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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
十一章 神谷神奈と強さの果て
365/608

186 喧嘩――成長していく力――

2024/04/14 文章一部修正









「俺は神神楽(かみかぐら)神人(しんと)。テメエと戦いに来た」


 神人はベータを指して言い放つ。

 家に入って来た不審人物に三人は警戒を強める。


「ベータの知り合いですか?」


「いや、知らねえ。お前何者だ? さっきの不良の仲間か? それともアタシ達の素性を知ってて来たのか?」


「素性だか何だか知らねえが、俺はテメエとやり合うためだけに来たんだ。さあ喧嘩だ喧嘩! タイマンがいいんだが別にテメエら纏めてってのもありだぜ!?」


 警戒を解いたアルファ達はため息を吐く。

 政府関係者や裏社会の魔の手かと思っていたが、何てことはないただの不良だったのだ。一般人の不良程度なら警戒する意味もないし今すぐ返り討ちに出来る。


「なんだよ、まあいいぜ? アタシと戦いたいってんなら戦ってやるよ。一方的になっちまうだろうけどな」


「なんだ三人で来なくていいのか? 俺はそれでもいいんだぜ?」


「バーカ、過剰戦力だっての」


 両拳をパンと合わせてベータは一歩前に出る。

 ベータだけでなくアルファ達も神人を舐めていた。

 魔力すら感じないただの人間を警戒する意味がない。


「行くぜっ!」


 まず動いたのは神人だ。最初から全速力で走り拳を振るうが、ベータは横に移動して躱す。初撃を躱した彼女はがら空きになっている彼の脇腹に蹴りを入れると、彼の体は勢いよく壁に激突する。


「がはっ!? つ、つええ……!」


「へえ、お前も強いな。今の蹴り喰らってまだ意識保って立っていられるのかよ」


 神人は一般人から見て強い部類に入る。格闘技のプロ選手でさえ勝つのは難しい。

 しかしそんな高い身体能力も、強めな魔力を持つ者からすれば大したことない。ベータから見れば神人など、そこらの不良よりも少し強い程度でしかないのだ。


「ははっ、今のでもっとやる気出てきたぜ!」


「なんだよ面白いなお前」


 確かに大きなダメージを与えたが神人はピンピンしている。

 またもや全速力で走る神人の拳がベータの頬に直撃する。

 油断していたわけではない、神人の速度が予想以上だっただけだ。


「ぐっ、らあっ!」


 負けじとベータが殴り返すと、神人の身体が吹っ飛ぶことなどなくその場で堪えた。

 さっきの一撃では吹き飛んでいたのに気合いで耐えるなんてありえない。気合いで耐えられるような威力ではないのだ。急激な身体能力の上昇にベータは困惑する。


「へへっ、次はこっちだぜ!」


 両手の指を組ませた神人はベータの頬に肘打ちを入れ、組んでいた両手をハンマーのように振り下ろす。威力はベータが先程受けた拳より強く、耳から床に叩きつけられて小さな悲鳴を上げる。


 床に横向きで寝る形になったベータに空気を裂くほどの蹴りが放たれるが、それは腕に力を入れて転がるように移動して躱す。

 立ち上がったベータは舌打ちして、笑顔の神人と殴り合う。

 戦闘を眺めるアルファとガンマの表情は余裕なものから険しいものに変わった。


「明らかにおかしいわ。あの男、まさか、攻撃を受ける度に強くなっている?」


「えっと、私は攻撃を受けずに避けても強くなっている気がします。なんだか戦いそのものがあの人を強くしていっているような……」


 似たような力を持つ人物で獅子神(ししがみ)闘也(とうや)がいるが、彼とは明らかに違う。

 ダメージを受けるごとに身体能力が向上していく獅子神の力よりも上位互換。

 神神楽神人の力はただの日常の中でさえ、成長させるような出来事があったならば身体能力以外の部分も成長する。


 ――それが成長の加護。


 成長の加護は神人が転生前に授けられたもので、身体能力、頭脳、それ以外の全てが成長していく。身長などは年相応に落ち着くが、それ以外は生活しているだけで必要な分だけ増えていく。


 つまり今も戦っているだけで、戦闘に使用している筋肉が成長しているのだ。

 異常な成長にアルファとガンマ、何より戦っているベータは気付いている。

 現状はベータと互角だがどうなるか分からない考えたアルファは口を開く。


「ベータ、遊びは終わりです! その男は危険。三人で一気にケリをつけますよ!」


「ああ!? アタシが負けるってのか!」


「このままでは短い内にそうなる、あなたもそう思っているんでしょう?」


 図星のベータは言葉を詰まらせていると、動きを止めたせいで神人の拳を喰らってアルファ達の方へと殴り飛ばされる。飛ばされたベータをアルファとガンマ二人掛かりで受け止めたものの、勢いで少し後ろに下がる。


