214.35 塩コショウ派かレモン派か
期末テストから解放される十一月下旬。
商店街にある唐揚げ屋で神奈は唐揚げを買い、一緒に注文した塩と胡椒を振りかけていた。唐揚げにかけるものは様々だが神奈は塩コショウ派だ。さっぱりとした塩コショウが味を一段階成長させている。よく唐揚げとセットで出るレモンはダメだ。酸味が唐揚げの邪魔をする。
「――レモンかけろ!」
「うわっ、急になんだあ!?」
唐揚げ屋の傍にあるベンチで食べようとした瞬間、何か来た。
驚きながら神奈がよく見れば、いつの間にか近くに少年が居た。この世界では珍しい黒髪の彼は米神明八。少し前にメイジ学院とウィザーディア学園の交流試合で速人に敗北した男である。彼は青森県に住んでいるのに、なぜ宝生町へ来ているのだろうか。神奈が不思議に思っていると追加で二人の少年少女がやって来た。
「明八、急に走ってどうした……ってお前は」
「神原! 天子に米神、なんでお前等が宝生町に居るの?」
眠る黒髪の少女、神々天子を神原廻が背負っている。
「遊びに来たんだよ。俺達なら世界のどこへでもひとっ飛びだからな、よく旅行しているんだ。宝生町に来るのは二度目なんだが、一度目は観光せず帰ったから初めてみたいなものだ。良い町だと思うぞここは」
「そう言ってくれて嬉し――」
「そんなことよりレモンかけろ!」
感謝しようとしたら明八に邪魔される。
「何なのお前。私が唐揚げに何をかけようと私の勝手だろ」
「一度かけてみれば分かるさ。唐揚げとレモンの相性が」
「かけて口に合わなかったから私は塩コショウ派なんだよ」
その発言に明八と廻は衝撃を受けた。そして天子も起きた。
三人は信じられないと言わんばかりの顔になっている。
「バカ舌」
「おい聞こえたぞ天子。喧嘩なら買うぞ」
言ってから思いだしたが天子は神奈よりも強い。喧嘩したところで負けるのは自分だと気付き、少し焦りながら「やっぱり買わない」と言う。塩コショウ派無念の敗北である。
「喧嘩か。さっき戦うのに丁度良い広さの空き地を見たな」
「いやごめん、やっぱ買わないって」
「今回は塩コショウ派とレモン派のドッジボール対決としよう」
「ドッジボールか、平和な遊び……塩コショウ派一人しか居ねえじゃん! ずるいぞお前等三人掛かりで私を虐めるつもりか!? そんなのリンチだろおおお!」
たとえドッジボールでも勝てる気がしない。神奈の味方ゼロなのも理由の一つだが、仮に味方が居ても勝てるか怪しい勝負だ。ドーピングなしの条件にしつつ味方を呼べば可能性はある。
「落ち着け。六対六にしよう。味方は好きに呼べ」
「後悔するぞってお前等はあと三人どうするんだよ」
「こっちも適当に声を掛ける」
「じゃあいっか。あ、ドーピングなしな」
「分かった。俺達はしない」
たかがドッジボール。されどドッジボール。
対決理由も方法も遊びだが神奈は全力で勝利を掴みに行く。ドーピングなしの廻達なら人選次第で勝てる。相手側の助っ人によっても勝敗は左右されるが、廻達と同格の人間なんて殆ど居ないはずだ。
神奈は必死に味方となる助っ人を考える。
中途半端な強さではダメだ。廻達と少しは戦える強さでなければ……死ぬかもしれない。これを聞けばただのドッジボールで何をバカなと思う人間も居るだろうが、酷い話これが現実である。とりあえず敵が投げるボールはライフルの弾丸よりも速くて強い。
「よし、決めた」
一時間後。商店街近くの広い空き地に十二人が集まった。
「味方はそいつらでいいのか?」
「いいんだよ。これが私の考えた最強チームだ」
唐揚げには塩コショウ派チーム。
神谷神奈。神野神音。天寺静香。獅子神闘也。法月正義。神神楽神人。
