91.秘密だよ
今回は前フリと前回入れるはずだった話を入れてみました。
僕は皆が雪で遊んでいるとき、いつものように孤児院内にある図書館、本当に小さいものだが、で本を読んでいた。僕以外他には誰もいない。皆遊びに行くか、仕事をしている。最近読んでいるのは他都市や国での習慣や特徴を記載した本だ。この本は周辺の都市や小国などを見て感じたことなどをまとめたもので、実は僕のお手製の表のようなものだ。
この世界では写本技術は低い。製本機や活版印刷があるはずもなく、手書きでの写本がせいぜいだ。そもそも製紙技術が低く、きれいな白い紙といったものもない。DPで出せるのかというと出せない。おそらくはまだ、作り出せていないのだと思う。
この図書館にある本はエルフが紙を作り、せっせと写本したものや持っている知識から書き上げた物がほとんどで、実はその中には他のどの都市にも知られていないような現代地球では当たり前の知識もある。知られれば他都市の学者がこぞって見に来ようとするくらいのことは起きても不思議はない。そのようなことは他の孤児たちは気が付いていないが。不思議と言えば、この世界勇者やダンジョンマスターなど前世の記憶がある転生者が比較的多いはずだが、発展度と言うべきか、とにかく文明の発達が遅い。生活でより便利になる簡単な道具などはもっと広まっていてもおかしくはないはずなのだが‥。
‥などと考えていたら、エルドとノフスが入ってきた。僕以外がこの図書館に来るのは皆の勉強の時間以外では珍しい。
「国を作るためには勉強しなくてはいけない」
「生活のためには勉強しておいた方がいい」
と2人は言って、それぞれが自分の知りたいことが書いてある本を探す。
エルドは<各国の成り立ち>と言うタイトルの本を、ノフスは<植物図鑑>を持ってきて読み始めた。
エルドはこの前言っていた建国はどうやら本気のようだ。この周辺は元々どこかの国や都市の土地ではないので“独立”ではなく“建国”となる。その建国の方法は?と聞かれると実は非常に簡単。周囲に「建国します」と言えばいいだけだ。だが、大変なのはそのあとで、まずは周囲の都市などに頼ることなく自立できなくてはいけない。その点で言えばこの村と逃亡者の村は自給自足できているので問題はない。他都市との経済的な影響や関係はないに等しいのでこれも問題はない。問題点として1番大きいのが戦力的なことだろう。
仮に現在建国したときに、他の都市からの軍などによる威嚇をされた場合、対抗手段がないためにいわゆる植民地支配される危険性が高い。現在も決して豊かとはいえない生活だが、搾取の対象となることは容易に想像できる。モンスター部隊を使えば対抗はできるが、他都市すべてから“魔王認定”されてすべてが敵になる可能性がある以上、そうそう使うことはできない。
その後、班での話し合いがあり、僕はエルドに
「建国はいいけど、それをまだここ以外で話すことはしてはいけない。ここだけの秘密にしないといけないよ」
と忠告した。ライドとミーアは頭に??が浮かんでいたようだが、エルドは
「それはもちろんわかっているよ。信用できる人にしか話はするつもりはないし、そうなると、ここの6人以外には言えない」
「「なんで?」」
「ライド、ミーアよく考えてごらん。もし自分が領主で、自分の領地で建国したい人がいるとわかったらどうする?」
「どうもしない」
「助ける」
とライド、ミーアの回答だが、
「では建国後、敵になることがわかっていれば?」
「「あ」」
「わかったようだね。間違い無く今のうちに処刑しようとするよ。もしくは“不敬罪”か“反逆罪”ってことで探して捕まえようとするね」
「特に獣人族差別のひどいユニオンなどではライド、ミーアはまず捕まえたら拷問される可能性が高いよ」
エルドの答えと僕の補足でライドとミーアは理解して、ちょっと震えているけど、これで簡単に話はしなくなるはずだ。
ミーアとライドはおバカですが、今回は何も考えていないだけです。ちなみに直感は鋭いので今後その辺を書ければ‥‥。