59.ダンジョン及び周囲の状況
西側の状況まで書けませんでした。
時間がかなり経過したので、色々状況など振り返ってみると‥、
まず、僕、イオのダンジョンはダンジョンメイドを増やし、ダンジョン最下層付近で植物の栽培を始めた。食料となる植物、薬や毒になる植物、お茶なんかも栽培し始めた。これらは日々改良中だ。シャールさんはどうもこういったことが好きなようで、メイド長にして任せている。本来は僕の身の回りのことをお手伝いしてもらおうと思っていたが、実際はほとんど仕事がないのでこれで良いことにしている。
ダンジョン内はDPの使用にてある程度自由に環境を変えることができる。そのような環境にもできるということは貴重な植物の栽培もできるということでもあるので、今後色々な所から植物を持ってきて栽培しておくと、もしかしたら数百年後には地上では絶滅したはずの植物が必要なのだが、ここにある。みたいなことがあるかもしれない。
どのような環境にもできるというのは、鉱脈もつくることができるということでもある。現在、鉄はもちろん、金銀銅に白金の鉱脈に、石炭や天然ガスの鉱脈、さらにはルビーやダイヤモンドといった宝石となる原石が採れる鉱脈も作成可能になっている。精錬技術が拙いため高度なことはできないが、この世界の場合は魔法による錬成、錬金術があり、そう言った方向から錬成できないか探索中である。
村の方はと言うと、ラドの村、南ラドの村はギガゴブリンの一件から、周囲の街や村では生存者はいないと思われている。実際、時間が経過しており、ギガゴブリンの恐ろしさは語り継がれているが、村の名前は語り継がれず、忘れられていた。
曰く、
「南から来た巨大なゴブリンが英雄たちを苦も無く皆殺しにしていった」
「ギガゴブリンは通ってきたところは人の住める土地ではなくなる」
「巨大なゴブリンは南に帰っていったが、手を出してはならん」
「ギガゴブリンは人間でどうにかできるものではない」
「南部はギガゴブリンを中心とするゴブリンの住む土地が広がっている」
‥などなど言われており、わざわざ南に来ようとするものはいないし、仮に行こうとしても、またギガゴブリンが来てはたまらんということで、止められる。ということになる。
しかし、実際は少数だが、住んでいる人はいる。かつて、領主たちが集めた傭兵たち、ダンジョンがなくなり探索者たちはいなくなったが、元々この辺りは、冬は雪が降るとはいえ、豪雪地帯ではなく、何十mと積もることはなく、1~2m積もる程度である。(それでも移動、特に徒歩はほぼ無理だが)
春はその雪が解け、辺りに池や湖を作るため、水は豊富。気温も夏場は低いどころかむしろ高いくらいで、いわゆる肥沃な土地であるため農業には向いている。
職業としてお金を稼ぐには大変だが、一家で自給自足くらいなら十分すぎるくらいできる。傭兵たちがいなくなり、魔物の脅威はあるが、それほど大型の魔物は森を出てこず、小型の、素人でもなんとかなるくらいの魔物がたまに出る程度であり、畑を耕し、働かないと誰もが生きていけないので、子供のいたずら程度はあっても、大きな事件などはなかった。
つまり、皮肉なことに領主がいたころよりも平和な村となっていた。その住人たちは自分たちの村の名前を覚えておらず、村の外に出ることは全くなかったため、他の村や町がこの村の存在を知ることはなかった。
ちなみに塩は?と聞かれると、なんと村の東側すぐのところに岩塩が大量に見つかり、買う必要がなかった。これはもちろん、僕が置いたものであるが。
この村の住人たちが村を出ない理由はそれだけではない。そもそもこの地にいる人はギガゴブリンの襲撃を生き残った人の子孫だけではなく、他の村や街を追い出された人々や過酷な生活に耐え兼ねて逃げた逃亡奴隷が大半であった。この世界で村や町を追い出されることは“死刑”と同義であった。追い出された後は、餓死するか、盗賊となるか、戦闘能力があれば傭兵となれるかもしれないが、追い出された事実を知られると周りの信用が得られないため、隠さなくてはいけない。下手をするとずっと追いかけられる、逃亡の日々を送ることになる。当然、逃亡奴隷は見つかれば連れ戻されて、さらに過酷な生活になる。ならまだ良いが、通常は“死”が待っている。
そんな彼らが流れに流れて来たのが、ラドの村で、今は自分たちの村を“逃亡者の村”とか“忘れられた村”と呼んでいた。
そんな彼ら“逃亡者”たちの中でも特に見つかりたくない者は、さらに南、元南ラドの村へとさらに逃亡するのであった。そこは“逃亡者の村”と同じく言われるときもあれば、ただ“南村”とか“集落”と言われていた。
次回こそ西側の状況を




