表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
十一章 神谷神奈と強さの果て
382/603

203 魔界――マジかい――

2024/05/26 文章一部修正+加筆









 紫に染まっている空。緑溢れる森。荒れた地面は亀裂が入っていて、上空では三メートルはある怪鳥が鳴き声を上げている。正に人外魔境といった雰囲気の世界である。

 神神楽神人を追って魔界という不思議な世界に来た神奈と神音。

 二人は〈理想郷への扉(ユートピーゲート)〉を通りぬけて出た場所で興味深そうに周囲を見渡す。


「ここが魔界かあ……いかにもって感じだな」


「そうだね、空を飛んでいる鳥も見たことがない珍しい種類だ。この木も性質がおかしい。ほら、ゴムみたいに伸びるんだ」


 神音は木の幹を掴むと弾力性があるのか伸びて、手を離すと一気に元に戻る。

 バチンッという音がして戻った木を見て、なんだか楽しそうだなと二人は考える。


「これはゴムゴムの木ですね」


 神奈の右腕にある白黒の腕輪がそう答える。


「お前知ってるのかってゴムゴム!? 何だその、何、その、木が悪魔の実でも食べたの!?」


「果実ではないですが、そういう力を持った悪魔の血を養分として取り込んだことでこうなったんでしょう。悪魔には固有魔法のように固有の力が存在しますから。例えば人に擬態するとか、霧になるとか、初代魔王は魔族を生み出す力を持っていたらしいですよ?」


「悪魔!? 魔王!? ああもう、魔界って聞いた時からいるんじゃないかと思ってたけど、転生者よりそっちの方がヤバく感じる。そいつら地上を侵略とかしないのか?」


 神奈達は悪魔や魔王の姿を想像する。

 角の生えた黒い巨体、赤い瞳に獲物を噛み千切る牙、禍々しい翼が生えている怪物。そんな生物を想像していたが、こんなことを考えている場合ではないと神奈は口を開く。


「それより、私達の目的は神神楽(かみかぐら)神人(しんと)だ。この場所にどうやって来たのか分からんけど、とにかくしらみつぶしに捜そう」


「ついでに観光もしていこう。私の目的はあくまでそっちだからね」


「勝手にしろよ……まあ、ちょっとだけなら付き合ってやってもいいぞ」


 内心少しワクワクしている神奈は神音から顔を背けてそう答える。

 二人は森の中を歩いて行くが、魔界の地形は知らないため森から出られない。同じ景色がずっと続くことに嫌気が差すとはいえ、とにかく進むしかないと歩き続ける。


 神音が突然左腕を神奈の前に出して進むのを止めた。

 どうしたのかと神奈が目を向けると、神音は静かに前方を指さす。

 目を凝らすと地面の上に毒々しい紫色のリンゴがあるのが神奈には見えた。


「果物か?」


「あれは魔界産の魔リンゴですね。あの皮には触れただけで皮膚が溶けるような毒がありますが、中身は絶品ですよ。地上のリンゴとは比べ物にならないくらい美味しいんです」


「危なすぎない!? 誰も食えないだろそれ!」


「問題はそれが地面に連続して転がっているということだよ。おそらく獲物をおびき寄せるための罠ってところかな」


 神奈が「え?」と呟きながら魔リンゴに近付くと、確かに連続して複数、等間隔を空けて落ちている。


「餌か、有毒の餌に釣られるバカはいないだろ。寧ろ用意した奴がバカだろ」


「私達は魔界の地理に詳しくない。そのバカ、原住民を捕まえて案内させよう」


 神奈達は落ちている魔リンゴを追うように歩いて行くと、最後の魔リンゴの傍に大きな竹籠(たけかご)が一つ傾けて置かれていた。魔リンゴが動いた瞬間に竹籠が落ちる仕組み、まさに獲物を捕らえるための罠。分かりやすい作りに神奈達は呆れてしまう。


「よし、とりあえず腕輪をポイッと」

「ちょっ!? 神奈さああん!?」


 罠にかかれば仕掛けた本人がこの場所にやって来るだろう。

 神奈は腕輪を投げ込んで魔リンゴを動かして罠を作動させる。

 腕輪は呆気なく竹籠に捕らえられてしまう。


 仕掛けた本人がここに来るまでに隠れなければと考えた神奈達は、近くの茂みに隠れ、腕輪を放置して待つ。腕輪はその間に脱出しようとしたが、意外にも竹籠が地面に固定されており脱出出来ない。


「獲物がかかっただあ!」


 罠の作動に気付いて駆けて来るのは、小学生低学年のように小柄な少年だ。

 少年の額には小さく白い角が一本生えており、普通の人間ではないことが一目で分かる。クリーム色の髪はいいとして、肌が赤いのも人間ではない証拠となる。


 明らかな人外だが神奈の驚きは少ない。小学生の時に精霊という人外を多く見たため、あんな奴がいるんだ程度にしか思えない。もし精霊との関わりがなければ驚愕で叫んでいただろう。

