69.女神の悪意
今回の話、意味は全く分からないかもしれませんが、非常に大事な布石のつもりです。
今回、リュートが来たことで同盟が大きくなり、僕の数十年のひきこもりの弊害が明らかになったわけだが、その分疑問が出てくるわけで‥
「これで“大陸同盟”の件はサミー交えて決めれば良いとして、リュートは女神教の国を亡ぼすのは確定?」
「確定だね。あれはあってはいけない」
「リュートがそこまではっきり言うのだからよほどなんだろうけど‥」
「‥イオにはまだ見えていないことがたくさんあるからわからなくても仕方がないけど、女神教の国というより女神ができることを減らすっていうのが目的だね」
「??」
「そもそも女神教の国は“教皇”が女神からの神託を聞いて、それを最優先で実行することを目的にしていて、実行部隊の長が“聖女”なんだ。実際、勇者たちを彼らが自覚しないまま操っているのが“聖女”の役割で、女神の狂信者といっても良い。そこの力を削げば僕だけじゃなく他のダンジョンマスターもやられることは少なくなる」
「なるほど。でもかれらは人族の味方じゃないの?なくなると影響が大きそうだけど?」
「そうなんだが、そもそもこの世界には人族だけじゃなく、生きとし生けるものに“女神の悪意”が満ちているから、そろそろ少し痛い目にあってもらわないと」
「“女神の悪意”??」
「‥この世界はどうしてできたか父様からは聞いているかい?」
「そういえば、最初に“傷ついた魂の保養地の世界”って言われたな」
「そう。魂の回復のための世界と言っていいが、僕たちと女神とは“魂の回復”の意味が違うというか、この世界そのものに対する考え方が違う。その違いを僕は“女神の悪意”と呼んでいる」
「世界そのものに対する考え方の違い?」
「そう。まだ世界が見えていないイオに対して言えるのはこれくらいだが、女神は決して人族の味方ではない。ということは覚えておいてほしい。僕はこの世界の人間の文明は発達してほしいからね」
「なんかよくわからないけど、この世界の文明がいつまでも発達しないのは女神が何かしているせいだと」
「そうだね。そしてその“何か”はおそらく現在、父様、魔王、竜王、僕、教皇、聖女しか見えていない」
「何らかの強力なプロテクトがかけられている?」
「ああ。だから今のイオでは見えないし、見えていない者に 言ったところで信じてはもらえないだろうから」
「そんなものか」
「そんなものだね。そしてイオがその“女神の悪意”を知った時どういう対応をするか?は興味深い」
「僕もいつか見えるようになると?」
「なると思うよ。対応は色々あるけどね。反抗、静観、便乗、信仰などなど。できれば自分と同じく反抗してほしいけど」
「それは見てみないとわからないな」
「だろうね。その時にはもちろん相談に乗るよ?」
「“女神の悪意”がなんなのかさっぱりわからないが、その時はよろしく」
「こちらこそ。自分はそろそろ行くよ?」
「サミーとの会合の時は連絡する」
「了解」
ということで僕たちは握手してリュートは自分のダンジョンへと戻っていった。
ちなみにダンジョンマスターの種族を表にすると以下の通り、末尾の番号で決まっていることがリュートから聞けた。
1番 魔族 (不死族含む)
2番 竜族
3番 悪魔族
4番 有翼族 (天使族含む)
5番 海獣族
6番 獣人族
7番 エルフ族
8番 ドワーフ族
9番 植物族
0番 人族
100番以内に人族は僕とリュートしかいないとのこと。だから、僕が英雄にやられたと思っていたリュートは自治都市群に嫌がらせをしたらしい。(経済的に)
人族のダンジョンマスターは、最初は弱すぎて生存が難しいが、後々大きく伸びる晩成型が多いらしい。確かに壁を超えるのが大変だが、超えてしまえばそれまでのことは簡単にできるようになることが多いのは実感している。
この時点でリュートたちは主人公の2~3歩先を行っています。ここに追い付くにはどれくらいの時間が必要になるのか。次回はそんな話になると思います。