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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
四.五章 神谷神奈と平和?な日常
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58 財宝――聞いていってくれ――


 文芸部活動中、きっと神奈以外は珍しいと思っただろう。

 普段なら気絶しているか、部屋に来ないかの二択を貫き通している速人が普通に本を読んでいる。あまりに珍しい事態、というか初かもしれない事態。目を丸くして驚くのも仕方ないというものだ。


「ね、ねえ、どうしたの隼君。あなたが読書なんて……」

「今日は偶々そういう気分なだけだ」


 部長である夢咲(ゆめさき)夜知留(やちる)が唖然としている。

 白衣を着た少年、霧雨和樹も「明日は隕石の雨でも降るのか?」と意外そうにしている。黒髪の少女、泉沙羅に至っては常日頃に行っているネタバレをする余裕もないようだ。……これはありがたいので密かに速人へ感謝しておく。


「俺のことはいいだろう。お前達はどうだったんだ、昨日妙なことを話していなかったか? 宝の地図がどうとか」

「ああ話してたなそんなの。どうだったんだよ夢咲さん」


 神奈は便乗するように問いかけた。

 宝の地図について調べようと三日前に話していた流れを思い出す。


 発端は狐の耳を生やしたような髪型の少年、斎藤凪斗の言葉。

 家のタンスの奥でしわくちゃになっているのを発見したと言い、見せられたのは赤いバツ印が書かれた地図。物語ではよくある宝の地図であった。死んだ父親が魔導書調査の特殊な仕事をしており、その仕事に関連したものではないかと彼は疑っていた。結局真相は分からない。


「後で二人に話そうと思っていたの。宝の地図について……あ、これがその地図ね」


 夢咲が鞄から出した紙にはしっかり赤いバツ印が書かれている。


「胡散臭いなあ。で、財宝でも見つかったの?」


「財宝よりとんでもないものが見つかったよ。……ううん、誰かが見つけなきゃいけなかったのかもしれない。きっと、運命に引き寄せられたんだよ私達は」


 そう言って夢咲は宝の地図の恐るべき真相を語り出す。

 語られたのは胡散臭い宝の地図が導く、一人の悔いた人間の話。




 * * *




 三日前。夢咲、斎藤、霧雨、泉の四人で宝探しに出掛けた。

 迷路のような深い森や、薄暗い洞窟を抜ける。もし霧雨の作った道案内してくれる発明品がなければ辿り着けなかっただろう。


 地図に記された印の場所に着くとあったのは大きな廃墟が一軒のみ。

 周囲は天気が晴れているはずなのに薄暗く、暗雲が立ちこめ、不気味なことにカラスの大群が鳴いている。現実世界から切り離されたような異質さが廃墟にはある。


「不気味な屋敷ね……。宝なんてあるのかな。ねえあれ空き巣の地図だったんじゃない? 実は宝があったけどもう盗まれましたってオチだよね?」


「い、いやいや、誰も宝があるなんて言ってないでしょ」


「上擦った声で誤魔化すな。俺達はお前が宝の地図だと言ったから、わざわざ平日の夕方から調べに来たんだぞ。責任取って宝を探せ斎藤」


「入るの!? か、帰ろうよ……。ほら、他人の家に勝手に入るのはどうなのかな」


 明らかに斎藤は怖くて近付きたくないだけだ。

 そう言えば、と夢咲は思い出した。彼はいつか行った肝試しでビビりまくっていたと泉が話してくれたのだ。可哀想だが泉は秘密厳守するタイプではない。一度弱みを握ったら、脅す前に周囲へバラすタイプなのである。


「何を言ってる、もう人も住んでいないだろうこれは」


「い、いっやあどうかなあ! 幽霊がいるかもしれないしさあ!」


「結局人は住んでいないじゃないか。ほら行くぞ」


 先導する霧雨に夢咲達は付いて行く。

 中に入ると蜘蛛の巣があったり床が抜けている……なんてことはなく綺麗な状態だった。豪華なシャンデリアや西洋風の机が新品同然で設置されている。同じ廃墟風でも夢咲の家とは大違いだ。

