暇すぎて
五つの大陸で成り立っているこの世界。
火焔大陸、水晶大陸、黄砂大陸、新緑大陸、そして中央大陸。
その中央の大陸に国は6つ。
5つは人間やエルフ、一部の獣人、ドワーフなどが暮らしているが
1つは世界最強と言われる魔王【ダルミティア】と配下の魔物が住んでいる。
とは言っても別に今のところ害はない。
何故なら魔物達は自分達の生活だけで満足しているし、肝心の魔王ダルミティアは
暇すぎて散歩に出ていたからである。
「ひーまーだーなーー。なぁスペディア」
「わふっ」
黒い短髪、何故かボロボロのマント、黒い生地に鮮やかなブルーの糸で刺繍が施された服装、腰ベルトには短剣と長剣の二本を携えた見た目20代後半ぐらいの男。
…に見える女。
「城にいても暇だからこうして散歩に出て見たが今ひとつ面白いものがないなーお前もそう思うだろー?」
「わふっ」
お供の黒い毛並みの犬はダルミティアの城の番犬ケルベロス。
本来顔が三つの獣なのだが、ダルミティアが魔法で三頭に分離させたので残りの二頭は城でのんびり過ごしている。
「わふっわふっ」
「えーもう腹減ったのかよー
しょうがないなぁ。確かこの近くに村があったはずなんだけど」
近くにある大きな岩場にひょいっとジャンプで飛び乗り辺りを見渡すと小さな村が見えた。
「おっ!あったあった!私の記憶は間違いじゃなか…ん?なんか村の辺りで狼煙が上がってる?」
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〜プロット村〜
(ヤ、ヤバイ……誰か助けてくれよ〜!?)
震える手で木の棒を構えている少年が村の入り口に立っていた。
その構えた先には蜥蜴の姿をした魔物達が10人ほど、
そいつらに倒されたと思われる村人の男達が数名倒れていた。
「で、お前は俺たちに敵うと思ってるのか?」
ゲラゲラ笑いながら蜥蜴男が言う。
村の女、子供は少年を助けたかったが助けに行く勇気もなく家の中に隠れていた。
「う、うるせー!お前らなんかにやるもんなんかこの村にはねーんだ!!さっさと居なくなれー!」
(はやくコイツらを追い払わないと…でもどーすりゃいいんだよぉー)
足がガクガクして今にも泣き出しそうだったが少年は家に隠れてる妹と母親の為に頑張っていた。
「そうかそうか。なにもこの村にはないのか」
蜥蜴男がうーむと考え込んでいる。
目線が少年から離れた瞬間、少年は今だ!と思い棒を振り下ろした。
「やぁーーーー!!!」
だが蜥蜴男は気づいていた。
振り下ろされた棒を掴みそのまま少年の胸ぐらを掴んだ。
「ダトっ!!!」
少年の母親が叫んだ。
蜥蜴男男はゲラゲラ笑いながら
「何もないんだったらお前を俺たちの玩具にしてやるよ!人間の小僧で遊ぶのは何年振りだろうなぁ」
「…っ!く、そ…っ!」
足をバタバタさせ手を振り払おうとしているが力の差は歴然で抜け出せない。
そんな時
「ダトにぃをはなせー!」
妹が家から飛び出してきた。
「リリィ!?」
母親が叫んだがもう遅い。
妹はもう兄の近くまで走り寄っていた。
「く、る…な!リリィ…っ!」
「威勢がいい小娘だ!お前も一緒に遊んでやろう!」
蜥蜴男が手を伸ばそうとした瞬間。
ゴトっ
蜥蜴男は何が起きたか一瞬分かっていなかった。
ただ腕が軽くなったのは分かった。
(なんだ…手に違和感が…)
よくみると少女を捕まえようとしていた手から肘までの腕が地面に切り落とされていた。
「なっ!なんだ!!?一体何が…?!」
驚いた衝撃で少年を掴んでいた手を離し、切り落とされた腕を触っていた。
少年は訳が分からなかったがさっきまで自分達を蔑んでた奴が慌てふためいているのをみて
今のうちだ!と側に落ちていた木の棒で蜥蜴男を叩こうとして木の棒を拾おうとした瞬間
「おいおい少年。勇敢なのはいいがまずは妹を連れて逃げるのが先だろ?」
と後ろから声がした。
少年が振り向くと妹を抱っこしている男が立っていた。
「ダトにぃ!」
妹が泣きじゃくりながら名前を呼んだ声にハッとして少年は妹と男に駆け寄り妹を抱き寄せた。
男はフッと笑うと蜥蜴男に向かっていって切り落とした腕を拾い、蜥蜴男に投げつけた。
「なんだぁ?最近のリザードマンは弱い奴らをいじめて楽しんでんのか?」
男は笑いながら話しかけた。
投げつけられた腕をキャッチして怒り任せにその腕を握りつぶりた蜥蜴男。
「てめぇ…なにもんだ?」




