27.ギュンターの所業
変態オヤジの話
ギュンターの好みは若い女性、それも10代前半の少女と言っても良い年齢の女性だ。
「さて、どの娘がいいかのう?」
と、辺りを見渡して、気に入った娘がいると
「そこの娘、わしは筆頭魔法使いのギュンターじゃ。わしと来い。断わるとどうなるかわかっているよな?」
と強引に誘う。仮に連れがいて断ろうとしても、こぶし大ほどの火球を出し、
「ふむ。あくまでわしの誘いを断るというなら炭となってもらうだけじゃが?」
と言えばこの街で断れるものはいない。実際に親か恋人かが断ってきたこともある。しかし、その場合は断ってきた相手に火球を投げてやれば、もう断れない。火球は攻撃魔法ではなく生活魔法の“着火”にMPを注いだもので殺傷力はないが、当たれば火傷くらいはする。
ワールハイトには傭兵用の宿がいくつかある。ギュンターはその中のお気に入りに娘を連れ込み、ある程度時間が経ってから出ると、ギュンターの弟子であり、身の回りの世話をしている魔法使いが入り口で待ち構えていた。
「おお、メイソンではないか。こんなところへ何用かな?」
とご機嫌のギュンターが白々しく言うと、まだ若い少年と言ってもいい魔法使いであるメイソンは深くため息をつきつつ、
「師匠。供を付けずに街には出ないようにあれほど言ったではないですか。何かあってからでは遅いのです」
「な~に、この街にわしをどうこうできるやつはおらん。それよりいつものようにあとは任せたぞ」
「かしこまりました。娘はどうなさいますか?妻としますか?」
「それもいつも通りだ。このまま捨て置く」
「また、子供ができたと喚かれることがあるかもしれませんが?」
「わしの子とは限らん。それにもし本当にわしの子なら魔力があるからどうにでも生きられよう。こうして、わしのような優秀な魔法使いの種をばらまくのも大事なわしの使命じゃて」
といういつものやり取りが交わされてギュンターは屋敷へと帰っていく。
そんなやり取りを見ていた僕は「ハァ」とため息をつきつつ、
「クズだね」
とつぶやく。
うちのメイドのシャールさんは
「こんなクズの行動をみて何か楽しいのですか?主様」
と侮蔑の目で僕を見てくる。
「楽しくないよ。むしろ凄く不愉快だよ」
僕がこんなクズの所業を見ていたのはあくまで魔法の使い方を学ぶためだ。
最初にこのギュンターを見つけた時、攻めてくる相手軍に対し、火魔法の1撃で追い払っていた。どれだけの強さなのか鑑定したら、火魔法はLV2だった。他は無属性以外は使えないという、大して強くはなかった。
しかし、先ほどのように生活魔法を攻撃魔法に見せるようなブラフやはったりは、引き出しとしては持っておきたい。そもそも攻撃魔法を使うには詠唱が必要であり、無詠唱は1つのスキルとなる。そういった使い方の上手さは知っているだけで対処できるが、知らないだけで余計な警戒や対応をしてしまうことになる。駆け引きの上手さといったところは学ぶ必要があるところだ。しかし‥
「このクズの行動を見るのは、非常に不愉快だよ。色々と」
主人公はこの変態オヤジに対して何か対応はしません。というかする必要はないのです。理由はどうなるか予想がつくでしょう。