 予想していたお化け屋敷とは全然違ったからか斎藤が「ほっ」と胸を撫で下ろす。


「良かったあ、中は普通だ。これなら幽霊は居ない。……どうしたの夢咲さん?」


 斎藤が不思議そうに問いかけてくる。

 やはり今の自分は異常なのかと、夢咲は薄々感じていたものを確信に変える。

 衝撃だったのだ。屋敷の内装を見て受けた衝撃は計り知れない。目を見開いて口を半開きにしてしまうほどに恐ろしいショックを受けた。


「ま、まさか……いるの? ゆ、幽霊……いる?」


 寧ろ幽霊屋敷であってくれた方が夢咲は平然としていられただろう。


「ありえない。私の家より遥かに綺麗、だと? ……負けた」

「何の勝負してるの!?」

「あなたの家と比べたらどんな家も綺麗だ、よ」

「辛辣! でも事実!」


 泉の辛辣発言で夢咲は大ダメージを受けて膝から崩れ落ちる。


「凄いな斎藤、お前のツッコミスキルは神谷にも負けていないぞ。ザ・普通から脱却出来て良かったな。これからはお笑い芸人として修行を積め」

「嬉しくない要素を評価しないでよ!」


「まさかの三連続ツッコミが出た、ね。もう神谷さんを超えたんじゃないか、な」

「もう止めないそのノリ!? もうつっこまないよ僕!?」


「……ああ、おふざけは止めて真剣になろう。この屋敷は普通じゃない」


 本当に真剣な表情に変化した霧雨に斎藤が困惑した。


「え、ど、どうしたのさ急に」


「どう見てもおかしいだろう。なぜ外と中でこれほど違う」


 外観が廃墟風にもかかわらず、なぜ中は綺麗なのか。

 人が住んでいるなら外側も綺麗にするはずだ。

 必然的に夢咲達は屋敷への警戒度を上げる。


「床も埃一つ落ちていない。中は汚れない理由があるのかもね」


 膝から崩れ落ちていた夢咲が立ち上がって告げる。

 斎藤が「まさかそれを確かめるためにずっと床を見ていた?」と驚いていたが、期待を裏切って申し訳ないと思う。残念ながら辛辣発言にショックを受けていただけだ。


「二手に分かれて中を探索してみよう。何かあったら大声で叫べ」


 夢咲と泉、霧雨と斎藤のペアに分かれて屋敷内を探索することになる。

 二階を担当した夢咲達は階段を上がり、一番近い部屋の扉を開ける。ピンク色の可愛らしい扉だ。現れた部屋の中は女子小学生が使っていそうな内装だった。

 床には玩具が散乱しており、窓際には大きなピアノが置いてある。


「可愛らしい部屋……私、こんな部屋が欲しかったのよね」

「ピアノ弾ける、の?」

「弾けないけど憧れたの。弾けないからこそ、なのかも」


 昔は孤児院暮らし。今は母親の住んでいた家に一人暮らし。

 当然だがピアノを触った経験など一度たりともない。


 基本的に夢咲には金銭的余裕がないのである。孤児院はもう存在しないため今は特に余裕がない。仕送りを収入源としていたのにぷっつり途絶えたのだ。リアル0円生活も子供一人では限度がある。


 最近だと食べられる野草やキノコで繋いでいるのが多い。たまに毒を摂取して腹を壊すし、以前は美味しかった野草で作った調味料を分けたせいで神奈の腹も壊した。反省はしている。


「……分かるなその気持、ち。自分が出来ないからこそ憧れを抱くんだよ、ね」

「泉さんはピアノ弾けるの?」

「弾ける、よ。ピアノ以外の楽器もたぶん弾け、る」

「へえー、じゃあ今度聞かせてよ」


 以前から夢咲は思っていたが泉沙羅という少女は何気に凄い。

 天才、藤原才華にも負けず劣らずの万能。運動会では運動面で彼女に圧勝していたし、ネタバレをする無駄な知識もある。おまけに楽器も大抵弾けるときた。天は二物を与えず、なんて言葉もあるが二人に関しては与えすぎだと思う。


