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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
二章 神谷神奈と侵略者
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29 圧倒――苦い現実――


 既に滅びた惑星で神奈、レイは惑星トルバの序列一位のエクエスと向かい合っていた。大地はひび割れ、大気は汚染され、川を流れる水は黒い。星の核はもうボロボロな状態で、強い衝撃が与えられてしまえば爆発してしまう恐れもある。

 そんな場所でレイはエクエスと一対一で戦いたいと思っていた。戦士として、なによりもう神奈に迷惑を掛けたくないと戦うことを決意している。


「神奈、もともと僕は神奈に頼る気はなかった。だからこの勝負は僕一人にやらせてくれないかな」


「……危なくなったらすぐに割って入るからな」


「ありがとう」


 その間エクエスは余裕そうに立っていた。神奈はそれをおかしいことだと思わず、トルバで最強という話だから慢心していてもおかしくはないと納得する。

 レイは短く礼を言い、深呼吸した後で目を閉じ集中する。そして数秒後目がバッと開かれた。


「流星拳!」

「ほう」


 神奈と戦った時とは威力も速度も違うが同じ技だ。手加減していた時と比べるならば桁外れ。しかしレイが繰り出した本来の威力の流星拳はあっさりと片手で止められた。

 渾身の一撃を涼し気な顔で止めたが、エクエスはレイを称賛する。


「なかなかの速さだな。それに知らなかったのだがお前は序列二位らしいじゃないか。想像していたよりは楽しめそうだ……今のが本気でないのなら、だがな」


「片手で軽々と受け止めておいてよく言うよ……!」


「だったら両手を出させてみせろ」


「本気でなかったことを証明しよう、流星乱打!」


 レイの拳がまるで流星群のようにエクエスに向かっていく。今度こそ受け止められないと信じるレイだが――


「これが全力か?」

「な、に?」


 ――両手でのラッシュでさえエクエスは片手しか使わずに完璧に防御した。

 神奈でもやろうと思えば出来るかもしれないが、レイの速さより数段上でなければできない。力の差は開きすぎていると戦闘開始からすぐに理解する。


 驚愕しつつも攻撃の手を緩めることはないが、レイの攻撃をエクエスは全て避けるか、さっきから使っている左手だけで防御するかの展開がずっと続いている。


「先ほどのは撤回すべきか? 速さ以外に何かあると思ったんだがな」


 高速だということ以外に特徴のない攻撃にエクエスは落胆の色を見せる。それを感じ取ったレイは、このままでは勝てずに神奈が戦うことになると焦る。


「ぐっ、なら見せよう! 僕のこれまでの修行の全てを、流星剣!」


「今度は斬撃か」


 今度はレイの右手からバチバチと閃光のような、ところどころ弾けて小爆発を起こしていて、先端が尖った赤紫色の棒状エネルギーが出現する。それを思いっきり振って繰り出す斬撃の威力は、地平線の彼方まで地面に亀裂が走ったほどだった。しかしエクエスはそれすら余裕で、最低限の動きで回避する。

 流星乱打も余裕を持って躱す身体能力や動体視力を持っているので、躱すことは難しくない。むしろ一方向にしか斬撃を放てないので、連打よりも躱すのは簡単だとさえ思われている。


閃光移動(フラッシュムーブ)、流星脚」


「なに、ぐおっ!?」


「おお……!」


 神奈が驚くのはその後だった。レイの体が一瞬光って物凄い速さで一瞬にして、エクエスの背後に移動して蹴りを繰り出したのだ。さすがにエクエスとはいえ避けきれずに振り向いた直後に胴体を蹴りぬかれるが、すぐに態勢を立て直す。


(さすがに手強いな、それに今の蹴りもダメージを受けたというよりは、予想外に速かったから驚いたといった感じだ。大して効いてない……!)


