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チーズケーキ 6

 「な~んかアレだよね」と、もう一度5組に、今度は一人で迎えに行った私にオオガキ君が言った。

「迎えに来てもらうドキドキ感半減されたよねさっきので」

「…あ~…ごめんなさい」

「や、いいんだけどさ。…イズミ君なんなのかな~~。いやもう一回聞くけどイズミ君彼氏じゃないんでしょ?」

うん、とうなずく私。

「じゃあイズミ君は大島さんの事が好きなんだ?」

「…」

「や、でもさぁ」とオオガキ君はまだ続ける。「なんでオレなんかの事気にするんだろイズミ君。イズミ君の方がかっこいいのにねえ?」

 そう言ってじっと私を見つめるが、そんな事言われても『うん』も『ううん』も答えられない。

「それでさぁ」と好奇心丸出しのオオガキ君。「大島さんはイズミ君に好きだって思われてんのに、なんでちょっと困った感じ出してんの?」

「…いや…あの…別に…」

「別にじゃないよね。気になるからオレ。大島さん、今はオレの相方なのに」



 その後校庭を出るまでに『言ってみ?』を連発されて、ヒロちゃんの事を話してしまった。元から話し易かったオオガキ君は聞くのもうまい。たぶん他の人から言われたら鬱陶しいだけなのに、オオガキ君の『それで?』は、『ほんとに事情を知っときたいだけ』感満載に思えて、やっと今日ユマちゃんにも話した事をオオガキ君にまで話してしまう私だ。

「へ~~~」と目を輝かしかけたオオガキ君が棒読みで相槌を打つ。「そっかそうなんだへ~~~そっか」

「あの…練習お願いします」

「練習?あ~はいはい練習はするけど。…そっかへ~~」

「あの、オオガキ君、小学の時ボーズだったでしょ?その私が好きなイトウヒロトって子はもうずっとボーズで今でもボーズなんだよ」

「あ~ボーズだったねえ…。なんかさ…あ、そうだ、ササキからなんか言われた?」

「ユマちゃん?」

「ササキに連絡しちゃったんだよね、大島さんの事で」

「…うん」

「じゃあまあいいや練習練習」


 今日は陸上部がいつも使っているグラウンドの西側の、その隅っこで練習をした。オオガキ君は体操服に着替え、私は制服のままだ。昨日のように丁寧に、それでも言っていた通り短めに20分くらい練習してくれた。

 ありがとうを言う私に、「なんかさあ」とオオガキ君が言う。「ああいう感じでイズミ君が何かオレに言ってくると、余計大島さんの事気になってくるのにね」

「え?」

「いや、『え?』じゃなくて。じゃあオレ部活行って来るわ。ちょっと走るとこ見てく?」

見たいかも。オオガキ君が本気で走るところ。「うん。ちょっとだけ、邪魔になんないとこで見ていくよ」

「じゃあね」

手をひらひらと振るオオガキ君だ。私もつられて振り返す。

「あっち見て」とオオガキ君が降っていた手で東側のグラウンドを指さす。

 タダが部活のハンドボールで走り込みをしている。タダも頑張ってるね。…女子のギャラリー多いな。ヒロちゃんも頑張ってるかな。中学の時は二人で頑張ってたよね。女子に周りでキャーキャー騒がれると、ヒロちゃんが「今練習中だぞ。お前ら、オレのイズミだからな!」って言って、ギャァ~~~って言われながらも女子を追い返してたよね。




 そしてそんなヒロちゃんから夜に電話があった。

 ヒロちゃんから電話!花火大会で最終的に振られてからラインもほぼなかったのに電話!

「なあ、ユズがオレより年上とかありえんのんだけど」とヒロちゃんの第一声。

「いや、いつもどんくせえから」とヒロちゃんが続ける。「オレより確実に年下かと思ってたわ」

「私、誕生日何回か教えたよね」なんかプレゼント欲しい!って思って。

「マジでその度に、こいつオレより年上じゃん、て思ったんだけど、最初で年下だと思い込んだから今さらユズを姉さんだとは思えんな」

「言っても、会ったの小1で同じクラスになった時だったでしょ?」

「まあまあなって事で誕生日おめでとうございます!」

「…ありがとう」もしかしてタダから聞いたのかな。

 でも嬉しいな!ヒロちゃんからサプライズの誕生日おめでとう。


 「イズミにな」とヒロちゃんが言うので、やっぱな、と思う。もう。余計な事喋んなくていいのに!