「とりあえず部屋の中を調べようか」

「……う、ん」


 二人で部屋の中を調べ回るが何も怪しい物はない。

 色々見ているうちに、部屋にあった時計が七時半になった。

 遅い時間だ。親がいる子供なら帰らないと心配されるだろう。メンバーの中で唯一親がいる泉は気にした素振りを見せないので、夢咲も何も言わない。親に連絡くらいしているはずだ。


「この部屋には何もなさそうね。泉さん、他の部屋に――」


 そう言って振り返ると泉の様子がおかしかった。辛そうに頭を押さえている。


「大丈夫!?」

「気にしない、で……。発作みたいなものだか、ら」

「気にするよ! 発作って、持病でもあるの!?」

「……もう平気。頭痛は消えたから」


 本人が平気と言うのなら平気なのだろう。だがどこか、夢咲は目前にいる少女が無理をしているように見える。普段との微妙な違いを感じ取れる。


「本当に大丈夫?」

「問題ない。それより、妙だねこの部屋」


 はきはきと喋る彼女は周囲を見渡す。


「人形の位置が移動している。窓もいつの間にか開いている」


 奇妙だ。人形の位置は調べた時に動かしたのかもしれないが、窓は一度も触れていない。自動ドアでしたなんてこともない。心霊現象染みた出来事が起きたので夢咲は不気味に思う。


「……本当、何かが起きたみたい。これ以上何か起きる前に早く部屋を出よう」


 ポルターガイストなら問題ない。幽霊が見えないのは問題だが対処法は思いつく。

 一番最悪なのは全く理解出来ない現象に巻き込まれることだ。対処法は理解出来るからこそ思いつくものであり、意味不明な現況で部屋に居続けるのはマズい。

 急いで夢咲が扉を開けて――愕然とした。


「廊下が……ない?」


 扉の先には下へ続く階段だけが存在した。

 暗く、一人しか通れないくらい狭い。終わりの見えない階段がひたすら続いているおかしな光景。二階へ行く時に階段を使ったがここまで長くないし場所も違う。


 幻覚かと思い、試しに外へ出てみたがやはり現実。

 恐ろしくなった夢咲は部屋に戻ろうとして――何かにぶつかった。


 目を丸くしながら恐る恐る手を近付けてみると、確かな硬い感触を感じる。目には見えない透明な壁があるようで部屋に戻れない。あまりに異質な仕掛けを前に狼狽えることしか出来ない。


「空間が捻じ曲げられている。この屋敷、何者かに支配されて――」


 プツリと、泉の声が途切れて姿も掻き消える。


「えっ? い、泉さん!? 泉さんどこ!?」


 部屋は見えているのに誰の姿も見えない。何の合図もなしに消失してしまった。助けを求めるために大声で叫んでみたが反応もない。


「嘘……誰もいないの?」


 部屋には戻れない。先へ進めるのは階段のみ。

 ごくりと息を呑んだ夢咲は焦りを抑えて階段の下を見据える。


「行くしか、ない」


 意を決して夢咲は階段を下り始めた。

 横は暗闇だが落ちる心配はない。手を触れれば壁になっているのが分かる。

 階段は見た目通り異様に長かった。どれだけ下りても終わりが見えず、時間だけが過ぎる感覚を味わう。精神的に追い詰められて焦りを抑えきれなくなる。


 歩くのを止めて走った。

 走って走って勢いよく下りて行く。

 やがて白光が見え、近付けば扉だということが分かった。


「はあっ、はあっ、扉……?」


 白い扉は勝手に開く。

 中に見えるのは紛れもなく文芸部の部室だ。

 どうして部室がこんな場所にあるのかと疑問に思うが、すぐに思い直す。


 ここはあの古びた屋敷で間違いない。この場所こそ幻覚だ、魔法などで作り出された幻に違いない。暗闇の階段から抜け出したい一心だったため、帰って来れたと錯覚してしまった。