 初めて攻撃がまともに当たったが、レイに嬉しさのような感情は生まれない。むしろ不意をつけた一撃でもダメージを与えられないというのが悔しかった。


「閃光移動。それは上級魔技だったか、一瞬だけ亜光速で動けるという」


「そうだよ、閃光流星剣!」


 死角に移動して流星剣を振る。


「そして、体への負担が大きいらしいな」


「知っていたのか、閃光流星乱脚!」


 また死角に移動して連続の蹴りを繰り出す。


「そしてその速さは……俺ほどになれば対処できないほどではない」


「あああああ! 流星乱舞!」


(あの速さには代償があったのか……でもそこまでしてもレイの攻撃が当たらない。まあ私も追えない速度ではないし、おそらくエクエスと同じように対応はできる。つまり私とエクエスの実力は……)


 先ほどからレイの攻撃は掠りもしない。その技は確かにグレードアップしているが届かない。

 今もまるで舞のような上下左右から繰り出される攻撃を全て避け続けている。そしてエクエスの顔はだんだんと、レイについて興味をなくしたように変化していく。


「飽きた……灰色の竜巻(カエシウストルネード)


 攻撃を躱し続けていたエクエスが呟くと、濁ったような灰色の風が周囲を覆い肥大化していく。それは僅かな間で数百メートルもの規模の竜巻になっていた。砂や石など細かい物体は舞い上がり、大地もエクエスが踏みしめる度に崩壊して吹き飛んでいく。


「風か……! なんて風だ、足が浮いたら飛ばされる……!」


 なんとか踏ん張って地面に足をつけようとしていたレイだが、その努力も虚しく圧倒的風量により宙に浮かされてしまう。そして浮かされたならば巻き上げられる以外の未来はない。

 竜巻により回転しながら悲鳴をあげてレイは上空へと投げられる。雲に届きそうな高さに到達すれば竜巻内から放り出されて、数千メートルという高度から速度を増しつつ落下して地面に激突する。


「ぐうあっ!?」


 受け身をとることすらできず、回転しながら落ちたレイは地面を跳ねて転がっていく。勢いがなくなると震える足で立ち上がり、見てしまった。

 直径数百メートルはある暴力的で巨大な竜巻が歩いている。個人の力は自然災害に並ぶ、いやそれ以上の力だ。


「自然にできる竜巻を大きく超えている威力なんだろう、それでも諦めるわけにはいかない……! 流星乱打ああああ!」


 迫る竜巻に超高速連打を浴びせるが効果はない。逆に地面から足が離れてまたもや上空に飛ばされていってしまう。

 再び数千メートルという高さまで飛ばされ、地面に落下して大きな亀裂を作りあげる。もはや勝ち負けなどという次元の勝負はなくなっていた。レイが竜巻を突破することも消すこともできないと分かっているので、エクエスはただ歩いているだけでレイを殺すことが可能なのだ。いや、もはや歩くことすら必要なく、竜巻を維持していれば勝手に自滅するだろう。


「はあっ……はあっ……流星剣」


 ところどころ弾けて小爆発を起こす、先端が尖った赤紫の棒状エネルギーが出現する。力なく振るわれた剣から地面を裂くエネルギーが放たれるが、先ほど星を地平線の彼方まで斬ってみせたエネルギーは竜巻に当たるとあっさり弾かれてしまう。


「そん、なっ……」


 ついにレイは立てなくなったのか、その場で苦しそうに蹲ってしまう。そんな情けない姿をさらすレイを見ると、エクエスは竜巻を自らの意思で霧散させる。そして歩いて近づいていくと淡々と述べる。


「お前の実力は分かった。大したものだよ、流石に他の雑魚とはレベルが違う。だが――」


 蹲るレイの目の前にまで歩いてきたエクエスは冷めた目で見下ろす。


「俺とお前では次元が違う」


 まだ手足が震えて動けないレイをエクエスは軽く蹴り飛ばす。力があまり込められていないのが見えた者からなら分かる蹴りだ。それでもレイは勢いよく吹き飛んで、地面を何度も跳ねて回転すると突然何かに押さえつけられて止められる。