 赤い肌の少年は嬉しそうに罠に近付くと竹籠を取る。


「あれえ!? 動物じゃないだあ!?」


 小型の動物を想像していた少年の目に映るのは白黒の腕輪。


「ふっふっふ、私は万能腕輪ああああ。動物ではないですが貴重な代物ですよ。私を手にした者は世界を制すると言っても過言では――」


「まあいいだな、食べてみるだ」


「止めてくださあい! ちょっと齧らないで!? 神奈さん助けて神奈さあああん!」


 食べ物かどうかも分からない少年は腕輪へと思いっきり齧りつく。

 鋭い牙でガリガリ噛まれたのに恐怖した腕輪が助けを求めて叫ぶ。

 少年は自慢の牙でも噛み千切れないと分かると腕輪を口元から離す。


「かってえなあ……オラの牙は鉄も噛み千切れるのに」


「物騒なんですけど!? 神奈さんなんで助けてくれないんですか!?」


 腕輪が叫んでいると茂みが揺れ、神奈と神音の二人が勢いよく現れる。

 少年は突然現れた二人にビクッと肩を上げる。


「そこまでだ! 幼稚な罠を仕掛けたバカ野郎!」


「いや遅いですよ! 私もしかしたら食べられてたかもしれないのに!」


 腕輪は文句を言うと少年の手から無理やり抜け出す。

 離れていく腕輪に少年は驚き「あっ」と声を漏らすことしか出来ず、飛んでいく腕輪を手にした神奈を見上げる。身長が倍近く違う相手だ。女性とはいえ怖くなり、少年は一歩ずつゆっくり下がっていく。


「なあそこの君」


「はいっなんですだ!?」


 ですだという語尾は気になるが神奈はとりあえず自己紹介する。


「私は神谷神奈、こっちは神野神音。君は?」


「ひっ、おっ、オラはゲルゾウだ! お、おお前達は人間だなあ、オラに何の用だ!? まさかオラを食べる気か!?」


 異常なほど怖がられるので神奈達は困惑した。

 少年が悪魔なのか鬼なのかは分からないが、常識的に考えれば怖がるのは人間側のはずだ。人間を下等生物と見下し、餌扱いしてくるのを想像していたのに拍子抜けする。傲慢なファーストコンタクトの予想とは真逆の展開に、神奈はどう相手と接すればいいものかと悩む。


「安心するといい、君のような者は食べないさ」


 神音はゲルゾウの背後に高速で回り込み、そっと肩に手を置く。


「ぎゃああああ!? あっ」


 優しく微笑む彼女を見たゲルゾウは、突然背後に回られたせいで驚きのあまり気絶してしまう。


「「ええ……?」」


 予想だにしていなかった展開に二人は困惑の声を上げる。

 白目を剥いて気絶したゲルゾウを二人は見下ろし、どうするか相談し、とりあえず案内役にする予定なので木陰で休ませる。寝ている間に『ぐうう』という音が彼の腹から聞こえたので、二人は魔リンゴの皮を剥くことが出来ないかと方法を模索した。


 考えた結果、神音は風魔法で皮だけを削り取り、神奈は素手で剥くことにした。

 猛毒があるとしても加護のおかげで神奈はなんともない。毒も環境の内であると自動判断が下され、神奈には毒が効かないことが判明した。自分から毒に犯されたいと思わない限りは無力化出来る。


 初めの一個は自分達で食べてみるとあまりの美味しさに驚いた。

 濃縮された甘味が広がり、飲み込んだ後ですぐに消え去る。

 余韻が殆どないので甘さがくどくない。

 二人はもう一個食べてから、寝ているゲルゾウの分をせっせと用意していく。


「うっ、うん……?」


 ゲルゾウの閉じていた瞼がゆっくりと開く。


「おっ、目が覚めたか」


「ここはああああ!? まだいただあああ!」


「落ち着けよ」


 神奈は皮を剥いた魔リンゴをゲルゾウに差し出す。


「え、これって魔リンゴかあ? 皮はどうやって……?」


「細かいことは気にしなくていい。腹が空いてんならとりあえず食べろよ」


 ゲルゾウは恐る恐る神奈から魔リンゴを受け取って齧る。

 予想外の美味しさでその口が止まることはなく、あっという間に用意していた二十個の魔リンゴを完食してしまう。


「あ、ありがとうだあ。そ、その、お姉さん達は人間だべ? どうして魔界にいるんだべか? 魔界の門はずっと閉じられているから、人間は来られないはずなのに」


「ちょっと捜してる奴がいるんだよ。それは置いておいて、ゲンゾウだっけ?」


「ゲルゾウだあ」


「じゃあゲルゾウ、お前この辺りには詳しいか? どっか大きな、人が住んでる場所まで案内してほしいんだけど。なんならお前が住んでる場所でもいいしさ」


 ゲルゾウは少し考えてから答える。


「オラの故郷までなら案内出来るけどもお、それ以外への道は詳しくないんだべえ」


「ならそこまででいいよ、私達を案内してくれないか? お前が思ってるような凶悪な奴じゃないからな私達は」


「もう疑ってないだ。オラのために魔リンゴを剥いてくれる人、悪い人なわけないべ」


 その言葉に神奈と神音は顔を見合わせて少し笑う。

 神奈達はゲルゾウの案内のもと森の中を進んで行く。


 森を進むと村が見えてくる。そこは鬼族の里と呼ばれているゲルゾウの故郷。

 里に特別な物はなく、ただ鬼族がひっそりと暮らしている。近くの森は迷いやすく安易に発見されない。食料は王都に買い出しに行くこともあれば、森で動物や木の実を取って生き延びている。全て道中ゲルゾウから聞いた話である。


 村で神奈達が目にしたのは予想外の光景だった。

 神奈と神音が動かないなか、ゲルゾウだけが覚束ない足取りで進む。


「ぞ、ぞんなあっ……び、びんなあっ」


 涙と鼻水を流しながらゲルゾウは村に入っていく。

 そこは故郷であるが、子供や大人関係なく全ての者が地に伏せており民家も破壊されていた。









神奈「魔王ってどんな奴だろ」

腕輪「やっぱりオルゴデミーラみたいな感じでしょう」

神音「いいや、魔王といえばゾーマだろう」

神奈「お前等がドラ○エ脳ってことは分かった。てかド○クエならウルノーガ一択だろ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