「ははは、俺はいいぜ? さっきより身体が(かり)いしなあ、三人同時に相手してやるよ」


「後悔しないことですね、その傲慢が命取りです。ベータ、ガンマ! あれをやります、準備をして下さい」


 アルファの『あれ』という言葉で何をするのか思い当たった二人は立ち位置を変えていく。

 横幅が狭い廊下で三人は合体したような体勢になる。

 一番前はベータ、その後ろにアルファとガンマの二人がおり三人は背中同士を合わせている。


「ほおぅ、なんだそりゃ?」


「あなたは危険ですので排除します。死んでも恨まないでくださいね?」


「くはははっ! いいねぇ、来いよ、テメエらの全部をぶっ潰してやるからよお!」


 楽しそうに笑う神人に向けてベータが拳を構える。

 今か今かと神人は足の動きから攻撃のタイミングを見定めようとする。


「〈火炎放射(フレアブラスト)〉」

「〈暴風加速(ストームブースト)〉」

「炎!?」


 しかし、彼の観察は彼女達が足を動かさないで突進してことで無駄になる。

 ベータがそのままの体勢で動いているのは背後から押し出されているからだ。

 突然アルファの手から真っ赤な炎が出て、ガンマの手からは風が出されることで勢いを増してベータを押し出す。


 神人は魔法の存在をまだこの世界で知らない。手から炎が出る手品のような現実に動揺する。

 ベータの拳は勢いよく加速して神人の胸板に突き刺さり、骨を破壊するような鈍い音が全員に聞こえる。神人の肉体は床を跳ねながら家の外に放り出され、地面に大の字に倒れた。


 神人が吹き飛んだ瞬間に加速する材料である炎と風は止み、勢いを全て神人にぶつけた三人は外に出ることなく殴った地点で止まる。

 室内で思いっきり炎を出したら普通の家なら火事の心配がされるが、アルファ達の家は大規模な実験にも耐えられるよう設計された家。炎は壁が弾くし、多少の衝撃では破壊されない。


「まったく、面倒なことになりました。尾行に気が付かなかったのは私もですから偉くは言えませんが、もう少し周囲を警戒して帰ってきてください」


「いやあ、悪いなあ。それにしても何だったんだアイツ?」


「誰でもいいでしょう、今頃は外で死んでいるかその一歩手前でしょうしね。死んでいたら遺体を回収しなければいけません。外に見に行きましょう」


 侵入者を倒したと安心しきる三人は神人の様子を見に行く。

 外へ行こうとしたその時、足を動かす前にガンマが殴り飛ばされた。

 走行車が全速力で突っ込んでも傷一つ付かない壁に上半身がめり込み、亀裂が入る程の衝撃と音が空気を伝って二人に伝わる。


「一人目」

「お前、なんでっ」


 二人が後ろを振り向くと、ガンマを壁にめり込ませた張本人の神人が立っていた。

 ついさっき外に吹き飛ばされたはずの人間が後ろにいるという事態。

 二人は困惑するが仲間に危害を加えられた怒りが上回る。


「よくもガンマ――」


「おせえぞウスノロ」


 アルファの叫びが終わる前に神人が顎へとアッパーを喰らわせたことで、彼女は天井に頭を打って床に落ちる。

 三人の連携技を喰らった神人の身体能力は連携技を防げる程に向上していた。彼の成長は三人の想像を超えて、集中しなければ視界にも映らない程の速度になっていた。


「二人目。さて、強烈な一撃をくれた礼に俺も本気の一撃で応えてやる」


「なっ、くそっ!」


 ベータがこれから来るであろう攻撃に備えて構える。

 しかし彼女の動体視力では捉えられない速度で、神人の回し蹴りが脇腹に刺さって壁に彼女の顔がめり込む。


「ふぅ、楽しかったぜ。機会があったらまたやろうや。それにしても……」


 三人を倒した神人は自分の肉体を不思議そうに見る。


「戦闘不能になるまでは傷を負ってたはずなんだがな。まあ(こま)けえことはいいか」


 動かなくなった三人を見もせず、神人はその場から去っていった。

 こうして神神楽神人という存在が新たな事件の種となって動き出した。








 教えて! 万能腕輪さん!

「はい、というわけでやってきましたこのコーナー! 皆さんの疑問を解消するためのこのコーナー! さて、初回ということで張り切って……あ、疑問ないですか、そうですか」

 終わり!



 神神楽神人 戦闘力580



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