「俺はまだ、一撃しか入れていないぞ序列二位。俺に勝つつもりだったんだろう? ならさっさと立ち上がれ、拳を握れ、魔力を高めろ」


 真上から押さえつけたのはエクエスの足だった。蹴り飛ばしてすぐに、レイが吹き飛んでいく方へと回り込んだのだ。


「……終わりか。だが誇れ、宇宙全体で見てもお前ほどの実力者はそういない。ここで果てても俺の記憶に数年は残るだろう」


 もう一度、エクエスはレイを上から押さえつけていた足を後ろに下げ、今度は先ほどよりも力を込めて蹴り飛ばそうとする。


 ――だがそれは、一人の少女の足で真正面から相殺された。


 手を出さないでくれと言われても、さすがに神奈もこれ以上レイのことを見ていることが出来なかったのだ。エクエスが放とうとする蹴りは確実に一撃目よりも重く、レイを死亡させるものだと直感的に理解したからこそ動けた。ここまでがレイの限界だと悟ったから……介入した。


 エクエスは驚きを隠せない。自分の蹴りを相殺されたこと、そしてそれが少女だったことを素直に賞賛する。


「まさか、トルバの人間でもないのに俺の蹴りを防げる奴がいるとはな」


「もういいだろ、レイはこれ以上戦えない」


「だろうな、だから罰として処刑する」


「処刑……だって?」


 物騒な単語に神奈は眉を顰める。エクエスは別に特別なことなどないように淡々と話す。


「トルバの戦士は戦ってこそ意味を持つ。負ければそこまでの者として処刑する。トルバの戦士にとって敗北とはそれだけで罪なのだ」


「……本気で言ってんのか」


「国が違えばルールも違う。ならば星が違えば違わない道理はない。お前は自分のルールを相手に押し付けるのか?」


「……そうだな、違うんだよな。だから……だからこそ言うぞ。そんなルールは間違ってる」


 純粋に地球で、日本で育った神奈にはそれが理解できなかった。

 エクエスは先程までのレイに対する飽きた表情ではなく、神奈には期待を込めた眼差しで見つめる


「まあいい。お前となら本気で楽しめそうだ。そいつの処刑はお前を殺した後で行おう」


「そうかよ、なら安心だ」


 言葉の意味が分からないという風にエクエスは首を傾げる。そんなエクエスに神奈は断言した。


「――私は負けないから」


「ならば見せてもらおうか。その先ほどの攻防を見てもなお、そう言えるお前の強さをな」


 そう言い終わると神奈は瞬時にエクエスの目の前に駆けて右ストレートを繰り出す。エクエスは突然のことだったというのに平然とそれを躱してアッパーで返す。神奈はその手を掴み投げ飛ばすが、投げ飛ばされたエクエスは先ほど使用していた魔技を使用した。


灰色の竜巻(カエシウストルネード)


 エクエスの体から後方に濁った灰色の竜巻のような強風が生み出され、その風で崩した態勢を戻す。

 灰色の竜巻で吹き飛ばして切り裂こうと、向きを変更して神奈にぶつけるが――


「……風が届いていない、奴の力か?」


 何も起きない。大地は吹き飛ばされたり削られたりしているのに、神奈への影響力はゼロだ。


「これは……神の加護?」


 神奈には攻撃が効かない理由で思い当たる節が一つだけあった。

 特殊な異能や環境から守ってくれる加護ならば、まるで竜巻のような風を起こす魔法でさえ、それを異常な環境だと判断して防いでくれることだってありえるのではないかと予測する。


「ならばこれだ!」


 そう言うとエクエスの手からは強大なエネルギー弾を直線状に発射されるが、神奈は思いっきり振った右腕で弾き、飛んでいった魔力弾は遥か彼方で大爆発を起こした。

 しかしエクエスの考えはエネルギー弾でのダメージではなく、エネルギー弾を囮とした近接戦だった。


 あえて直線上に放ったのは近づく自身の姿を隠すためだ。エネルギー弾が弾かれてすぐ、エクエスは既に神奈の目の前にまで接近しており拳を放つ。

 突然現れたエクエスに驚き一瞬固まってしまった神奈だったが、その一瞬が大きい隙になりまともに顔面に喰らってしまう。


「な、ぐっ! はあっ!」


 よろけてしまった神奈だが、もう一発喰らう前に反撃に出るとエクエスは突然竜巻を神奈に向けて放出して強風により移動して攻撃しつつ距離を離す。

 神奈には打撃のダメージはあるが風のダメージはない。


(打撃、エネルギー弾は有効。灰色の竜巻は通用しないか、ならば奴の力はもしや異能をガードするものなのか? そうだとするならこの戦いは厳しくなるが……まだ確証は無い)