集めた六人の内、一人はまさかの死者である。究極魔法で一時的に蘇生して味方になってもらった。神人は不満そうにしていたが勢い任せに説得した。渋々といった様子でも協力してくれる彼には感謝しかない。呼びかけに『断る』と即答した王堂晴天には彼を見習ってほしい。
「……俺は何をやっているんだ」
因みに、容姿で問題になるかと思われた神人はコスプレイヤー扱いになった。
「ふっ、ならこちらのチームも紹介させてもらおう!」
唐揚げにはレモン派チーム。
神原廻。神々天子。米神明八。八百屋のオッサン。肉屋のオッサン。唐揚げ屋のお姉さん。
「おいおめえ等、終わったら野菜買ってけよ」
「血が騒ぎますなあ。僕こう見えても高校でドッジボール部だったんです」
「唐揚げ関係の勝負と聞いちゃ黙っちゃいられないのサ」
三人共商店街で働く普通の人間だ。
「適当に声掛けすぎだろ! 本当に良いのかその人選で!?」
「当然だ。さあ、試合を始めようか」
「では、審判はこの僕、日戸操真が務めます」
天寺を誘った時に付いて来た日戸が審判役となり、ルールを説明する。
相手の投球に当たるとアウトになり、複数の人間に当たった場合も当たった全員がアウトとなる。アウトになった人間は外野へ移動しなければならない。ボールが地面に付く前に当たった本人、または味方が捕球すればセーフとなる。味方陣営最後の一人がアウトになればゲームは終了する。一般的なドッジボールのルールだ。
説明を終えた日戸がフィールド中心に行く。
ドッジボールは中心からボールが真上に投げられて始まる。両チームから一人ずつ敵側の陣地に立ち、最初に投げられたボールを奪い合うのだ。最初のボールを取るのは非常に重要な役割。そんな責任ある役に選出されたのは天寺と明八だった。
「天寺」
「分かってるわ」
神奈の言いたいことを天寺は理解している。
実力では他のメンバーに遠く及ばない自分がなぜ呼ばれたのか。神奈は何を自分に期待しているのか。それらを考えれば自ずと答えは見えてくる。
「それでは、始め!」
日戸がボールを高く投げて試合が始まった。
ボールの落下を待たず明八は跳び、天寺は自陣に戻る。
「先手を譲ってくれんのか? そりゃありがたいっすわ」
「譲るわけないでしょ」
明八がボールを自陣に向かって叩き……ボールが消えた。
速すぎて消えたわけではない。天寺が瞬間移動させたのだ。移動先は当然彼女の手元。この瞬間移動こそ彼女が呼ばれた理由。敵側の人間は目を丸くして驚いている。
「獅子神、ボールを奴等の誰かに当てたら夕食でハンバーグ二枚追加よ」
「マジか! そりゃあいい、やる気出るぜ!」
天寺からボールを受け取った獅子神が思いっきり投げた。
「いやいや少しは手加減しろよ! 死人出るぞ!」
獅子神は超人的な身体能力を持つ。彼のフィジカルで投げられたボールに当たったら、転生者組は平気でも商店街の人達は弾け飛ぶ。ドッジボールによる殺人罪で彼が逮捕される光景が神奈の目に浮かぶ。
――心配は杞憂だった。
八百屋のオッサンがボールを片手で受け止める。
「……は?」
「嘘でしょ?」
「よっしゃ当てたぜ!」
「ダメよ取られてるじゃない!」
八百屋のオッサンは肉屋のオッサンにパスする。
「肉屋の。あの坊主、狙い目だぞ」
「分かってますよ。そこの君! もしボールに当たってくれたら三百キログラムの肉をプレゼントしますよ! 今回だけの特別サービスです!」
「マジか!? うおおおおお当たるぜええ!」
「ちょっ、獅子神!?」
肉屋のオッサンから投げられたのは剛速球。
獅子神がわざとボールに当たって数十メートル吹き飛ばされる。
