283.神の世界の話
前回色々詰め込み過ぎて自分で混乱してました。後片付け回です。
追い詰められた女神がすべてを吹き飛ばすつもりでエネルギーを溜め、解放しようとしたとき、女神の後ろから子供の手が生え、溜まっていたエネルギーはすべて消え去った。
「なぜ、お前がここに!?どうやって入った!?」
「我が眷属といっしょにさ。やはり気が付いてはいなかったようだね?女神よ。相変わらず、能力は高いが、使い方がお粗末なのは同じか。まあ、神に成長などというものはないのだから当然といえば当然だが、ね!」
「ぐはっ!!」
「このゲームは僕の勝ちだ!安心して手を引くが良い!」
そう言って、子供、ってかめんどくさい。魔神様なのは確定だし。魔神様は手を無造作に引っこ抜く。同時に女神はお腹の穴を中心にひび割れ、破片となり、破片が空気に溶け込むように消えていった。
これがこの世界を創り、好き勝手にやってきた女神の末路とは。
今回リュートの言う通りの状況にはなったが、事前準備含め、色々反省点が多い。最初から見られていたということだし、おそらく、この展開は魔神様の想定通りだろう。胃が痛い。まずはかしこまった方が良いか。リュートもかなりきつそうだが、動こうとしているし。
「お前たちはそのままで良い。どうせ正式な場でもない。かしこまる必要はない。それに今回はお前たちの働きで女神をこの世界から追放できたのだ。誇るが良い。しかし、リュートよ。今回はかなり無茶をしたな」
魔神様がこちらの様子を見て、このように話しかける。言われたリュートは顔を伏せながら、ビクッとした。
「申し訳ありません」
「別に謝る必要はない。確かに、いかに神剣とはいえ、かろうじて神剣という程度の最下級の神剣で女神に挑んだのは無謀だが。あれでは下級神の相手がせいぜいといった性能なのだ。上級神にはほぼ効果はない。しかし、そのおかげで、女神の意識が我から逸れた。そこを我が突かせてもらったわけだ。結果的には良い働きであった。まあ、そもそも、お前が本来の力であれば、“幸運の星”ももっと効果時間が長く使えたのは間違いないのだが。色々焦り過ぎだな」
「申し訳ありません」
リュートは魔神様の言葉にただ、謝るだけ。と、思っていたら、こっちに来た。
「イオも今回はお前らしくないことに、情報収集が中途半端だったな。全面的にリュートを信頼したといえば、良いのかもしれないが、リュートのいいなりであったな。お前は魔剣グラムが育ち切って神剣になるまでは上級神相手にはまともにダメージをいれることはできん。まあ、あれは鍛え続ければ千年ほどで神剣になる剣だ。それまで待てなかったといえばその通りだしな」
魔神様からのダメ出しがきたが、その通りで反論の余地はない。だが、あの魔剣、神剣になるのにそんなにかかるのか。絶対に間に合わないし。おそらくは情勢変化後を見越した魔神様の布石の一つなのだろうけど。
「言ったろ?別にお前たちを責めているわけではないと。そうかしこまるな。お前たちは我ら神と違って、変化、すなわち成長するのだ。今回の経験を糧とすれば良い」
以前聞いていたが、僕ら上位のダンジョンマスターはこの世界産の神ということになるが、魔神様クラスの異世界産の神は、生まれた時から完全。経験を得たところで変化、つまり成長はない。
力はあった女神がはっきり言って戦い自体は弱かった理由はここにある。要はチートだけもらって碌にその使い方も知らず、ただ振り回していただけ。戦い方自体は素人のそれだった。しかも、そこから変化、成長はないわけで。
「さて、今我は気分が良い。やっと決着がついたわけだしな。聞きたいことがあろう?今なら答えてやろうと思うくらいにはな?」
そんなことを言う魔神様。まあ、魔神様からすれば、ついに上級神は自分だけになったわけで、念願かなったというわけだから。さて、何を聞こうかな?と思っていたら、リュートが
「では、恐れながら。私が。女神がこの世界から消えたことで、勇者の選定及び、女神教そのものはどうなっていくのでしょうか?」
そう質問する。それに対し、魔神様の回答は
「今後の勇者および、ダンジョンマスター出現システムは大幅に変わることになる。具体的には神から直接ではなく、魂の摩耗度により勝手に選出されることになる。勇者は魂の摩耗度が高い者が、ダンジョンマスターは摩耗度が高すぎて回復が困難な者がなることになる。女神教自体には特に何もないお前たちの好きにするが良い」
であった。勇者だけでなく、ダンジョンマスターの選定も変わるんですか。へー。…あれ?確か、魂の摩耗度が高い方が色々やられて、ヒトとして壊れているんじゃなかったっけ?