(竜巻のような風は効かない。今はまだ何が効かないのか分かってないはずだけど長期戦は危険かもな。身体能力も魔力も私の方が上だけど相手は戦闘のスペシャリストだ。私自身気付いてない弱点とかがあってそれを突かれると一気に形成が傾きそうだ)


 お互いに相手のことを考えつつ、次の行動に移る。

 今度は最初に動いたのはエクエスだった。見えない何かを持って構えるように深く腰を落とし右手を引く。それを見て神奈は不思議に思う。


(なんだ? 何をしてるんだ?)

「受けてみろ、暴風槍」


 エクエスの足に相当の力が入り元から割れていた大地が更に割れる。

 神奈に勢いよく突っ込んだエクエスは、手にしていたナニカを前に突き出す。


(不味い……ナニカがそこにある!)


 そのナニカの危険性を直感的に感じ取った神奈はすぐに回避行動に移り上半身を捻る、だが間に合わなかったのか、神奈の脇腹をその見えないナニカが抉った。肉が少しとはいえ削られた痛みに神奈は顔を歪めるが、叫ばないように歯を食いしばって我慢する。

 そしてエクエスは攻撃を完全ではないが避けられたことに驚いていた。


(風で形成された槍は目視出来ないはず……それでも避けたということは直感か。大した奴だ)


(初撃を躱せたのは運がよかった……感覚からして持っているのは見えない先端が尖っている槍のような武器で、恐らく長さは二メートル前後。いやそれよりも……加護が発動しない? 風だと思っていたけどただの風じゃないのか? それともさすがに槍みたいな武器は風であっても環境というには無理があるからなのか)


 エクエスは驚きつつも動きを止めることはない。見えない風で創られた槍で神奈の心臓を貫こうと連続で突きを放つ、対する神奈もエクエスの手の動き、向きを見て槍が迫る場所を予測し回避していた。


 神奈は大岩が砕けるような音が聞こえてきたので振り返るのが怖くなる。空気が裂ける連撃は神奈の後方に災害のような被害をもたらしていた。

 避けてばかりじゃ始まらない、そう思い神奈はエクエスの槍を躱してすぐ間合いを極端に詰め拳を叩き込む。


 ――バチンッ!


「いだっ! 何!?」


 神奈の拳は見えないナニカに弾かれた。弾かれた手は痛みで赤くなる。


暴風鎧(ぼうふうがい)。見えていないだろうが俺の周りには風でできた鎧がある」


「その槍と同じ原理か!」


 見えない槍と鎧。そんなものを前にして神奈は奇策を思いつく。

 エクエスは暴風槍で間近にいた神奈を薙ぎ払おうと一閃するが、神奈は後方に跳び距離を取って躱す。そしてそれを追おうと走ろうとした時……神奈の目の前に空中に太めの木の棒が何百本も出現した。


棒作成(クリエイトボーウ)


 好きな木の棒を作りだせる。そんな使いどころが分からない魔法だが、神奈はそれを目くらましに使用した。何百本もの木の棒が神奈の姿を隠してくれる。

 エクエスは木の棒を風で吹き飛ばすが、視界に神奈は映らなかった。


 エクエスはそれからすぐ突如襲った衝撃に驚愕しつつ上を見ると、神奈が拳を振り下ろしていた。

 神奈の力を込めた一撃である拳は暴風鎧に阻まれ止まっていた。

 風を厚さ僅か数ミリの鎧状に集めて常に高速回転するそれは触れれば弾かれ、下手すれば腕の骨が折れる……そんな鎧に神奈は拳を押し付け力を入れる。触れている部分から皮が裂け、そこから出た血が風で飛ばされる。


