251.神とは
魔神様の神の説明回が前半です。
魔神様からの衝撃発言。
「ダンジョンコアレベルが8に到達したダンジョンマスターは神である」
もう女神うんぬんとかを吹き飛ばすレベルの話だと思うんだよ。というか、神になったら神剣って作れるの?どうやって?それに神になって何が変わるの?
「ふむ。この話をすると皆がそのような、驚いたような、様々な疑問がわいたような、面白い顔をするな。いや、実に愉快」
「‥でしょうね。どう反応したら良いかわかりません」
魔神様からすれば面白いのだろうが、こちらとしては、困惑しかない。ここで何も考えずに「キャッホー!俺は神になったぞ~!!」って言える奴は、ここまで生き残っていないだろうし。魔神様、このあたりの匙加減とかわかっててやってますよね?
「今までの傾向から疑問に答えておくと、まず、神になったからといって、今までと何かが変わるわけではない。そもそも、“不老”の特性を持っていることが神の最低限の条件であり、ダンジョンマスターは神になるため、神たりえるか判定するための試験のようなものだからだ」
また、さらっと凄い話が。確かに神って寿命とかなさそうだし。ダンジョンマスターも今思うとここまで来るのに、色々と求められたし。特に思慮深さとか。
後々のことをある程度考えられないと、どこかで詰むようになっていたんだよな。今、思うと試験失敗は死なわけで。おそらく、他のダンジョンマスターも力なり、運なり、求められていたんだろう。そして、試験合格はダンジョンマスターレベル8だと。
「一応、神について話をしておこう。まず、神は生まれた時から完全体として生まれる。特に上級神は何らかの権能なり能力を持っている。人間などのように子供時代というのは存在しない。故に成長もない。しかし、自身の持っている能力なりの使い方を学ぶことはできるし、環境への適応も可能だ。ここまでは良いか?」
「ええ。ダンジョンマスターの不老は神の特性の1つということでしたね。自然に成長しないが、DPを使って、環境への適応はできるということですね」
この世界への適応をDP消費にて行ってきたのがダンジョンマスター。神としては今の能力はこの世界限定で使える能力ということか。
限界値が決まっているのは、本来、その能力を持っているのだが、この世界への適応をさせないと、使えないから。そういうことだろう。
「そのとおりだ。そして、神は自身の眷属たる神を生み出すことができる。ただし、眷属は生み出した親たる神の能力を超えることはない」
「ダンジョンマスター代行のことですね?確かに彼らは眷属といって良いでしょうし」
「そのとおりだ。我の眷属がお前たちダンジョンマスターであり、ダンジョンマスター代行はダンジョンマスターの眷属である」
魔神様は上級神だということだったので、僕らダンジョンマスターは中級神、超がんばって同じ上級神までなれると。おそらく上級神は無理だろうけど。
「この世界は、ユグドラシル…大樹の多数ある葉の1枚に過ぎない。我ら上級神は大樹やその枝の管理はするが、葉の管理は眷属が行うものだ。創ったのは女神であるが、我に泣きついてきてな『世界の管理ができるような神が出てこない』とな」
「そこで、魔神様がダンジョンマスターを作ったと。もしかして、女神側の神候補は“勇者”ですか?」
「どちらも、そのとおりだ。一定の成果を残した“勇者”を神にしようとしていたようで、今もあきらめてはいないようだが、あれではうまくいかん」
そらそうだろう。資質はなんとかなっても、絶対的に時間が足りない。僕なんて100年はかかっているんだし。勇者は、不老は持っていないのだから、寿命で死ぬね。間違いなく。
「では、今後、この世界の管理はダンジョンマスターが行っていくと?」
「そうなるだろうな。女神が適切な眷属を用意できない以上は、な。そもそも、力を削がれて、もはや眷属候補の作成すら困難になっているのだ。この世界への影響力はかなり落ちている」
女神は自身が創り出したからなのか、この世界にいる人だけでなく、生物を守る気はない。むしろ積極的に殺そうとしているのだ。そのような存在に人は素直に言うことを聞くか?
