40.ギガゴブリン対ラド制圧隊
前回のあとがきでゴブリン無双って書いてしまったから、今回も無双するのは確定です。
勝負もう少しぼかした方がよかったでしょうかね?失敗したかな。
ラドの街の様子をうかがっていた制圧隊は巨大な姿のゴブリンと、直後に上がった領主館からの巨大な火柱をみて、
「これはどうやら想定外のことが起きてしまったようですな。シャリフ隊長殿」
「おお、これは英雄ヘンドリク様、ちょうどよい。専門家のご意見をお聞きしたい」
と、制圧隊隊長のシャリフとマリンガにいたはずのもう1人の英雄ヘンドリクが話し合う。
こういう魔物が多い地域での隊の活動を妨げない目的で対魔物の専門家である英雄が付いてきていたのだ。というより、単にヘンドリクが魔物退治をしたがっていただけであるのだが。
ヘンドリクは年齢30歳後半の戦士でフルフェイスの甲冑を着込んだオヤジを通り越してそろそろ老人になろうかという人物である。脳筋とか戦闘狂とかという言葉がぴったりの。そんな彼が見たこともないゴブリンを見て撤退をするわけがなかった。
「では、我々が援護しますので、ヘンドリク様はゴブリンを」
「うむ。その後のことは任せるぞ」
「ええ、ゴブリン退治後にラドの制圧に向かいます」
「‥ちらっと動きを見たが、明らかに異常な力を持っているゴブリンじゃ。おそらくはバルダのやつが何かしらの攻撃をダンジョンにしたことで、出てきたんじゃろうが‥」
そこにラドの街を通り過ぎてきたギガゴブリンが現れる。
「ほんに見たことも聞いたこともないゴブリンじゃ。だが明らかに強い。くくくっ。血沸き肉躍るとはこのことか」
近接戦闘を仕掛けようとするヘンドリクを援護するため制圧隊の魔導士3名が詠唱を開始する。他の制圧隊員はその攻撃に巻き込まれないよう魔導士たちの近くにはいるが、射線は妨げない位置にいた。
制圧隊には集団戦闘を援護するため、この世界では貴重な魔導士3名を組み込んでいた。その彼らが詠唱するのは火魔法LV1の『ファイアショット』
数発の小さい火の玉を飛ばす魔法で敵の足止めや部隊などの集団戦に使える魔法である。そもそも今回はゴブリン自体が大きいため、的としては十分な大きさで、如何に俊敏でもすべて避けるのは至難の技であるはずであった。それが3人分。その数と範囲に援護としては十分に思われた。
だが‥‥
『『『ファイアショット』』』
『‥ファイアショット』
その3人分よりもより多数で広範囲に広がる火の玉を生み出したギガゴブリン。
「「なっ!!?」」
それが彼ら魔導士3名の最期であった。
そんな彼らより広範囲の『ファイアショット』だが、1発1発の威力も彼らを大きく上回っていた。そして、それをまともにうけたラド制圧隊のほとんどが壊滅的な状態となる。その中には英雄のヘンドリクもいた。近接戦闘を仕掛ける前に魔法の一撃で完全に戦闘不能とされてしまったのだ。しかも、おそらくは今後戦闘はもう無理であろうと思われる重傷を負って。
周囲はまだ火がくすぶり、草などは燃え、小さいクレーターのような穴がいくつもあいている。
その状況を見て、隊長のシャリフは自身も戦闘不能の重傷を負いながらも
「‥全軍撤退する。マリンガまで戻れ‥‥」
と指示を出し、なんとか生きていたヘンドリクと生き残った隊員と共に撤退に入る。それを見たギガゴブリンは追撃するのではなく、
「‥お腹減った。眠い」
と言って西の森へ行くのであった。
これでお仕事完了のゴブリンは帰宅します。またどこかで出番があるかな?と考え中