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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
三.六章 神谷神奈と精霊界
143/608

44.998 ニート志望VS神奈


 力尽く、つまり戦闘。

 自分でそれをやろうと思っておいて神奈が悩むことが一つ。

 どれくらい手加減すればいいのかだ。殺すのは論外だが相手が想定以上に弱ければ最悪の結末もありえる。それを避けるためにもまずは相手の力量を大雑把にでも把握するべきだろう。


「ドラ、どこへ行くのです。立春のオカリナを渡しなさい」


「……今のサクラン様には渡せません」


「従順さだけが取り柄だというのに、それを取ったらあなたには何も残らないじゃないですか。もういいです。妖精達よ! 裏切り者の元同胞から立春のオカリナを奪い返しなさい!」


 周囲には神奈達だけで誰もいない。だがその声はテレパシーと似たようなものだったらしく、妖精界にいる全妖精へと伝わっていると腕輪が語る。

 少しすると異常が起きた。ユスリカという虫が作る蚊柱が例えに最適かもしれない。数十、もしくは百を超える多くの妖精が群れを作って飛来してきた。


「ドラ、逃げろ! 分かっていると思うけど絶対に死守しろ!」


「ええ分かってるわよ! 立春のオカリナは絶対に渡さない!」


 迷うことなくドラは妖精の群れから逃れようとさらに離れていく。援護したいところだが神奈はサクランに集中しなければいけない。もしサクランにも追われるような事態になれば面倒だ。しかし実際のところ、サクランがドラを追跡する動きはない。おそらく神奈を倒すべき敵として認識しているからだろう。ドラの方も妖精達でどうとでもなると思っているに違いない。


「さて、邪魔な人間には退場してもらいましょうか。……テメエら人間はどうせ消える命なんだからな! 今死のうが数十年後に死のうが大した違いはありゃしねえ!」


「ずっと思っていたんだけどグレすぎだろお前。二重人格か?」


 サクランが神奈の元へと一直線に飛んで来る。

 先の通り、万が一殺してしまえば大惨事。神奈は相手の実力を大まかにでも測定しなければいけない。正直なところ、強すぎても困るが弱すぎても困る。デジザイアなど力加減をもう少し間違えていたら頭が弾け飛んでいただろう。デジザイアも一般人からすれば相当強い部類なのだが関係ない。重要なのは神奈本人から見て強いか弱いかだ。


 戦闘力を測定する魔法〈ルカハ〉を使用すれば本来は楽に終わる。……が、神奈は自身の数値を知らない。一度腕輪に教えてもらおうとしたが「本当に知りたいんですか? 本当に?」とやけに渋るので止めておいた。


 一先ず初撃は受ける。話はそれから。

 汚い笑い声を上げながらサクランが殴りかかる。


「ぐがげえええっ!?」


 一発の拳、確かに受けた。予想以上に強力な拳を。


(つっよっ!? いてえええ!)


 腹部に思いっきりめり込んだサクランの拳。

 妖精で思い浮かべるのはドラだが彼女の拳は笑里クラス。弱者は血肉をぶちまけるだろうが神奈なら平然としていられる程度。しかし目前の妖精女王の拳はそれと比べて遥かに強力であった。神奈の体はくの字に折れ曲がって吹き飛ばされる。


 完全に舐めていたがサクランは強い。今までに神奈が戦った相手で三番目くらいには強い。まともに一撃を喰らえばかなりのダメージを負ってしまう。

 焦る神奈だが時すでに遅し。吹き飛ぶ体に真上から二撃目を入れられる。無防備に喰らったせいで勢いよく池に沈められた。


 派手に舞った水飛沫をサクランは回避している。物凄く小さな体の妖精だからだ。水飛沫一滴でも全身が呑み込まれてしまう。


(想定外……だけど、これは逆に本気で攻撃出来るって証明!)


 神奈は大振りで水を掬い上げる。

 いや、掬うなんて生易しい表現は的確ではない。散弾銃でも発射したかのように池の水がサクランを襲う。先程の水飛沫より遥かに速く威力も高い。一発でも当たれば相当な痛みが襲うはず……とはいえそれらが当たるとは特に思っていない。当たればラッキー程度だ。


 水の散弾銃をサクランは高速で回避しきった。キレのあるいい動きだ。しかし攻撃を回避した直後に油断するのはよくない。神奈はその決定的な隙を突いて、水中から勢いよく上体を起こしてサクランを掴み取る。


 相手の体が粒のように小さいからこそ通用する攻撃。相手を握るだけで手が檻と化して拘束することが出来る。これで脱出不可能――とはならず指と指の僅かな隙間から抜け出されてしまった。呆気なく拘束から抜けられたことに「あ」と呟いた神奈はまた殴り飛ばされた。