「獅子神闘也アウト。気絶のため退場」
「ボールの威力つっよ! おかしいだろアンタ等の強さ! おい神原、お前商店街の人達に何かしたな!?」
「俺が強さを膨らませ、天子が自然エネルギーを付与した」
堂々告げられた答えはドーピングだった。
「おいいいい! ドーピングはなしって話だったろ!」
「ああ。俺達三人は、な」
「い、イライラする……!」
なぜ廻が商店街の人達を味方に選んだのか理由がようやく分かった。誰でも良かったのだ。実力が最低限あれば良し、なくてもドーピングで神奈と戦えるレベルに引き上げられる。
獅子神に当たったボールは跳ね返り、唐揚げ屋のお姉さんの手に収まる。
「さーて、次は誰かなあ!」
ボールは神音に行くと見せかけ横回転でカーブ。
曲がったボールの進行方向には天寺と神人が居た。天寺は咄嗟に瞬間移動で避け、神人は軽い動作で受け止める。やる気がなさそうな彼も真面目に参加するつもりらしい。
「玉遊びなんざくだらねえが、やるからには勝つ」
神人が風を切り裂くボールを投げる。
八百屋のオッサンが取ろうとしたがそれは叶わず、彼に当たって跳ねたボールは肉屋のオッサンにも当たる。ボールはバウンドして塩コショウ派の陣に戻ろうとして……明八に阻止された。しかし一度バウンドしたのでオッサン二人の外野行きは確定だ。
「ふぅ、危ない危ない」
「八百屋と肉屋の店主アウト。外野へ移動してください」
「あーすまねえなお前等、当たっちまって」
「ドッジボールの勘が鈍ったかなあ」
「気にすんなって。俺達に任せときな」
オッサン二人が外野へ行くのを見送る明八に廻が近付く。
「あれをやるぞ明八」
「お、やっちゃいますか」
フィールド中央に移動した明八は腰を落とし、ボールを両手で持つ。投げるわけでもなくパスするわけでもない。ただその位置でボールを持ち、体勢を維持しているだけ。そんな明八の傍に廻が立ち、右拳に左手を添えて構える。
二人の体勢をよく見た転生者四人は目を見開く。
「なっ、あ、あれはまさか」
「おいおい、漫画の再現かよ」
「私も知っているよ。有名漫画だからね」
「ジャジャン拳か。僕も子供の頃に真似したなあ」
前世の世界ではハンターが主役の人気漫画があった。
物語の中でドッジボールをやるシーンが存在し、そこで主人公と相棒キャラがやった技は名シーンの一つである。廻と明八の体勢はまさにその漫画のシーンの再現。前世でその漫画を読んでいた神奈達はすぐに理解出来た。
「えっ、ちょっと、なんなわけ?」
唯一転生者ではない天寺は全く分かっていない。
「さーいしょはグー。じゃーんけーん、グウウウウウ!」
明八の持つボールを、廻の右拳が殴り飛ばす。
どこからどう見てもハンター漫画の再現。しかし、あの技はハンター漫画の世界だから出来たわけで、二人が再現しているのは技の形のみ。威力までは再現出来ない。
「慣れていないから威力弱めだ。これなら取れるはず」
ボールが向かうのは神人が居る方向。威力的に問題なく捕球可能だが、それは普通に捕球しようとした場合の話。神人はなぜかこのタイミングでバレーのレシーブをしようとしていた。
「は? なんでレシーブ?」
「ま、まさか! ダメだ咬座!」
天寺以外の味方はすぐに理解する。
ハンター漫画でのドッジボールで、敵がバレーのレシーブで主人公の技を防いでいるのだ。廻と明八の漫画再現に乗せられた神人も再現しようとしてしまった。しかし、バレー未経験者がレシーブして成功する方が珍しい。当然のように神人は失敗してボールは地面に落ちる。
「神神楽神人アウト。外野へ移動してください」
悔しそうな表情で神人は「くそっ」と呟き外野へ向かう。
