96.兄弟
主人公が国造りをしているのはあくまでDP収入の増加が目的です。それと同時に色々なものができてきてくれるので楽しいと感じているわけです。
雪解けを迎えて、もう春となった時、エルドの体調が戻り義兄弟の誓いということでお酒を酌み交わすことにした。場所は孤児院から近くの空き小屋だ。ここはほとんど人が来ず、周りからも見えにくい。そこにエルドは小さい瓶に入ったお酒を持ってきた。
「エルド、その酒はどこから持ってきた!?」
「これかい?鍛冶屋のベルグのおじさんのところにあったから、だまって持ってきた」
‥それ、たぶんベルグの毎日の楽しみにしていた晩酌用のお酒だと思うぞ。ベルグはドワーフで通説どおり、お酒好きだ。特に仕事の後の1杯がうまいんだと言っていた。見つかったら相当怒るだろうな。うん。僕は関係ない。関係ない。
「では始めようかイオ。あ、もちろん僕が兄だからな」
「わかった。エルドが兄で僕は弟で」
「では、僕たちは兄弟として、いついかなる時も助け合う。皆が安心して暮らせる豊かな国を作り、死が2人を分かつまで。乾杯」
「乾杯!」
こうして僕たちは兄弟となった。しかし、この世界のお酒は旨くないな。ただ、アルコールが入っているだけという感じがする。だが、僕はこの味を忘れることはないだろう。やっと念願の第一歩なのだから。それも理想以上の展開でだ。そんなことを思っていたらエルドは
「やっとこれで一歩だ。イオがいてくれないと僕だけではどうにもならなかったからね。これで僕とイオは裏切ることのない兄弟だ」
としみじみと安心したといった風で話し出した。
「そうだね。エルド。しかしエルドの能力は単体では諸刃の剣だよね」
と話をむける。
「イオは気が付いたみたいだけど、僕の天照は良いスキルなのだが、完ぺきではない。自身の強化ではなく周りの強化だしね。それも“敵”含めてね」
やはりエルドは欠点を自覚していたか。
覚醒にはある程度の時間が必要だが、それが味方だけとは限らない。よくあるライバルのような敵として複数回戦うような場合でも覚醒させる可能性がある。そうでなくとも、例えばスパイとして入ってきていた者はより可能性が高いわけだ。
そこで僕の『セクシーボディ』である程度味方へと変えることができる。才能あるものの勧誘の成功率も上がるだろう。
僕としても領域内の人間が強くなることはDP収入の増加にもつながるので文句はない。これでお互いWIN-WINの関係ができたわけだ。
「エルドは国を作るにあたって、どうするつもりだい?傭兵団を作るかい?商会を作るかい?」
「それなんだけど、その両方にしようかと思って」
「両方!?」
「うん。商会は元々父のがあるからそこを基盤にすればなんとかなると思う。傭兵は商会所属とすればいいと思っていて」
確かに可能だ。確かにどちらかだけとする必要はない。商会所属の傭兵団もあることはある。だが、軍隊並みに強力な傭兵団を抱える商会はないはずだ。有能な人材が数多く必要になるが、そこはエルドの能力でなんとかなるだろう。
やっと兄弟となりました。
これで学校に行けるかはエルマンドさん次第となります。