「はああああああ!」


 思いっきり大声を上げ、拳を振り抜く。

 神奈が取った行動など脳筋の一言で済む。鎧で阻まれるならそれを貫けるほどの力で殴ればいい。

 鎧を貫き、エクエスの額に拳が叩き込まれた。その衝撃でエクエスは地面に後頭部を強打し、大地に蜘蛛の巣状の亀裂が大きく入る。


 エクエスもただやられるだけではない。追撃しようとした神奈に向かい口から魔力の塊を放出する。

 直線的に飛ぶ魔力の塊を神奈は首を捻って躱すが、その僅かな隙にエクエスが起き上がった勢いで回し蹴りを先程抉った脇腹に叩き込む。

 神奈は地面を転がりながら激痛に悲鳴を上げそうになるが意地で堪えてすぐに立ち上がる。


 両者はまた向かい合い静寂の空間が生まれる。


「ふ、ふは、ふははははははは……!」


 その静寂はあっさりと、上を向き左手で顔を押さえるエクエスの笑い声で壊される。

 いきなり笑いだしたエクエスを不気味に思いつつ、神奈は何のつもりなのかを問う。


「何だお前、なんで笑うんだよ」


「ははは……! 純粋に楽しいからだ!」


「楽しい、だって?」


 神奈は予想外に戦闘狂なのかとエクエスの評価を冷静で強い奴から、強いけど頭がおかしい奴に変更する。


「そうだ、楽しいさ……俺は幼い頃から周囲に強すぎる力を恐れられて怪物と呼ばれて来た。ずっと……今までずっと求めていたんだ……対等な戦いというものを。トルバ人として侵略していてもそんな戦いに恵まれることなどなかったがな。お前もそうだろう? それだけ強い力を持っているんだ、対等な戦いを求めていたんだろう? 自分の全力をぶつけられる戦いを!」


「いや別に?」


 即否定されたことでエクエスの楽しそうな表情だったものが崩れる。


「どういうことだ? それならお前は何を求めて生きているというんだ……俺には戦いしかない。俺はそれしか求めていない、求められるものがそれしかない。お前は……違うのか?」


「私とお前は違う、当たり前だよ。たしかに全力で戦ったことなんて今までなかったし、それはなんていうかな……抑えていた力を出せるっていう快感みたいなものはある。でもそれだけを求めて生きてきたわけじゃないよ」


 神奈の頭には笑里や才華などの出会ってきた友達の姿が浮かんで、穏やかな表情になって言葉を続ける。


「私には友達がいるんだ。少し、というかだいぶおかしなやつらではあるけどさ……それでも怪物染みた力を持つ私を受け入れてくれた良いやつらなんだ。お前は孤独で戦いしか知らないから対等な戦いを求めていたけど、私には友達がいるだけで満足で、戦いを求めたことなんて一回もないよ。だから私とお前は違う……戦うことなんかしなくても、私達は楽しく生きられるんだ」


「そう、か……違うのか。俺は今過去最高の気分だが、お前は違うというのか」


「ああ、どうせならお前も侵略なんか止めて友達になるってのはどうだ? 今ならまだこの戦いは終わ――」


「出来ないな。それだけは」


 戦闘の終了を提案した神奈だったが、それは先ほどの神奈のように即否定される。


「俺は戦士だ、戦士としての誇りがある! 始めた戦いを途中で止めるなどありえん! ゆえに友達とやらになることもない、俺には今この戦いがあればそれだけで十分だからだ。ここで、この戦闘で死んでも悔いなど残らん……だから訊いておきたい。お前の名前はなんという?」


「……隼、速人だ」


 本名を答えるのはリスクがあるかもと思い、知っている名前を答える神奈だがそれは無駄に終わる。


「嘘を吐くな神谷神奈」

「知ってんじゃん! 何のための問いかけだよ!」


「本人の口から直接聞きたいのだ。お前のような者に会えることなどこれまでになかった。どいつもこいつも雑魚ばかり、もはや宇宙の中で一番強いと思っていたがまだ同等に戦えるものがいたとは思いもしなかった! さあ、名前を!」


 神奈は僅かな抵抗感を殺して本当の名を名乗る。


「……神谷神奈だよ」

「俺はエクエス。トルバ最強の戦士だ、さあ続きを始めるぞ!」


 再び神奈の元へとエクエスは突っ込んでいく。


 この宇宙中の中でトップクラスの強さを持った二人の戦いはまだ終わりそうもなかった。


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