「なるほど。ゴンの真似をして、相手にレイザーの真似をさせる作戦だったのか。頭脳プレイを見せてくれるね」
「誰よゴンとレイザーって」
「だが、ボールはこちら側さ」
神人がミスで零したボールを拾ったのは法月だ。
「さて、反撃だ。いくよ」
法月はボールを高く投げ、自身も跳ぶ。
彼がやろうとしているのはまさにバレーのスパイク。
「ダメだ法月いいいい!」
「なんでバレーなの!?」
スパイクで叩き飛ばしたボールは明八にあっさりキャッチされた。
「へっへっへ。ここらで俺の力を披露してやろうかな」
笑う明八が突然光り出す。
「俺自身が閃光だ!」
閃光の加護は光速移動しか出来ないわけではない。体から強烈な光を放つことも出来るのだ。光は太陽光のようで、直接目にしてしまえば視界が一時的に真っ白になる。
明八が投げたボールは天寺に当たった。
目が眩んでいる天寺はボールが来ることを認識すら出来なかった。
「よーし……あれ? 審判?」
審判である日戸は何も言わない。今までアウトになった人間の外野行きを宣言していたのに、今回だけいつまで経っても口を開かない。
ボールを拾った神奈が困惑中の明八に投げる。
審判ばかり見ていた明八はボールに反応出来ず直撃する。
「え、あ」
「米神明八アウト。外野へ移動してください」
「まさか、その審判は……」
「誤解するなよ? たぶん目が見えなかっただけだから」
神奈達は不正なんかしない。
ドーピングしてくる誰かとは違う。
明八から跳ね返って来たボールを神奈は再び投げ、唐揚げ屋のお姉さんに当てる。いくらドーピングしようと彼女は一般女性。神奈が投げたボールは反応こそしたものの、回避は絶対に間に合わない。
ボールはまたしても塩コショウ派の陣に跳ね返ろうとするが、今度は廻が拾って阻止。彼は滑らかな動きでボールを投げて法月に当ててみせた。やはり彼の身体能力は侮れない。神奈よりも強いと言える。
「唐揚げ屋の店主、法月正義アウト。外野へ移動してください」
「あちゃー、ごめんねー」
「くっ、ヒーローが敗北するなんて」
塩コショウ派チームの残りは神奈、天寺、神音のみ。
レモン派チームの残りは廻、天子のみ。
数では塩コショウ派が有利でも質はレモン派が勝る。
ボールを拾った神奈は険しい表情で天寺にボールを渡す。
「天寺、切り札を使うぞ」
「もう?」
「ああ、神原を早くどかした方が良い」
「それもそうね」
天寺がボールを廻の頭上に瞬間移動させた。
ポンッと軽い音が鳴る。廻は自分にぶつかったボールを呆然と見つめる。
強者である廻でもいきなり出現した物は察知出来ない。二度は通用しないが確実に一人倒せる手段だ。最初から神奈はこの技だけ天寺と相談していた。一番厄介な敵を確実にアウトにするために。
「神原廻アウト。外野へ移動してください」
「……ドッジボールで瞬間移動。ズルいな」
「もっと悔しそうな表情しなさいよ。つまらないわね」
廻が外野へ移動して残るは天子一人。
「あとは天子だけだな」
「いや、もう終わりさ」
「どういうことだよ」
「私の予想ではもうすぐ……」
天子が大きな欠伸をすると大胆にその場で寝てしまった。
商店街の人達は目を丸くして、元々彼女をよく知る廻と明八は手を額に当てて「あちゃー」と呟く。睡眠欲の強すぎる彼女は長く起きられない。廻をアウトにした時点で勝負は決まっていたのだ。
「神々天子が寝たため試合続行不可能と判断します。よって勝者、静香さんチーム!」
「塩コショウ派チームだよ!」
廻が天子に駆け寄って背負うと、神奈のもとへ歩いて来る。
「今回は負けたぞ。塩コショウ派」