 不思議に思いながら夢咲が歩くと足が何かにゴツッとぶつかる。

 何だろうと思って下を向いてみれば、そこにあったのは紛れもなく――死体。

 今日は屋敷に来ていないはずの神奈と速人を含めた文芸部のメンバーの亡骸。


 普段なら衝撃の光景に悲鳴の一つでも上げていただろう。しかし極限状態の中で目にした神奈の死体で逆に頭は冴え、意外と冷静に考えることが出来た。


 死体はフェイク。偽者。

 なぜかといえば神奈の死体があるからである。彼女が死ぬ未来など、夢咲には欠片も想像出来ない。動揺させるつもりで用意したのだろうが夢咲には逆効果である。


「……誰かが特殊な力でこれを作り出した? 悪趣味な人もいるのね」


『混乱すらしないか、精神力が高いな』


 突如、夢咲の頭の中に男の声が聞こえた。


「あなたは誰? これを作った人?」


『違うさ、これを作ったのは知人でね。でも君にはあまり意味がないようだ。君も合格。おいで、目覚めなよ』


 そう言われた瞬間、夢咲は眩い光に包まれるて目を閉じる。

 光が止んでから目を開けると、赤い絨毯の敷かれた広い部屋の中だった。大きな丸机と椅子がいくつも置かれている。高級ホテルの食事部屋のような部屋だ。


『ここはパーティールーム。初めまして迷える子羊、突然だが左を見てくれ』


 疑問に思いつつも言われた通りに左を向く。

 左には泉が立っており、霧雨と斎藤は寝かされていた。


「泉さん、みんな! 無事だったのね!」

「……うん」

『無事とは言い難い。お友達も君と同じく幻を見ており、もし目覚めなければそれは死と同じ。二度と帰っては来ないだろう』


 予想以上に危機的状況だったらしく夢咲は唖然とする。

 状況を呑み込み、その上でどうすればいいのか考える。

 真っ先にするべきことは何か。部員の心配も大事だが状況は動かない。本当にやるべきなのは少しでも多く、この声の持ち主から情報を引き出すことだ。


「あなたは誰なの?」

『私の正体が気になるか? ならば奥の方を見るといい、そこに私はいる』


 パーティールームの最奥へ泉と共に向かうと――白骨死体が置いてあった。

 声の言う通りなら正体は死体になってしまう。他に何もないので、やはり白骨死体が声の主と見て間違いない。


『私は死んでいる。けど、私の力で魂を留まらせているんだ。……おっと、他の君のお友達も目覚めたようだ。子供とは思えない強靭な精神力。すごいな君達は』


 夢咲が後ろを振り返ると、他の二人が起き上がり辺りを見回していた。

 現況を全て理解しているわけではないが、少しでも伝えようと思い今までの会話を全て話す。二人は今までの経験からかさすがの理解力で早く状況を呑み込む。


 目覚めなければ死ぬ幻覚を見せられたが夢咲達は怒っていない。

 宝探しなどと浮かれた気分で勝手に入ったのは自分達の落ち度だ。踏み入れてはならない場所へ勝手に入ったのだから罰を受けて当然。子供の好奇心が稀に禁忌を犯すと知るいい機会になった。


「二人も死体を見せられたの?」


 そういえばと夢咲が興味本位で確かめる。


「死体? いいや、俺はもっと恐ろしい幻覚だった。まさか俺の作った発明品が自我を持ち、世界征服した暁には世界の半分をあげるだなんて言ってくるとは」


「僕の方も怖かったよ。まさか学校の人達が殆ど幽霊で、血文字が至る所に書かれているなんて……危うく不登校になるところだった」


 思っていたのと違ったし恐ろしさのジャンルが違う。怖いことは怖いので夢咲は「……お、恐ろしいね」と返しておいた。

 知りたいことは知ったので夢咲は骸骨の方へ振り向く。


「ねえ、話の続きだけど私達を殺そうとした理由は何? あなたの力も分からないし。教えてくれるんでしょう?」


『教えるとも。私の力は時間操作。魂が輪廻の輪へ乗るための移動を阻止して、この場に留まらせてもらっている』


 時間操作。誰もが夢に描いた最強の能力。

 あまりにとんでもない力の名前を聞かされて夢咲達は目を丸くする。


『君達に掛かった幻術はこの家の仕業だ。この家に施してもらったとある魔法で、侵入者を絶望させる幻を見せて現実に帰れなくさせるもの。私が死ぬ前、知り合いにかけてもらった』


