39.ラドの街の崩壊
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ニコラスが報告を受けていた頃、南ラドの村を滅ぼしたギガゴブリンはラドの街を目指していた。20km程度の距離はギガゴブリンにとっては大した長さではないが、2時間程度はかかる。
本来、そのくらいの時間があれば、対応するための準備くらいはできたはずであったが、ニコラスが報告を嘘と決めつけていたためギガゴブリンが現れたときは通常対応の兵しかおらず、姿が見えてから対応したのでは準備が間に合うはずがなかった。
そのため野戦による迎撃ではなく、領主館での迎撃、つまり街を巻き込むことを選択したニコラス。
彼は自分の街やその住人、自分の側近たちでさえも、がどうなろうと、どうでもよかった。ただあまりにも大きなゴブリンという未知の怪物から自分さえ助かれば。そして側近たちは悟っていた。もうラドの街は助からないことと、ニコラスはもうだめだということを。そのため側近たちでさえも自分だけが助かろうと一番安全であろうニコラスの館へと集まっていた。その中にはパスカルもいた。皆ここにいれば最低自分だけでも助かると信じて。
だが‥‥
『ファイアボール』
街の入り口付近から放たれた魔法により一撃で南ラドの村と同じく、領主館、その周囲の土地を焼き尽くされてしまう。
ゴブリンはさらに先に進もうと街へ侵入。迎撃に出た兵士たちがすべて倒されるか、逃げるかした後、結果助かったのは領主館より最も遠くに住んでいた人、つまり、奴隷や浮浪者、平民たちで、領主たちと関係が深い商人たちは領主館の近くに住んでいたり、大きな通り、つまりゴブリンが通れるくらいのに面していたため、彼らもある程度ではあるが被害を受けることとなった。
一方その少し前、パスカルから連絡を受けたマリンガのラド制圧隊500名はラドの街の北、3kmほどのところに布陣して潜んでいた。彼らはマリンガからここまで付近の村から食料などを接収してここまで来ていた。この時代ではまだ兵站の概念があっても重視はされていなかった。
ちなみにマリンガからラドの街までおよそ600km、東京、大阪間を往復に近い距離がある。つまりそこまでの村はほぼマリンガの勢力圏ということになる。いかにマリンガという都市が大きく、力があるかということを示している証左となる。
もちろん、この規模ではきちんとした管理がされているわけでもなく、ただ、各々の村任せの統治しかしていない上、何かあってもマリンガが対応することは少ないが。
そんなマリンガが送ってきた兵500名、数は少ないと感じるかもしれないが、ラドの街、南ラドの村合わせて兵力300はいない、仮に住人を徴用すれば兵数は増えるが、ろくに訓練はされておらず、まともな装備も支給できないラドでは対応が厳しい数である。元々がダンジョンコア破壊後の混乱に乗じた制圧が目的のため、それほど多くの兵を必要とはしていなかったこともあるが。
そしてラドの街の様子をうかがっていた制圧隊は巨大な姿のゴブリンと、直後に上がった領主館からの巨大な火柱をみることとなる。
もう少しゴブリン無双が続きます。その後1話挟んで新展開へと進む予定です。