守る気はないが言うことを聞け。では誰もついてこないだろう。女神にとってこの世界の人は家畜ですか?と言いたい。そうだといいそうで怖いが。
「言っておくが、この世界を管理するのはダンジョンマスターになったとして、1人に任せることはしない。複数による共同で管理をしてもらう。それまでダンジョンマスターは作り続ける予定だ」
よかった。これから、ダンジョンマスターたちによる、チキチキ世界の管理権争奪ゲームはしないようだ。
「それまで、ダンジョンという異世界の作製、管理を通して、世界の管理というものの練習をしておくことだ。ああ、そうそう。ダンジョンを作ったところで神剣は生まれんからな。それと、海王とのダンジョンバトルで勝った方に我から褒美を与える。楽しみにしておくように。では、またな」
そう言って、文字通り消える魔神様。同時に認識阻害も消えたようだ。僕も一旦、ダンジョンへ戻っておこう。
さて、女神のことは直接どうこうするためには神剣が必要と。で、その神剣は女神の信者。つまり、女神教の誰かが持っている。現在、女神教の影響力が最も強いと思われるのがユニオン東部。つまり、僕の領域内。
探してみたが、見つからない。ダンジョンコアも探せないようだ。まあ、神剣だしな。そう簡単には見つからないだろう。ユニオンとの対決の時は、そこにも気を付けないといけないわけか。
ダンジョンバトルになるとルールにもよるが、1カ月は地上のことは何もできなくなる。ホムンクルスによるオートモードでやり過ごすしかないので、今のうちにできることは色々しておかないといけない。
ユニオンの兵の集まり具合が悪いので、こちらから手を出さない限り、大規模な戦争は起こらない。そもそもユニオン東部と中央部の分裂が起きつつあるので、こちらにかまっている余裕はないだろう。
ニゴ帝国も同じで、ワールハイトに戦争を仕掛ける余裕はない。しかも、どうやらニゴ帝国に面している海、ここからだと北西方向に新たにダンジョンマスターが出たらしい。海タイプらしく、かなりの苦戦を強いられている。
僕の領域の1km以内にまで領域を伸ばしており、詳細は分からないが、いるのは確定である。
エルマンド帝国の内政のことは、ダンカンに任せておけば大体、大丈夫。まあ、本人はやること多すぎて死にそうになっているが。早く内政ができる人を育成しなくては。
やはり、人の育成と言えば、学校だ。ということで、孤児院を拡張する形で建設を進めている。傭兵は引退したが、教えることはできる。そういう人を中心に知識と経験を伝えてもらえればと思っている。
今は問題ないが、畑の問題がある。今は開拓すればするだけ、自分の物になるが、一定開拓が進めば、そうはいかなくなる。継承できる人は良いがそうではない人は、仕事がなくなる。
セーフティネットとしての役割も期待して冒険者組合を勇者であるマルコ中心に作っているところだ。
冒険者組合で登録は誰でも可能。登録すれば、身分証にもなる。実績、つまりランクにより優遇あり。モンスターの退治法やダンジョン攻略に欠かせない、内部構造や罠などの情報を共有することで、ダンジョン国家としてのエルマンド帝国を支えてもらうことになる。
ダンジョン探索を生業にする冒険者は現状いくらいても構わない。
強いなら、それだけで十分だし、そこそこであれば、そこそこで稼げるように場所がある。弱いなら弱いなりにやれること、仕事がある。
一時のお金稼ぎの手段としてもらっても良い。長く続けて入れば、それだけで経験値が高いので、教師などに転職できる。ある程度鍛えてもらえれば、他の村などに行って警備などもできる。
素材などの交渉や販売、武器などへの加工などは組合がすれば良い。職人たちとの契約などのことも組合に任せ、冒険者はひたすら素材を集めてくる。それだけで生活できるように。
知識や経験の問題でそういった交渉事に弱い人は大勢いる。できる人に任せるのが一番手っ取り早い。
ここは元々エルラノーア商会の本部がやっていたことなので、それを流用した。
一方、城の方は魔法建築で冬の間に一気に建てた。
現在は内装を整えている段階。
城なので、他国の最重要人物などの来賓用の場所なども作らなければいけないし、王族の住居としての機能も必要とされる。防犯は当然だ。
この城周辺は魔法無効化空間となっており、一切の魔法、魔道具の使用ができない。そのため設備には一切の魔法は使えない。
上下水道や明かり、冷暖房などを完備しており、実は石炭発熱を利用している。
明かりは金属の発光現象、つまり電球を作った。これは原理を知っていたので簡単に作れた。元々学生で電池の作り方も知っていたので、電気も扱えた。
魔力無効化空間だからこそできたことではある。魔力があると、魔力が変化して、毒をまき散らす効果が起きる。
つまりここでしかできないこと、使えない技術ということになり、希少価値が出る。
そういった準備を皆が急ピッチで行ってくれている。
そうこうしているうちに、連絡が来た。ついに海王ニニムがダンジョンコアレベル8に到達。1か月後にダンジョンバトルが開始されると。
いつもありがとうございます。
次回は一週間後を予定しています。
GW中なので、途中もう一話更新するかも。