「何でそんな危ない魔法を?」


『生前は金に困らない生活をしていた。財宝と呼ばれるものも、まあ多数所持していた。しかし、どこから嗅ぎつけたのか侵入者が多くてね。一々対処するのが面倒だったんだよ』


 それから後も質問を続け、色々聞いて整理した結果。

 ここは何百年も前の家だが中は時間を止めて汚れないようにしているらしい。

 住んでいるのはこの人というか魂のみ。名前はもう忘れてしまったらしいが、生前は時の支配人と呼ばれていたという。


「……ふむ、色々聞いたしもういいだろう。で、肝心の宝なんだが俺達は貰ってもいいのか?」


『別に構わないさ。見ての通り私はもう骨だ、持っていても仕方がない。……一つ条件がある、私の話を聞いていってくれ』


 話を聞くぐらい構わないので夢咲達は静かに頷く。


『私は生前、友人と契約を交わした。その男の名は神音(かのん)。国や民からは大賢者と呼ばれていた男。神音は魔法の天才でな……そこの斎藤だったか? 君の持っているその本は神音が持っていたものなんだ。他にも召喚の魔導書や禁断の魔導書なんて本を所持していた』


 斎藤は「この本が?」と呟き、腰の専用ケースに入っている魔導書を見やる。


「召喚ってあの時の本だよね?」

「禁断というのも気になるが……」


 攻撃の魔導書は斎藤が長く持っているもの。

 召喚の魔導書は文芸部部員で倒した狩屋という男が所持していた。

 禁断の魔導書は何一つ情報がない。一波乱ありそうだと全員が息を呑む。


『彼との契約内容はこうだ。彼の死後、死体の時間を止めて保存すること。そんなことを何故? そう思ったのだが答えは意外なものだった。目的を諦めない、その為に復活すると言ってきた』


「復活? そんなことが出来るの?」


『禁断の魔導書に記された禁術、死者蘇生。使えば死者が蘇るという噂だ。……因みに、目的とは人類の抹消だと私の前で言ってのけたよ。だが友の頼みだ、私は死体を保存した。その時は魂をこの世界に留めることは出来なかったから、神音の魂は今頃別の体に移っているだろう。……しかし、私は数十年が経った頃になって後悔をしていた。もし本当に人類の抹消が目的なら復活させてはならないのでは、とね』


「後悔するの遅すぎたね」


 これまで危険な野望を持った者達を知ってきた夢咲の中で不安が募る。

 友人が野望を阻止した者達。藤堂零、アンナ・フローリア、宇宙人、荻原ララ、狩屋敦、天寺静香。聞いていないだけでまだ居るかもしれないが、聞いただけでもこんなに多い。人類の抹消などと言う大賢者はその誰をも超えた存在だろう。


「だがそれは昔の話なんだろう? 今まだ俺達が生きているし復活失敗したんじゃないか?」


『彼は有言実行の男、無理なことは言わないのさ。そしてもうすぐ確実に復活する。そんな予感がするんだ。……君達にやれとは言わないが、戦える者がいるなら伝えてほしい。君達のように意思強き者には、実力を持っている強き者もよってくるかもしれない』


「大丈夫、もう会っているから。伝えておくわ、その神音って人のこと」


『……そうか。ありがとう、親切な子供達』


 優しい声で感謝された瞬間、夢咲達の視界は突然真っ白になる。

 眩い光が消えた後で目を開けると、不思議なことに廃墟の玄関へ移動していた。時の支配人が時間操作の応用で送ってくれたのだと考えておく。


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