93.エルド覚醒
今回からステータスで表記される特性のことをパッシブスキルとも呼ぶことにします。そのため「スキル」と言うと任意発動型のスキルと特性の両方を指すことになります。今までのところで矛盾することはないと思いますが、もしあれば教えていただけると助かります。混乱させてしまうこともあるかと思いますが申し訳ありません。
エルドと孤児院の図書館で本を読みつつ、ワールハイトの学校へ行くにはどうすればよいかと話をしている。エルドは父のエルマンドさんからお金を出してもらえれば良さそうだが、僕が兄弟になる?どういうこと?
「なんかで読んだんだけど、イオは僕と盃を交わせば兄弟になれると」
ああ、そういうことか。義兄弟の契りってやつね。三国志の桃園の誓いとか最近の漫画でもあったな。そんなの。最近といっても読んでから100年は経過してるけどね。
なんでエルドはそこまでして僕と友好関係を築きたいのか?よくわからないなぁ。こっちにはデメリットは特になさそうだから結んでもいいんだけど。おそらくは『セクシーボディ』の効果なのだろうけど。だが、その場合でもエルマンドさんへ僕にも出資しろというのはおかしいと思うが。なので、その点をエルドに話し、僕たち以外にも学校へ行きたい子はいるに違いないので継続的にお金を得る手段が必要だとも話した。
「わかった。兄弟の話は一先ず置いておいて、確かにお金を稼ぐ手段や方法を考えないといけなさそうだね」
「うん。今はお金がなくても、生活出来ているから何とも思わないのだろうけど、村から出るのであれば絶対に必要なことだと思うよ」
「だけど、元々お金がないこの村でお金を稼ぐのは無理があると思うよ。大事なのは認めるけど」
確かにエルドの言う通り元々お金がないこの村でお金を稼ぐのは無理がある。そこは北にある逃亡者の村でも同じだろう。いや、待てよ。逃亡者の村のエルマンドさんのお店なら可能ではないか?エルドにも聞いてみた。
「なるほど、この村から何かを運んで北の村で売れば、お金が手に入る可能性があるね。というよりそれしかないね。イオ流石。頼りになる」
ということだった。今の僕らでは逃亡者の村、(ちなみに最近では逃亡者の村を北の村とか北村とか言う)そこより北への移動は無理だ。距離がありすぎること、魔物への対抗手段がないことなどから無謀でしかない。
「そんな褒めなくてもいいよ。エルド。エルドも同じような考えに行きつくよ。なにせ僕らがお金を得るにもお金を持っているのがエルマンドさんだけだからね。北村から北へは僕らでは行けないわけだし」
「確かに僕らでは無理だけど、イオなら行けるでしょ?」
「うん?」
「イオは何かの理由で能力を落としているんだね。へぇ。これが勇者とか選ばれしものしか見えないというステータスか。しかもイオは何も鍛えたりとかしていないのに、他の子よりも能力が高いじゃないか。ずるいよ」
!?
なんだと!?エルドは勇者でもダンジョンマスターでもないんだ。『鑑定』が使えるはずがない。そういう魔道具ももちろん持っていない。なぜステータスが見えているんだ??確かにこの体は成長するに従い能力が本来の僕に近くなるように設定されている。今のところ何も鍛えなくても想定通りの能力に成長しているのを確認する実験中でもある。
僕はすぐにエルドを『鑑定』した。そしてこの孤児院へと来てから『魔力視』という常時発動型のパッシブスキル(ステータス上では特性になる)を切っていたことを後悔した。この孤児院だけではなく南村周辺は無駄に魔力が高いところが多く、『魔力視』で魔力を見ているだけでも疲れるのと、この村に危険がないことがわかっているので消費を抑えるためスキルを発動しないようにしていたのだが、今回はそれが仇になったか。
いや、エルドがこのスキルに覚醒したのはつい最近のはずだ。最初は間違いなくなかったスキルだ。それにこれだけのスキル、今のエルドでは使うだけでも負担が大きいはずだ。そういえば最近の高熱と体調不良はもしかしてこれが原因か!?待て、落ち着け。エルドはそれで僕と義兄弟になろうとしたのか?ならばエルドは僕の敵ではないはずだ。
などと僕は混乱しつつ考えていたが、エルドが覚醒したスキルはそれほど強力なスキルだ。
『天照』
これが、エルドが覚醒したスキル名だ。
『天照』は常時発動型のパッシブスキル、ステータスでは特性欄に表記されます。
その詳細は次話で。




