撃刃と一緒に本体へと迫る。
間抜けにも「は?」と呟いてすぐに本体であるクウリも斬撃刃にのみ込まれた。そのまま暗き世界へと旅立つのを誰にも止められない。
悲鳴を上げながらもがくクウリは宇宙へ追い出され、斬撃刃が月を両断した衝撃と爆風によって偶然脱出できた。もし脱出できなければ斬撃刃と一緒に遥か彼方にまで飛んでいくところであった。
両断された月は切り口から崩れていき、それを呆然と眺めながらクウリは思い出す。
(月……そういえば俺様はここに来たかったんだ。あんなことさえなければ俺様は……そうだ、あんな悲劇が起きる場所などなくなってしまえばいい)
宇宙空間を漂うクウリは魔力を利用した念力で、割れた月を引き寄せる。
月面にサンドイッチされたクウリは限界まで魔力を引き出す。物理的に半月となった二つに腕を突き刺し、天使と悪魔の翼を動かして――地球へと向かう。
巨大隕石など比ではない大きさ……地球の約三分の一の天体が落ちれば大規模な被害が出ることは間違いない。確実に地球と月は爆散する。
凄まじい速度で落ちていき、大気圏にまで侵入し、そのまま神奈達の元まで急降下していく。
「潰れろ……! 消え去れ……! 全て滅びるがいい……!」
「そんなわけにいくかよ」
――眩い白光を纏う誰かが軌道上に浮いている。
聖剣としての力を最大限発揮して、白く光る魔力で神奈と速人を包み込むソラシド。それは今にも剣として振られそうな体勢。
「往生際が悪いやつだ、俺達も」
「しつこいからなお前は。さあ、フィナーレだぞ魔人」
「滅べ滅べ滅べ滅べ滅べええ! 俺様の全てと共に滅ぶのだあああ!」
月が落ちる。
それを迎え撃つは一組の男女と、一本の聖剣。
「――これで最期だああああ!」
四つの声が重なり合い上空に響き渡る。
ソラシドが真上に向けて振られ、白光のエネルギーが放たれた。
砲撃にも似たそれは月を纏うクウリと衝突する。
――月が砕けていくのを、いや欠片も残さず消滅していくのをクウリは見た。
それはクウリ本人も呑み込んでいく。己の肉体が崩壊していくのを初めて目にしたのには目を見開き――微かに笑う。
「終わった……でももう疲れていたんだ……父上、母上、俺様もそっちへ行くよ……また三人で……すご……そ……う」
白光が落下してくる全てを呑み込んで宇宙へと旅立つ。
閃光が辿り着くのがどこなのか、それはまだ誰にも分からない。




