表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

干し豆

※舞台は中世欧州風異世界なので、現代人の慣習や生活様式から見ると、不快に思えるシーンもございますぞ。


戦乱のイシュタリアには、浮浪児など掃いて捨てるほどいる。

戦災孤児とは限らない。親が捨てることもあれば、貧困から故郷を捨てる子供たちもいる。

一々、餌付けしていたら限がない。

それでも農場に生まれ育ち、野山を駆け回ったセレナは、食べ物だけなら幾ばくかの余裕があった。

ベルト代わりの縄に結んだ小さな麻袋から、乾燥した豆をパラパラと取り出して、口元に含ませてやるが、硬くて噛み切れない様子だった。

一瞬悩んでから、母親が弟や妹に対してどうしていたかに思い当たる。

豆を口に含んで噛み砕き、唾液と混ぜて柔らかくなったものを口移しに与えてみる。


抱きしめられたまま、子供は口をモグモグと動かして、豆をごくりと飲み込んだ。

食べた。

なるほど可愛い。あー、可愛い。

世情は荒れている。子供が死ぬのを幾度も傍観してきた。

セレナは、知恵も力もないただの小娘だ。

祈る以外に何もできなかった。

だから、今、助けたこれは気まぐれだ。

これから先、面倒を見続ける力などない。拾えば、共倒れになるかもしれない。

恐らくは、いずれこの子も死ぬのだ。

誰かに助けられた思い出があれば、少しは救われるのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