83.エルマンドの想い
この辺りは書きやすくて助かっています。
孤児院の話を聞いたエルマンドはすぐ孤児院に行き、院長をしている見た目20代のハーフエルフの女性と孤児院2階にある院長室で話をした。
「私は商人をしておりますエルマンドと申します」
「わたくしはこの孤児院の院長をしておりますレーナと申します。隣は副院長のニコルです。エルマンド様はこのようなところへ何用でしょうか?」
「実は私にこの孤児院の補助をさせていただけないかと思いまして」
「補助とはどのようなことでしょうか?」
「例えば、資金面の援助や食べ物、衣服の援助を考えております」
「‥わたくしたちはここで自分たちの食べるものを栽培しておりますが、なんとかやっていけているといったところですから、それは大変ありがたい申し出ですが、何をお求めになられているのかは存じませんが、わたくしたちに出せるようなものは何もありませんよ?」
「あくまで援助は援助。そちらからの見返りは何も期待してはおりません」
「つまりエルマンド様はわたくしたちに無償で何の見返りもなく援助をすると?あなたは商人でございますよね?」
「あなた方が疑うことは当然かと思います。確かに私は商人ですし、普段は何らかの利益を求めて行動していますが、今回の件に関しては違います!」
「なぜ?と理由をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「口外無用でお願いしたいのですが」
「わかりました。みだりに言いふらすような真似はエルフ族の誇りにかけて致しません」
「ありがとうございます。では‥」
そこでエルマンドは自らの思いを話始めた。自分は元々他国の工作員として育てられたこと、親は名前も顔も知らないこと。国のためなら何でもすることが素晴らしいことだと教え込まれて育ったと。だが、戦争で国が滅んだ後、行商人としてあちこちの国、都市を見て自分の考え、教わったことが間違いであったことに気が付いたと。自分の今までの行動が奴隷、特に子供の奴隷や孤児を生んでしまったのではないかと思い悩み続けてきた。特に最近自分にも子供が生まれ、自分はどのように彼らに償えば良いのか?を真剣に考えるようになったと。
商人として成功した今、罪滅ぼしとして売れ残りとして処分されそうになっている奴隷、特に幼くして奴隷となった子供を買い、保護したが、自分だけではどうにもならない。
そしてエルマンドは院長へ提案する。
この孤児院に援助する見返りにそういった子供を連れてくるから預かってくれないかと。もちろん奴隷ではなく普通の孤児として。
この提案に対し、院長であるレーナは
「‥皆で検討いたしますので、少々お時間をいただけないでしょうか?」
と返し、エルマンドは了承、答えを待つことにした。
この話を僕とシャールさん、クナの3人で聞いていた。
僕はOKと言った。2人もOKということだった。
「マスターが事あるごとにこの男を見ていたので、もしかしてそっちの趣味だったのかと軽蔑していましたが、なかなかいない好人物のようですね」
といつもの毒を混ぜたシャールさんの言葉にショックを受けた僕。ストー〇ーでもホ〇でもないよ?シャールさんにそんな風に見られていたとは‥。
レーナが皆と相談しますと言ったのは本当ではあるが、最終的な決定権は僕にある。皆もエルマンドの提案は受ける方向で相談していたが、こちらもOKと返事をしたことで、提案は受けることで決まる。ほどなくその旨はエルマンドへと伝えられ、南村の孤児院は表には出ないが、エルマンドをパトロンとすることになった。
ほどなくしてエルマンドは幼い子供の奴隷を奴隷から解放し、孤児として孤児院へと連れてきた。わずかだが‥。と言いつつ、お金と食料、衣服も置いていった。この村では服の材料となる麻、綿が採れるので孤児院ではそれを加工して服を作っていたが、豊富というわけではないため、衣服は非常にありがたかった。
その後エルマンドは逃亡者の村の建物を隠し支店として、自身は都市連合へと戻って商売を再開した。
エルマンドさん良い人です。今回で孤児院の実質オーナーはエルマンドさんになりました。というお話でした。