 でも嬉しいけど。すごく嬉しいけど!ヒロちゃんからサプライズの誕生日おめでとう貰った。

「ユキのとこへ誕プレ持ってくのに恥ずかしいから一緒に行ってくれって頼んだらな、そいでなんだったらユズも一緒にって思ったらな、その日はユズも誕生日だからってイズミが言うから」

「…」

「イズミが、『オレに先に言ったから良かったけど、大島の方、先になんも考えないで誘ったりしてたらまた大島傷付く』ってな、言うから」

「…」

「イズミはマジでかっこいいわ~~~って思ってな。っていう話。っていうかユキと同じ誕生日ってすごくね?」

ほんとすごいよ。ヒロちゃんより私の方が確実に驚いたからね、と思うがそんな事は言わない。

「そういう事もあるんじゃない?」

「あるか?オレの周りだと初めてなんだって!え?例えば誰と誰が一緒の誕生日か知ってんのか」

「…」知らないよ。

「誰と誰?」

そこ話広げるかな。


 思いきって聞いてみよう。「なんでユキちゃんにプレゼント渡すの恥ずかしいの?…もう付き合ってんでしょ?」

「あ~~、まあな。なんつうか…オレのキャラ的に?」

なに疑問形にしてんだ。なにが『あ~~、まあな』だよ。

「ケーキあげるんでしょ?」知ってんだからね。

「ユキがケーキを一回ホールで食いたいつってな」

なに嬉しそうな声で話してんだヒロちゃんキモいぞ。でも可愛いなユキちゃん。

「でも食べきれないかも、ってユキが言ってな。残りをオレが食う事になってる」

「あそう!」

バカじゃん!羨まし過ぎるわ!ヒロちゃんに振られた私の心の傷が完全に癒えたと思い込んでんじゃねえぞ!


 ふざけんな、と思う私にヒロちゃんが、知ってんだぞ、って感じで続ける。「ユズもケーキもらうらしいじゃんしかも手作りの」

 もう~~~。タダはなんでヒロちゃんに話すのかな。大好きか!…大好きだよね、それは知ってた。

「カズミもユズの事気にいってるらしいじゃん」

「うん」

「可愛くてクソ生意気だよなカズミ。うちの姉ちゃんもすげえ気に入ってる」

ヒロちゃんのお姉さんのミスズさんはタダの事も気にいってるんだよね。



 「なあユズ」とヒロちゃんが改まったようにいうので、ちょっとドキッとする。「なんか二人三脚するらしいじゃん」

「うん」

「大丈夫なんか?」

「うん大丈夫。一緒にやる子に練習してもらった」

ヒロちゃんが練習してやる、とか言い出さないかな…

 言い出せ!!

 「なんかな?イズミが心配してたからな」

オオガキ君の事まで話してんのか?…なんなんだ、なんでそんなに何でも話すんだタダ。

ヒロちゃんが聞く。「そいつオレに似てるん?」

「タダは言ってたけど、似てないよ。似てるとこもあるけど」

「どっちなん」

「どっちでもないよ。ユキちゃんにおめでとうってラインしてみようかな。同じ誕生日だよって言って」

「お~~、てかもうユキには教えたすぐに。なんかすげえ偶然だつってキャーキャー喜んでたぞ。一緒にケーキ食べたいつってた」

ユキちゃんほんと相変わらず可愛くて良い子だな。

「じゃあさ、」と、自分でも少しどうかなって思いながら言ってみる。目の前でいちゃつかれたら嫌だけど…「4人で食べてみる?タダが作ってくれるって言ってるケーキもあるし」

「バカかユズ!」いきなり大きな声を出されて耳がきん、とした。「イズミはユズだけに食わせてやりたいから作んだよ」

「…カズミ君も食べるって言ってたけど」

「カズミはいいんだよ。なにわかんねえ事言ってんだよ」

なんで私怒られてんの?誕生日おめでとうって言ってくれるために電話してくれたんじゃないの?




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