38.忍び寄る崩壊の足音
しばらくゴブリン大暴れの展開が続きます。
ダンジョンから脱出したマルコがラドへ向かった後、
南ラドの村はゴブリンたちの攻撃にさらされていた。しかし、領主の館を狙っているのか、一般人の家や人は攻撃しない限りは攻撃されなかった。そのことに気づいていたのかは定かではないが、大半の人々はゴブリン退治には行かずに家にこもっていた。やられたのはゴブリン退治に行った傭兵や衛兵たち。彼らは反撃を執拗に受け全滅寸前であった。
そしてそこに、村近くのダンジョンの入り口から巨大なゴブリンが現れた。そのゴブリンが出てきたときにダンジョンの入り口は崩落したが、それに気をとられる者はいなかったのかもしれない。とにかくゴブリンの大きさ、インパクトがそれほど強かったから。
領主の館を攻撃していたゴブリンたちだが、当然無傷とはいかない。むしろ領主の館までたどり着ける者の方が少なかった。衛兵や傭兵にやられたり、中には住人にやられるのもいた。領主の館にたどり着いても弓矢や魔法で迎撃されるため、なかなか大きな被害は与えられなかった。
ゴブリンリーダーを中心とするゴブリン隊だが、彼らは攻撃されると徹底して反撃していたため、被害も多かった。連携がとれていて、いくら数がいるといってもそれではどんどん数を減らさざるを得ない。そのため人間側とすれば比較的守りやすい状況であり、このままいけば守れると思っていたし、そういう雰囲気になりつつあった。
だが‥‥
「なんだ、あのばかでかいゴブリンは!?」
「突然ダンジョンから大量のゴブリンが出てきたと思ったら、今度はなんだ!?」
「落ち着け、でかいが所詮はゴブリンだ。今まで通り迎撃するぞ」
しかし、彼らは知らなかった。そのでかいゴブリンが今までのゴブリンとは一線を画す存在であることを。もし、マルコが南ラドへ情報を流していれば、もしかすると対応は変わっていたのかもしれない。
ダンジョンから出たギガゴブリンは辺りを見回して、領主の館の位置を確認すると、まだ100mほど距離はあったが‥‥
『‥‥ファイアボール』
直径20mはある大火球を生み出し、領主の館へと叩きつける。
その一撃により、この世界では比較的、贅を凝らした館とその周辺の土地が一瞬で燃え尽きる。中にいた領主であるジョージやその取り巻きである人、その周辺で死体となっていたゴブリンたちを巻き込んで。
『ファイアボール』は火魔法Lv1の初歩的な魔法であるが、通常このような規模、威力は出ない。これも<ギガモンスター>という特性による強化があってのものだ。
この一撃で南ラドの村はなくなり、奴隷や浮浪者たちのスラムと化した場所が残ることが確定した瞬間であった。
そのまま、ギガゴブリンはラドの街へと向かう。
一方、ラドの街では、ダンジョンから逃げてきたマルコがニコラスに報告していた。しかし‥
「はあ?でかいのかは知らんがゴブリンにやられておめおめ逃げ帰ってきたと?そんなゴブリンなど聞いたこともない。つくならもっとまともな嘘をつけ。まぁ、たかがゴブリンごときにやられるような英雄様に報酬を払わなくて済んだからよしとするか」
とまだ英雄が死んだとは限らないが、気にするどころか嘘と決めつけるニコラス。
しかし、その側近であるパスカルはその報告を聞いた後、すぐにマリンガへ報告を入れ、ダンジョンなきあとのラドの街の制圧部隊に警戒するよう伝えるのであった。
せっかくの情報を無駄にするダメ領主。世襲の2代目は基本ボンクラの典型例ですね。教育もきちんとされていなかったようなので、当然のことか。