「ああ。でも楽しかったし、またいつかやろうな」
「ねえ、そもそも塩コショウ派って何?」
「あれ説明してなかったっけ?」
思い返してみれば確かに神奈は天寺達に詳細を説明していない。ドッジボールをやるから味方として来てくれとしか言っていない。悪かったなと思いつつ神奈はことの始まりを詳しく説明する。
「……何それ、くだらな」
「まあいいじゃん。塩コショウ派が勝ったんだから」
「いや、私は唐揚げに何も付けない派だから」
「え?」
「獅子神はケチャップね」
「え?」
驚きで上手く言葉が出ない神奈は仲間一人一人に顔を向ける。
「私は醤油だね」
「え?」
「僕はマヨネーズかな」
「え?」
「俺はタルタルソース」
「え?」
残念ながら神奈の味方は誰も塩コショウ派ではなかった。
今まで味方として戦ってきた神奈達は睨み合う。
前座の試合は終わりだ。ここからは最終決戦が始まる。
* * *
神原廻は神々天子を背負ったまま、米神明八と唐揚げ屋に向かう。
実は纏まりのなかった塩コショウ派との激戦後、無性に唐揚げが食べたくなってしまったのだ。唐揚げ屋のお姉さんはそれを聞いて急いで店に帰っていった。今頃は慌てて営業再開準備をしているだろう。
「たまには掛けるもの変えてみようかなあ」
「レモン好きのお前が珍しいことを言う。何を掛けるつもりだ?」
「塩レモン」
「結局レモンじゃないか」
「いやいや、レモンと塩レモンは牛肉と豚肉くらいの差がある」
「よく分からん。俺は塩コショウ、を!?」
唐揚げ屋が見えてきた廻は一瞬、呼吸が止まった。
顔が青ざめていくのが自分でも分かる。原因は唐揚げ屋の傍のベンチに座っていた先客。黒猫の耳が生えたような髪型の少女が美味しそうに唐揚げを食べている。何も特別ではない日常風景だろうが廻にとっては違う。その少女の容姿は見覚えがありすぎる。
「どうしたんだよ廻。顔色悪いぞ」
ごくり、と唾を飲み込む。
驚愕の表情のまま廻は少女のもとへ歩いて行く。
「お前……深山和猫だな?」
「ん? 確かに私は深山和猫だけどそれが何か?」
「俺は神原……いや、九崎廻だ。名前を覚えているだろ」
「……うーん、覚えていないにゃん。どこで会ったっけ」
「前世の世界で会っているはずだ。お前も転生したのか?」
そう、廻は和猫と前世の世界で会っている。
同じ学校に通う友人だった。名前も容姿も同じなので見間違えるはずがない。しかし、この世界に居るということは一度死んで転生したということ。彼女も死んだなら理由が何なのか知りたいと廻は強く思う。
「はっはっは、君は面白いねえ。私と話したいなら深山温泉旅館へ来てね」
「ま、待て! おい!」
去ろうとする和猫に廻は手を伸ばす。
肩を掴んで止める……つもりだったが避けられた。
見もせずに手を避けた事実が廻は信じられず呆ける。
「どうしちまったんだよ廻。あの可愛い子、知り合いか?」
「…………いや。似ていただけだ。忘れてくれ」
偶然という都合の良い言葉で廻は驚愕を終わらせた。
転生したなら容姿も名前も変わる。廻のことも全く覚えていないようで、訳の分からないことを喋る不審者として見られた気がする。あの深山和猫は廻の知る少女ではない。同じ世界でも顔が似た人間が存在するし、異世界に同じ名前と容姿の人間が居る可能性もあるだろう。
「似ていただけ、だよな?」
ただ、一度抱いた疑念は簡単に消えず胸に残った。
神奈「私も念能力を使えると思っていた時期があったなあ」
腕輪「ちなみにあの漫画で誰が好きですか?」
神奈「うーん、ヒソカかな」
腕輪「私は旅団四天王のマジタニですかね」
神奈「……どっちも旅団の偽物かあ」