 池から吹き飛んで陸地に転がる。

 すぐに立ち上がって体勢を立て直すと、接近して来るサクランを捉えた。加護のおかげで水滴すら付いていない神奈はタイミングを合わせてサクランを殴る。

 クリーンヒット。小さすぎて感触がないがこのタイミングなら避けようがない。直撃したと思い込んだ神奈の左手首が――突如折れ曲がる。


「んなっ!? いたっ!」


 骨は折れていない。あくまでも衝撃を受けただけ。

 いったい何が起きたのか。目を凝らしてみれば簡単だった。

 点のように小さなサクランが曲線を描くように飛び、今度は肘の裏にある浅い窪みへと打撃を叩き込んだのを見た。左腕は衝撃でさらに曲がる。まずいと思った神奈は横にずれて、再び曲線を描くように飛んで放たれた打撃を躱す。そして追撃が来る前に虫でも叩くように右手で払う。


「神奈さん、どうやら打撃は効果が薄いようです」


「あんまり効かないってことか? なんで?」


「虫を殴って殺せますか? 彼女の体は羽虫未満の大きさ。打撃の威力が十分に伝わりませんし、拳の風圧で離れてしまうので届かないこともあるでしょう。叩く、潰すは有効でしょうが……」


 あれだけ小さいのだ。潰すのは論外として叩いても瀕死になりそうである。

 無論サクランが強いのはもう分かっている。だがやはりまだ殺してしまうかもという不安は拭えない。打撃が不安なら、と神奈は考えを変えた。


「魔力で攻めるか」


「それはいいですが気を付けてください。彼女の実力はほとんどが魔力の強さです。身体能力が魔力で強化されているからこそ神奈さんにダメージを与えられる。つまり魔力弾などで応戦する場合は不利になると思います」


「潰しちゃうよりは苦戦の方がマシだ。まあ何にせよ、ニート志望に世間の厳しさってやつを教えてやる」


「教えられるほど神奈さんも知らないのでは……」


 未だ小学生、前世でも会社に勤めたことがない神奈は確かにまだ知らないことが多い。それでもサクランの意見が今の時代で通用するようなものでないことは理解出来ている。私的な理由も含めてサクランには働いてもらわなければいけない。

 もう手加減など必要ない。飛んで戻って来たサクランへ向けて神奈は魔力弾を放つ。




 * * *




 妖精界の内部を飛び回る妖精の群れ。

 ピンク色のオカリナを抱えたドラはその妖精群から必死で逃走している。


「待てえええええ! オカリナを返せええええ!」

「ぶっ殺してやるうう! 死ねええええ!」

「消えろおお! くたばれええ!」

「羽と髪を毟らせろおおおおお!」


 様子がおかしい。妖精達は普段もっと温厚なはずだ。

 血走った目の妖精達はまるで獲物を前にした空腹の肉食獣。こうなった理由にドラは心当たりがある、春の妖精サクランの能力だ。


 ――〈凶化(バーサーカー)〉。性格が凶暴になる代わりに身体能力が飛躍的に向上する。捕まればどうなるか、ただ殺されるより酷い目に遭うのは間違いない。きっとあらゆる拷問をされて痛めつけられた後で苦痛に満ちたまま殺されるだろう。


「うじゃうじゃと……! これは渡せないつってんでしょうが!」


 本当なら妖精達へ状況を話して説得したいところだが不可能だ。

 凶化中の者は残虐性などを極限まで引き出される。それに現状を説明したところで誰も信じてくれないだろう。サクランが立春のオカリナを廃棄しようとしたなど、ドラがいざ聞かされる立場になったら信じるはずがない。きっと説得してきた者を粉微塵にしてしまう。


 これは逃げ切るか捕獲されるかの死闘。

 今もなお凶化中の者達から逃げられているのはドラの固有魔法〈高速〉のおかげだ。効果はシンプル、ただ普段より速く動けるだけ。今のドラはそれを使用し続けることでなんとか捕まっていない。それでも何度か掴もうと伸びた手が掠ったり危ない時は多少あったが、発動させていなければもうとっくに拷問コースだ。常時発動させると魔力消費も激しいが発動するしかない。


「あれ、あれって……まさか!」


 複雑な軌道を描きながら逃げているとドラの視界に三人の人影が映る。

 距離を縮めていくと誰なのかはっきりと見えてきた。誰かを理解するのと同時にドラの表情は明るく緩む。なんせその三人は憧れの者達だったのだから。


 一人は白に近い青色の長髪が美しく、白い着物を着た胸の大きな女性。周囲にはダイアモンドダストらしきキラキラした粒が舞っている。冬の精霊スノリア。


 彼女の右にいるのは灰色の肌をした身長の高い男。グラデーションが綺麗な赤のローブを着ており、髪も紅蓮で炎色。秋の精霊コウヨウ。


 左にいる精霊は頭がデフォルメされた太陽のようだ、周囲には火の粉が舞っている。日本人っぽい肌にブーメランパンツを履いているが男らしき膨らみはなく、胸も膨らんでいないのにビキニを着用している。夏の精霊サニライズ。


