60.ワールハイト
やっと西側の状況を書けました。
今回は今までで最大の文字数になってしまいました。ちょうど切れ目がなくて。
逃亡者の村から西の森を超えたところにある自治都市“ワールハイト”この都市は僕が来たときより壁を拡大し、元の壁はそのままに、さらに周囲を円形の高い壁に囲まれ、南から流れる川を壁と壁の間に通し、西へ抜けるように設計された。この川の周囲で農業をし、領主館を中心に西部と北部は居住区とお店が立ち並ぶ区域に、東は工房が立ち並ぶ区域となっている。東は“魔の森”と呼ばれる魔物が住む森に南は“魔の森”から続く森と良質な石が採れる採石所があり、南西は南の山脈から流れる水で湿地帯となっている。北から西は自治都市や小国群が争う紛争地帯という場所にあり、たまに紛争に巻き込まれる場合があるが、周辺最大の都市となっていた。
街南部の農業地帯でこの街の主な食料を生産しているが、基本の主食は小麦であるこの世界で、南西にある湿地帯では稲があり、そこから栽培のため農業地帯へ運んで、徐々に“米”が食べられるようになってきたところである。
南の森や東の“魔の森”からは良質な木材が採れ、“魔の森”に住む、オークという豚人族ともいわれる魔物は厚い脂肪で撃たれ強く、腕力も強く、2足歩行で武器を振るうため倒すのが苦労する魔物ではあるが、その肉は非常に上質で“高級食材”として扱われている。いわゆる豚肉である。他にも魔物から採れる材料は非常に有用で様々なところで使われている。そういった魔物退治を専門とする傭兵や“魔の森”で採れる貴重な薬草などを探す探策者といった人が多くいることも1つの特徴だろう。
この世界には“動物”はいない。すべて魔力の影響で“魔物”となっている。徒歩以外の移動手段は“魔物”を使役しての乗り物か奴隷にひかせるかということになる。
そのため“馬車”はない。馬はいるが魔物で、頭部に1本の立派な角を持つ“ユニコーン”や翼を持ち、空を駆ける“ペガサス”などで、皆、気が荒いため乗り物として使っている者はごく少数である。
より一般的なのが、狼系の魔物である“ウルフ”を飼いならした“狼車”であるが、そういう乗り物となりうる魔物を飼いならすことを専門としている“テイマー”と呼ばれる人は非常に少ないため、“狼車”であっても、ワールハイトでは非常に珍しい乗り物であった。
つまり“狼車”を持つことは1種のステータス、成功の証であった。
ダンジョンマスターたる僕、イオは今、念願かなって初めてワールハイトに来ることができた。
もちろん生身、というか本体ではない。
この間、召喚可能モンスターが50種を超えた記念に“生体魔人形”通称“ドッペルゲンガー”が召喚可能となった。この“ドッペルゲンガー”はもう一人の自分とか言われるやつで、対象者に接触すると、対象者の姿や能力、スキルまでコピーして使用することができるゴーレムや人形系のモンスターである。これに『憑依』することで自分の意のままに動くダミーができる。
ただし、ダンジョンマスターに対しては、ステータスは本体の最大半分まで、スキルも一部コピーできないなどの弱点があることがわかった。姿はマスター側で自由に変更可能であるので、そのままの姿にするも良し、変えるのも良し。である。だが、姿を変えた場合、コピーできるステータスは格段に落ちる。僕の場合、見た目を若くしたり、老けさせたりするだけで10分の1くらいまで落ちるし、例えば、翼を生やすとか角を生やすなどすれば100分の1以下まで落ちる。スキルも必要ステータスに満たない場合は使用不可もしくは使用可能なLVまで落ちる。
現在の僕は7歳くらいの見た目にして、髪の毛を金に、肌を白に変えてある。それだけでステータスは10分の1くらいになった。だが、元のステータスは上げている。運以外はDP100万で1上げられるため、1日300万くらい収入がある、今の僕にとっては上げることに苦労はあまりない。1年くらい獲得した全DPをステータスアップに注げば、各ステータスは1000を超える。HP、MPに関しては10万で1のため1万を超える。その10分の1でもHP、MPは1000超え、その他各ステータスは100を超えることになる。そのステータスは人間にとっては強化前の英雄にも匹敵するので、よほど集団に囲まれるとかしない限りは大丈夫だろう。仮にやられても本体ではないため、特に被害はないし。
子供の姿にしたのは、何も知らない設定の子供の方が情報収集しやすいと考えたためだ。また万が一、襲われても子供ということで油断してくれることも期待している。その間に逃げることくらいはできるだろう。
ワールハイトには直接『転移』で入った。街の東西南北にある門を通るには“通行料”が必要で一文無しの僕にはどうにもできないからだ。
この世界のお金は一律で、銅貨が一番価値が低く、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨と価値が上がっていく。すべてリュート神聖国製の通貨で銅貨1枚が1リュート、日本円で約1円として扱われる。銅貨10枚で大銅貨1枚と同じ、大銅貨10枚で銀貨1枚と同じ、というようになっている。
やっとドッペルゲンガーが出せました。