「すいません。その場合、勇者は特に条件などはなく、誰にでも発現することがあると?」
気になったので質問してみたところ、魔神様より、
「その通りだ。ちなみに、もし、今後ハイヒューマンから勇者が産まれた場合、ヒューマンが勇者になった場合よりも初期値と限界能力値が大幅に上がる。具体的には比較的簡単に今の魔王や竜王クラスと単独でやりあえる能力に育つ。気をつけよ。また、ダンジョンマスターは魂が摩耗した部分を無理やり補ってダンジョンマスターとし、倒されることで魂の破損部分の修復個所をなじませることになる。故にヒトとしては壊れていると言って良い。こちらも気をつけよ。決して味方と思って安易に近づくな」
マジか。というかやっぱりか。
「あの、その言い分ですと、父上はこれからどうなさるおつもりですか?今後いなくなるような話し方が気になって」
リュートはそんなことを言う。
「リュートよ。その認識で正しい。我は、というより上級神は世界に1柱となった時、世界を離れなくてはいけない。離れずにいると、世界に対し悪影響しか及ぼさない故に。エンドコンテンツ。そう言えばお前たちはわかりやすいか?女神はもうずいぶん前からこの世界を見放していた。そして、世界ただ1柱の神となることで、最も自分に被害がなく離れることを考えていた」
「では、神がいなくなったこの世界はどうなるのですか!??」
「世界は神がいようがいまいが、世界に存在するあらゆる生物その他の活動により変化していく。今より良くなるも、悪くなるもお前たち次第。というわけだ。実際高次世界、元々お前たちがいた世界もすでに神はいない。それより高次の世界にもな。世界は神から離れることで巣立つと考えよ」
これが魔神様のというより、上級神たちのルールらしい。
他にも、“並列存在”によって、様々な世界に同時に干渉していることや、僕らがいる世界のように低次の世界は数多あり、高次の世界もそれと同数以上あり、それぞれで魂の循環をしているらしい。神たちの共存によって成り立つ世界。逆に神たちの戦場となっている世界もあるが、その中で神のお世話から離れることで世界は高次世界への第一歩を踏み出すことになる。
世界の成長の途中。すべての世界が上手くいくわけではなく、中には崩壊する世界も当然あるらしく、残された生命その他の活動次第らしい。
そんな話を聞いていた僕らに魔神様は
「では、我はもう去る。おそらく、もうお前たちと会うことはあるまい。我の神域はそのままにしておく故、ダンジョンコアを通し、会合なりなんなり好きに使うが良い」
あとは任せた。そう言わんばかりの言葉を残して魔神様は消える。
今後どれだけ時間がかかるのかはわからないが、神として成長することで、世界から離れ、上級神として活動をする中で、また魔神様と会うことがあるのかもしれない。と思ったが、上級神は生まれた時から完全らしいから、不完全な僕らは成長できたとして、中級程度なのかもしれない。
そんなことを考えていたら、リュートからの提案で
「イオ、今回の件や知りえたことは一部の者以外には極秘としたい。世間一般には神々は去ったとだけ発表する」
「なるほど。それであれば、女神がまた現れるかもしれないと思うものが出てくるね。この世界の基本的な倫理観などは女神教から来ているし。ここで女神がこの世界への干渉権を失ったとわざわざ公表する意味はないしね。ならば女神教の信者や残党は放置だね」
こちらがあえて、女神殺しの汚名をかぶる必要はない。女神教の狂信者の残党は今回でほとんど討ったし、生き残りがいたとしても、また集まるだろう。その時に再度討てばよい。
今後、ハイヒューマンは間違いなく増えていくだろう。その中から勇者はいつか産まれる。その時、こちらが絶対悪として討伐対象になることはできれば避けたい。能力スゲー高いらしいし。すべてはこれからだが、勇者だけではなく、ダンジョンマスターもヤバイ奴らが増えそうだ。頭が痛い。
女神:もうこのゲーム飽きたやめたい!でもいくら並列存在でもやられると痛いから、他の皆がやられたらいい。
魔神:いや、お前がやられろ!
略すとこんな感じです。
次回更新は1週間後を予定しております。章も変わる予定ですが、しばらく章題はつかないと思います。