 感動したドラは笑顔で三人の名を様付けで呼ぶ。


「なんや? 何か凄いことになってるな」


「ははは、ははははははははははははははははははははははははははははははは」


「あ、本当だ! 逃げてる子が持ってるじゃない!」


「ははははははははははははははははははははははは」


「分かったわあ、じゃあ私がかるーく氷漬けにしてみるわねえ」


「……よくサニライズの言うてることが分かるな」


 何かを話終わった途端、サニライズがドラの真上へと高速で移動した。

 季節の精霊の能力は強大だ。今追いかけてきている妖精達はサクランに強化されているとはいえ、何か攻撃を受ければ無事では済まないだろう。死者も出るかもしれない。慌てたドラは「殺さないで!」と叫ぶがサニライズは「はははは」と笑うだけだ。何を言っているのか全く分からない。


 夏の精霊サニライズがサムズアップして、その手を逆さにする。

 笑顔のままの太陽から突如、目が眩む白光が放たれた。直視していたドラ含めた妖精達は思わず目を押さえて「目が、目があああああああ!」と叫ぶ。


 苦しんでいる追っ手の妖精達から逃げるチャンスなのにドラは目を瞑ったままだ。太陽を直視し続けたような感覚が目に残っている。視界のないまま飛行していたドラは一直線に柔らかい何かへと突っ込んだ。


「うえ!? な、何ここ!?」

「あらあらあ、怖かったのねえ。お姉さんのおっぱいに飛び込んで来るなんてねえ。まあ今回は特別に許してあげるわあ」


 ドラが突っ込んだのはスノリアの谷間であった。

 白い着物でガードされていたが猛スピードで突っ込まれては形無し。本当に僅かな隙間から彼女の豊満な胸部に入ってしまったようで、早く脱出しなければとドラは暴れ回る。だが四方八方に動く度に弾力で押し返されて脱出は叶わない。


「ほーら、もう安心よお」


 胸の谷間がスノリアの両手で広げられたことにより脱出可能となる。

 ドラは真上に飛び、目の痛みが消えたので視界を確保する。

 近くには一度胸元の締めつけを緩めたらしいスノリアが調整し直していた。コウヨウは見ないように背中を向けて、サニライズは奇妙な踊りを空中で踊っている。勝利の舞踏だろうか。あまりに奇妙なので目を引くが、それ以上に目を引く光景をドラは目にすることになる。


「う、そ……でしょ?」


 ――目に飛び込んできたのは巨大な氷山。

 こんなもの、妖精界にはさっきまで存在していなかったはずだ。春の国であるこの場所には氷など一片もない。つまり目前の氷山はスノリアが短時間で作り上げてしまったということ。


「こ、殺しちゃったんですか!?」


「いやいやまっさかー。ちょこおっと閉じ込めただけよお」


 ホッとしたドラは胸を撫で下ろす。そしてすぐ神奈のことを思い出す。


「あ、あ、あの! 奥で神奈とサクラン様が戦っているんです! どうか、どうか助けてあげてください! お願いします!」


「助ける? 助けるってどっちを?」


 そう問いかけてきたのは秋の精霊コウヨウ。

 微妙に疑惑の目を向けている。おそらく事情はもう知っているのか、推測しているのだろう。ドラは多数に追いかけられていたといっても妖精だ。サクランを様付けしていることからも敬意を持っているのは伝わると思う。


 サクランは当然傷付いてほしくないし、考えを改めてほしい。

 神奈も友達として大事だし、生き残ってほしい。

 どちらを助ければいいと問われる前から、もうとっくにドラの答えは一つに決まっている。真剣な目で見返してから勇気を持って口を開く。


「――どっちもです! サクラン様も、神奈も、二人には戦ってほしくないんです! こんな答え我が儘で幻想みたいかもしれないけど、私の素直な気持ちなんです! このままじゃ私の大切な二人が傷付いて痛い思いをしちゃう。どうか、どうか二人の戦いを止めてください!」


 誠心誠意、自分の気持ちをドラは吐き出した。

 スノリアとコウヨウは真剣な表情で見つめてくる。サニライズだけは笑顔……それが真顔なのかもしれないがジッと見つめてくる。間が生まれたので断られるのかと不安になってしまう。


「よし、いっちょやったるか」

「ふふふ、腕が鳴るわねえ」

「ははは、ははははははははははは」


 杞憂だった。三人はやる気を出してくれている。

 ドラは感謝の言葉を告げてから案内するために飛行を再開した。



 * * *



 薄紫と桜色の弾がぶつかり合う。

 楕円形のそれは遠く離れた神奈とサクラン二人の間で飛び交っては衝突、ぶつかっては紫と桜色が交じり合う爆発が起きる。全くの互角というわけではない。互いに両手から魔力で構成された弾を発射しているのだが一度の手数はサクランの圧勝。彼女は一回魔力弾を放つ瞬間に複数へと分裂させて手数を増やしているのだ。


