表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

4

男が目を見開いた。

何かを問われる前に、セレナは口を開いた。


私は言葉を託されただけ。何者でもない。

そもそも託した老人は、狂人かもしれない。

アウナンの王に、言葉を届けよ、と


告げると共に少女の体から緊張が抜けた。

思い込んでいた使命を果たした安堵が体を支配する。

と、男の背後、彼方の混沌を僅かだが直視した。


瞬間、頭と心に無数の幻想が駆け抜けた。

白銀の鎧を纏ったセレナによく似た女、金色の瞳をした女があの荒野。越えてきたはずの枯野で朽ちかけた老人を前に佇んでいる。

微笑みを浮かべた老人が、そして、想像の中の女が金色の瞳で自分を見つめる。瞬間、その存在感とあまりにも自分と酷似した容貌に耐え切れず、また混沌に体と心を犯される不快感にセレナは嘔吐した。


床に這い蹲って酸っぱい胃液を吐き出した。都にて振舞われた粥の粒がおぞましい虫に、羊の肉が人の赤子めいた人面の肉片に、変わり果ててキィキィと耳障りに歌い出す。


……ぁ。まるで錐で刺したような頭痛が絶え間なく頭の芯を襲う。凄まじい悪寒と震えに歯を食いしばり、己の体を抱きながら、セレナは床へと倒れ伏した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