261.ニニムの動き
今回大分短いです。すいません。
海王ニニムのダンジョン攻略速度は異常と言って良いほど早かった。
ウチのダンジョンは階が下になるほど、広くなり、生息するモンスターも強くなるし、罠も配置や効果がいやらしくなる。自然、攻略速度は下がる。
そんなダンジョンをニニムは配下のモンスターと合流したあと、“ダイダルウエイブ”にて召喚した波に乗り泳いで移動していた。
ダンジョンには排水設備があるので、しばらくすると水は引くが、ダンジョン内の罠は大半が水に反応し、誤作動をするか沈黙する。生息するモンスターたちはほとんどが陸上型のため、溺死するか、生きていてもまともな動きができず、ニニムどころか、配下のモンスターにすら、まともに戦うこともできず、やられる。
中には一部、水陸両用のモンスターもいるが、水中ではニニムの配下たちには及ばない。
結果、3日で11から15階層までをクリアし、15階層の階段前で休憩される有様。
「‥予想外、というか失態だな」
「まぁそういうなよ、ガキン。これは仕方ないだろう?」
司令室でその様子を見ていた僕ら。ガキンをなだめるが、鍛えた関係上、配下のモンスターたちを不甲斐なく思っているようだ。
「ニニムたちが、こっちのダンジョンに水攻めで来ることは予測していたが、この量は予測していないだろ?」
「まあ、そうなんですが‥」
ダンジョン最大の脅威と言っても良いのが、水攻めだろう。下に潜る関係上、水を流されるのが大きな脅威になる。
それを意図的に起こすことができるのが魔法だが、必要となるMP量が馬鹿でかいことと、それを維持するMP量がもっと馬鹿でかいことから、用意ができないか、やる意味がないと考えていた。
なにせ、3カ月の長期戦だ。いくらMPが回復するといっても、節約は考える。ここで、そんな莫大な消費はしないとタカをくくっていた。
おそらくはニニムはウチのダンジョンのとなりにいるレッドドラゴンのダンジョンマスターと同じく、ダンジョンマスターの戦闘能力が配下と比べて、とびぬけたタイプなのだろう。
ニニムたちは、ここで一旦、攻略を止め、様子を見るようだ。
冷静だな。
通常なら、このままの勢いでダンジョン攻略を目指すところなのだが、ウチのダンジョンが5階層づつダンジョンの難易度が大きく変わることに気が付いていたため、ここで一旦調査に入るようだ。
こういった冷静さや慎重さ、そして大胆さを兼ね備えた者がダンジョンマスターとして長く生き残るこつというか、性質なのだ。
ニニムはダンジョンマスターの中でも文句なく上位。短気なようで、粗暴なイメージがあるのかもしれないが、それだけでは上位に入ることはできないし、生き残ることもできない。
このまま、攻略に向かってくれれば、こちらとしては楽だったのに。ニニムさえ倒せばこっちの勝ちなのだから。
さて、これで、こっちは16階層までの攻略ができなければ、こっちの負けだ。今のままならニニムは倒せないから。
16層まで攻略しても、ニニムが攻略を再会すれば、20階層までは攻略されるだろう。
こっちは最低限21階層までの攻略が必須になったわけだ。
ニニムが15層まで攻略したころ、こっちは10層にすら到達していなかった。
まあ、向こうがニニム本人が来ているのに対し、こっちはダンジョンマスター代行すらいないから、当然と言えば当然だが。
ニニムのダンジョンは海というか水への対策が最大の難点だ。
酸素ボンベのような物はないので、魔法で水中での活動ができるようにする。ということで、魔法で空気を確保しつつ先へ進んできた。
ニニムのダンジョンからの反応というか動きに変化はない。
ニニムと比べてゆっくりと、しかし、確実に攻略をしていく。
ニニムのモンスターの強さは正直、予測より下回っているのが救いか。水中に特化しているのだが、特化し過ぎているため、周囲の水を抜くと、何もできないのだ。
“水中適応”というスキルがある。
これは水中での動きが良くなったり、補正がかかるようになるスキルなのだが、水中型のモンスターはほぼ持っているスキルだ。
しかし、どうも生まれ持って“水中適応”を持っている魔物はそれに頼り切りになる傾向があり、能力的にもあまり高くない魔物が多いように思う。ニニムのダンジョンのモンスターが全体的にそこまで強くないのはそういう理由もありそうだ。
もちろん、我々ダンジョンマスターから見てということで、人間から見ると違いなどわからないだろう。
ダンジョンバトル開始後、3週間後、なんとかニニムのダンジョンを11層まで攻略した。こちらはダンジョンマスター代行すら、まだ出していない。
だが、11層の攻略でてこずった。
モンスターの強さが明らかに上がったことも一因だが、蛸とイカ。ジャイアントオクトパスとジャイアントスクイードの両モンスターが普通に出てくるようになったことが原因だ。
長い足で遠距離から攻撃してくる。単純な魔法攻撃では届かない距離からだ。
それに水が加わるため、一番楽な攻撃法は水の流れを活かした攻撃で“水中適応”持ちだと威力が上がる攻撃だ。
11層ではそこまで数が多くなかったことも幸いして11層は攻略できたが、これ以降は数も増えるはずで、このままでは厳しいことは明らかだった。
「まず、主力出そうか?」
「はい、では、アレハンドロの方を出しましょう。それで良いですね?マスター」
「ああ、道は作ってくれているから、結構早めに着きそうだね」
ニニムはこの間、調査のみで先に進む気はないようだ。
まずは15階層を目標に攻略開始だ。
次回からニニムのダンジョンを攻略していきます。
次回更新は来週の月曜夜の予定です。