 初めに大きな魔力弾を圧縮した状態で手に作り上げ、放つ瞬間に圧縮を解除することで大きな魔力弾になる。これのメリットは相手に魔力弾の大きさを悟らせないこと。簡単にやってのけているサクランだが、これに分裂を組み合わせるとなれば難易度は跳ね上がる。手のひらの中で圧縮した魔力弾を作ることは神奈も可能だが分裂までは出来なかった。もし機会があれば練習してみるのもアリだろう。


「神奈さん! 斜め下から一つ抜けてきますよ!」


 一度の手数で圧勝しているサクランに対し、神奈は一個一個魔力弾を手に作り上げて放っている。それでも被弾していないのは生成スピードを高めているからだ。多少雑になるかもしれないし、疲れるのも早いがそうでもしないと大量の敵弾が押し寄せてくる。


「くっそ、あれ真似したい!」


 右斜め下から接近してくる桜色の弾へと紫の弾を放って相殺する。

 身体能力に任せて戦っては不利だと思い魔力戦にしたものの、やってみれば攻撃を凌ぐので精一杯という情けない展開になってしまった。


「……はぁ、はぁ、ああもう疲れた。この程度で疲れるわけ……いや、絶え間なく魔力弾作ってれば疲れるのも早いよなああくそっ……このままじゃジリ貧だぞ」


「それだけではありませんよ。神奈さんはドラさんが傍に居る時、魔力で目と耳を強化していましたよね。今もサクランの姿を見失わないように強化している。数分ならともかく何時間も維持していますからね、そりゃ疲れるでしょう。休まず早歩きしているようなものです。微々たる疲労でも蓄積されれば危険。今や神奈さんの魔力は一割も残っていません」


「今日、ああいや昨日だっけ。やたらと寝ちゃったのはそれが原因か……」


「ですね――左斜め横から来ています!」


 再び相殺して撃ち合いを続行する。

 息遣いが段々と荒くなり、相殺出来ている場所が自分へ近付いている。疲労が原因で精細さを欠いていっている証拠だ。腕輪の忠告がなければとっくに被弾しているだろう。


「右下! 神奈さん早く!」

「分かってぐっ!?」


 ついに一発被弾してしまった。

 ダメージもある。誰かに軽く殴られたようなレベルなので一発は問題ない。だが二発目は? 三発目は? このまま相殺が遅れて間に合わずに被弾が続くようならダメージは蓄積される。


 勝負の明暗がたった今、分かれた。

 相殺が遅れていき、二発目が被弾する。それから段々と被弾のペースが早くなって、相殺すら出来ずにサクランの放つ魔力弾全てに被弾してしまう。


 もはやタコ殴りだ。意識が一瞬飛んで白目になる。

 腕輪の悲鳴が聞こえ、サクランのつまらなそうな顔が見える。


「――〈芸術の秋〉」


 ふと、最近聞いたかもしれない声が神奈に聞こえた。

 向かって来ていた桜色の魔力弾が全て軌道を変え、上昇したかと思えば花火のように綺麗な爆発を起こす。


「……げぼっ……と、止まった……?」


「ふふ、わしの〈芸術の秋〉はありとあらゆるものをわしなりの芸術へと変える。今日はインスピレーション湧いてへんさかいイマイチな出来やけど」


 神奈の隣へ降り立って来たのは秋の精霊。頭が上手く働かないが目に捉えたものをそのまま受け入れて「コウヨウ……?」と呟く。

 続いてスノリアと、外見がヤバい見知らぬ精霊が周囲にやって来る。そしてスノリアの頭からドラが涙目で慌てて接近して来た。


「神奈あああ! 大丈夫!? ボロボロじゃない!」


「……ドラ。お前逃げ切れたのか。それで、助っ人か」


「別にアンタを心配してたわけじゃないんだからね! さ、ここはこの三人に任せて大丈夫よ。アンタの頑張りは無駄じゃない、一人でよく戦ったわね。スノリア様、コウヨウ様、サニライズ様、後はお願いしても大丈夫ですか?」


 三人は笑みを浮かべて頷いたように見えた。

 状況からしてサクランと戦うつもりなのだろう。しかし実際に戦った神奈はよく分かっている、並大抵の力では太刀打ち出来ないということを。スノリアへ手を伸ばして「待て、私が……」と説得しようとしたのに、ドラが小さすぎる両手で神奈を遠くへ運んでいってしまう。

 スノリア達が危ない、そう思ったまま神奈の意識は途切れていく。


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