30.兄弟
この世界に善人はいないのかと思ってきました。ただ、頭の悪い悪人って書きやすいんですよね。ここまで悪いとむしろ書いてて気持ちいいくらい。
ラドの街、南ラドの村は領主である豪族、ラドチェスカがその部下たちと開拓した土地である。彼の死後は長男ニコラスがラドの街を次男ジョージが南ラドの村を治めることが決まっていた。
そして、ラドチェスカは寿命を迎えようとしていた。
「皆、集まっているな。そろそろ死期は近い。後のことは任せる。ニコラスを中心にして家を盛り立てよ」
「「「はい!」」」
その数時間後、ベットの上で眠るように息を引き取ったラドチェスカ。以後、長男はニコラス・ラドチェスカ、次男はジョージ・ラドチェスカとしてラドのまち、南ラドの村を治めることとなる。
喪が明けた数日後 南ラドの村 領主の屋敷
「うるさかった父がやっといなくなった。これで好き勝手できるというものだ」
「そうですな。色々とあれやこれやと自分の意見を押し付けるようなことが多々ありましたからな。これで思い通りに進めることができそうですな」
「うむ。そのとおりだ。このままここを発展させて、いずれ兄もろともラドの街はわがものとしてくれよう」
「このままこちらの戦力の拡大に全力を注ぎます」
「ああ、そうしてくれ。そして何か向こうが手を出せば、それを機に攻め入ってくれよう」
一方 ラドの街 領主の館
ニコラスとその側近たちの会議の場
「‥‥‥では以上で各報告を終わります。引き続きまして次の議題ですが、南ラドの村です」
「何かあったか?」
と聞く二コラスに側近は
「ダンジョンがあり、豊かな土地で、しかも鉄、銅が採れる。石も。その話が周辺に伝わり、移住者が多く来ております。それによりわがラドの街も潤っております」
「うむ。良いことではないか」
「しかし、南ラドの村わが街以上の発展をしつつあります。このままではいずれ立場が逆転することは間違いないものと思われます」
「その通りだな」
「そのとき、ジョージ様はニコラス様に大人しく従うでしょうか?」
「それはないな。あいつは私のことが嫌いだ。一応表面上は父の手前仲良くしていたが、それは間違いない。このまま南ラドの村が発展すれば、いずれ必ずこちらを邪魔者として排除に動くだろう」
「それはまずい。今のうちに何とかしなければ」
「しかし、ジョージ様の排除はできない。常に警戒されているし、その後の混乱を収めるには人手がたりない」
ワイワイ、ガヤガヤ‥‥
色々意見が出てくるが、どれもさしたる効果はなさそうな意見ばかりであったが、側近の1人が意見を出す。
「これはどうでしょうか?」
「何かな?」
「ダンジョンコアを壊しましょう。そうすればこれ以上の南ラドの発展はない」
‥‥!! ‥‥‥!!?
「それは…そもそも可能なのですかな?」
「可能でしょう。私の伝手で北にいる英雄、バルダ様をお呼びします。彼にこちらから数人ついていけば十分可能と考えます」
‥‥!! ‥‥‥!!?
「おお。あの英雄殿ですか!!?確かに彼なら可能でしょうが、いかがなさいますかな?ニコラス様」
「‥なるほど、確かにかの英雄であれば問題はないだろう。それにダンジョンはもはや不要だからな。土地があれば良いのだから」
「では早速お呼びいたしましょう」
「ああ、頼む。報酬はもちろん可能な限り払うので何がいいか聞いておいてくれ。くれぐれもジョージには悟られないようにな」
「かしこまりました」
次回英雄登場の予定ですが、結末はどうしようか考え中です。




