80.ブラックスミス
前回もう少し続きますと言いつつ、今回でダンジョンマスター編は一旦終了です。
ゴバ君が配下に加わったわけだが、改めて僕からプレゼントを渡すことにした。
「まずはダンジョンコアを渡すよ。少しだけどここを整備するくらいはできるくらいのDPが入っている」
「えーと。ありがたいですが、僕はダンジョンマスターとしてやっていく気はないですよ?」
「それで良いよ。こっちも無理にダンジョンマスターやってもらおうとは思っていないから。今回渡したコアとDPはゴバ君の守りのためだから」
「??」
「鍛冶などのための環境整備、助手や弟子なんかも必要だろうし、作ったものを盗まれないようにすることも大事だから」
「なるほど。これでドワーフ増やせば良いし、ダンジョン作って鉱物資源を作れるようにすれば助かるね」
「そういうこと。あと、この辺、魔物多いから護衛としてウルフ系のモンスター20体くらい置いておくから。普段はこの辺の魔物狩らせておけば大丈夫だし、狼車作って使っても良いし」
「それは助かる。ありがとう」
「いえいえ。ここは今後重要な場所になるのは間違いないからね。このくらいはしないと」
ゴバ君はここを自分用の鍛冶場のつもりだけど、ここはおそらく村か街になると思っている。それもこの大陸で最先端の高度な鍛冶技術を要する街として。理由としては、ゴバ君自身とドワーフ族の鍛冶技術の高さに加えてエルフ族のエンチャント技術の組み合わせによる魔武具はこの世界では見られなかった技術だから。この魔武器、いわゆる伝説級の武器の元になっていることが確実なので、一度知られたら相当有名になることが予想される。さらにこの場所はサミーのダンジョンの入り口から一番近い平原部になる。大陸中央部と西部を隔てるセントリクス山脈を超えるため、現在は山脈北部の川を渡るルートが主だが、そこを通るために制限がかかっている。これからさらに制限がかかれば、サミーのダンジョンを通るルートを選ぶ者も増えると思っている。そうなるとここは山脈超えのため最後の休憩所となる。
「あとエルフの隠れ里への転移ゲ-トも作っておこう。基本的にはゴバ君だけが使えるようにしておく」
「それ、すごい助かる。ここエルフの里まですごい距離があるからどうやって行こうかと思っていたところだったし」
「あと必要なものがあればコアに言ってくれたら用意するようにしておくから安心して」
「わかった。ありがとうイオ」
「竜系の素材やら鉱物持っていくから、装備作ってくれよゴバ」
「いいよ。サミーさん。その他必要な材料があれば言うから」
サミーもちゃっかり装備作成の依頼をしているが、しばらくは環境整備で無理だと思うが。僕も落ち着いたら依頼しよう。
その後、しばらく時間が経ち、ゴバ君の工房兼自宅と専用の巨大炉、弟子、助手たちの住居や畑などなど小さな村のように環境を整え、ゴバ君の工房奥の倉庫の角を隠し階段を作りダンジョンへと繋げている。非常用の避難場所兼鉱物の採掘場として機能している。このダンジョン奥にはエルフの里への転移ゲートがあり、ゴバ君は定期的に行き来している。将来的にはここで作られたものが売り買いされていくことを想定して鍛冶屋も作ってはあるが、現在お客がいないので開店休業状態である。
この村を鍛冶の村ブラックスミスとした。
周囲は道など一切なく、深い草原、森に囲まれているため外部との接触がほぼない村だが、基本的にこの村で自給自足できており、生活上の問題は特にない。周囲の魔物はウルフたちが対処しているし、たまにドワーフたちも参戦して武器の試用をしているくらいだ。今のところは全くと言ってよいほど問題なかった。これから探索者やら逃亡者やらが通るときに見つけることがあるかもしれない。そうなったときにどう対応するかが問われる。だが、それはまだ当分先の話だろうと思っている。まずはこのまま“親方”であるゴバ君を中心に鍛冶、精錬技術その他の発展をしてもらうことが大事で、村としての発展は後々で良いと言ってある。
これで僕はある程度地盤が固まったと思っている。これからは本格的にダンジョンコアのレベルアップ、DP稼ぎに集中できる。これからも人材探しを続けていくが、誰か良い“王”の候補はいないものか。
村の名前、安易かな?とか思いましたが、いい名前が思いついたら後々変わるかもしれません。