255.海王とのダンジョンバトル前
少し短めです。
今回はいつものダンジョンバトル前の会議、ブリーフィングだ。
メンバーは僕とダンジョンマスター代行の5人。
「さて、ルールも発表されたことだし、一つ一つ確認、相談していこう。まずは30層、ウチは100層以上ある。そのどこを選ぶか?だ。意見は?」
そう言うと、ダンジョン深層部担当のガキンが手を挙げたので発言を許す。
「下から30層で良いかと。最精鋭のモンスターと最凶のトラップで底力を見せるべきかと」
それに対し、ミヒャエルは反対意見を出す。
「今回は全ダンジョンマスターが見るので、ウチのすべての機密なども見せることになります。そこまでは不要でしょう。それに、出入り口が一つしかないので、相手の軍を全滅させない限り、こちらから援軍は送れないことになります」
そうなんだよね。ミヒャエルの言う通り、全力となると、切り札、隠し玉すべて見せることになる。まあ、もちろん、変に温存とかして、ダンジョンバトルに負けたら目も当てられないのだが。要はあまり効果的でない切り札や隠し玉は温存しておこうと。
それに出入り口が一つというのは相手のモンスターを全滅させないと、その入り口は使えないわけで、こっちから攻めるための軍に対し援助ができないということになる。
明らかに格上との対決の場合、徹底的に守りを固めて、相手が疲弊したところを、ちょっと攻めて、攻略階層で勝つ。みたいな、サッカーなどでいうカウンター一発狙いの戦術はあるが、勝率は低い。
特に今回は相手が同格となるので、そこまでする必要はないだろう。それに、見ている方は面白くないだろうし。
あとは、逆に守りは手薄にして、時間稼ぎだけにし、すべて攻撃、攻撃全振りで行くことも考えられるが、短期決戦でなければ詰む。格下ならいざ知らず、同格に対してはこれも勝率は低い。
如何に相手の攻略を遅らせ、効果的に相手のダンジョンを攻略できるか?が問われることになるし、そのぶつかり合いが見たいということだろう。
正直、今のウチのダンジョンの状態であれば、攻守ともにかなりハイレベルなものを見せることができるはず。
そう考えると、ゴブオウが手を挙げる。
「一番バランスが良いのは入り口が3つある1~30階層までで、10層、あとは入り口は一つになりますが、中層から10層、最下層から10層でしょう。強力なモンスターのみを上層に移すことは可能ですが、今までと生育環境が異なります。本来の力を発揮できないモンスターも出てくるでしょう」
これも、その通り。
ダンジョンはいわば独立した生態系ができている異世界で、弱いモンスターや相性の良いモンスターを狩って生きている。草食の動物のように、草食のモンスターもいる。(草食と言っても外敵に対し、強力な戦闘能力を持っているのがモンスターだが)
3カ月という期間この生態系を止めるしかないわけだが、食事は必要なのだ。草を食べていたモンスターがいきなり砂漠で3カ月とか生きることは難しい。仮に生きていたとして、そんな状態で戦わせて、本来の力を発揮できるか?ゴブオウが言っているのはそういうことだ。
考えなくてはいけないのは、入り口が3つある1~30層を何層出すか?だろう。
この30層で行くと、モンスターが弱すぎて守れない。かといって、少なすぎると援軍を送れない。
「よし、決めた。1~30層の内、5層。6層目が31階層でそこで3つのルートを合流させる」
少なすぎるかな?でも策はある。入り口が少ない方が防衛はしやすい。
「7~10層は32~50階層の中から出す。11~20層は51~90階層から出して、21~29層は91階層以下最深部から出す」
30層目はダンジョンコアルーム兼司令室でダンジョンコアとそれを守るモンスターしか配置しない。なので、ここに来られた時点でまず負けだろう。
中層、深部とこのくらいのバランスで配置すれば、3カ月なら生態系もそこまで破壊されないだろう。21層までの到達は許容範囲内とする。
人であれば、7層到達で偉業だろうが、おそらく、海王は少なくとも21層までは攻略してくるだろう。あとは如何に時間をかせぐか?で勝負が決まると見ている。
「攻略チームの編成はいかがしましょう?」
ガキンが聞くが、これに関してはほぼ決まっている。
「攻略チームの将はアレハンドロとマクシミリアーノ。防衛は僕、そして他3人の代行で行う」
これは前からほぼ決まっていた。なんせ、今回は海を攻めると言っても過言ではない。僕らは海中でも魔法さえ使っていれば水中呼吸はできるだろうけど、常時は無理。水中戦?もっと無理。
呼吸の必要のないデーモンロードのアレハンドロとセラフィムのマクシミリアーノが攻略チームの将になるのは当然。水中戦の実力はわからないけど、僕らよりは数倍マシだ。
「それと、研究員は当然退避、一定の能力に満たないモンスターは不参加、もしくは上層階に行って貰う」
これも当然の対処。ただ、相手に大量の食料を提供することはない。
最後に、情報収集
「事前通知ではダンジョンバトル開始以降、放送は見れないということだったけど、例えば、クナにダンジョンコア借りて、そこから見るもしくは一緒に見ることは可能かな?」
「「「!!」」」
「マスターそれは‥」
ガキン、何か言いたそうだけど、これができればなぁと。おそらくはそういうのも無理だろうな。そんなに甘くないよね?
一応、事前のセレモニー的な奴は普通に見ることができるらしいが、後は視聴するのは無理らしい。
いや、ダンジョンバトル中に、バトル空間から抜け出して、クナあたりのところへ行って、一緒に見ることができたら、楽なんだけどね?たぶん無理だよね?
卑怯?いやルール違反スレスレだと思っているんだよね。見てはいけないではないからねぇ。見ることができないだから。
後は、ダンジョンバトルの最中はなるべく集中したいので、配下のダンジョンマスターたちには連絡をあらかじめしておく。しかし、問題はエルドたち。おそらく、ダンジョンバトルが終わることには戻ってきているはずで、さらにユニオンとの戦争も始まる。こればっかりはどうにもできない。なるようになれだ。エルドだけでも対処できるだろうし。
まずは、海王と全力でダンジョンバトルだ。
ウチのダンジョンのキルモード全開で行かせてもらう。どこまで対応できるかな?
ダンジョンバトルは、イオはクナと一緒でも見れません。見ることができないので。
次回更新は一週間後の予定です。