249.女神の悪意の正体
すいません。色々難産になり時間がかかってしまいました。今回短めです。
女神の悪意はダンジョンコアがレベル8になり、上級鑑定を覚えると見えるようになる。そう認識していた。だが、それは、半分は正しく、半分は間違っている。
女神の悪意は何かに付随して見えるものではないのだから。
この世界は悪意に満ち溢れているのだ。そこにあるモノを鑑定すれば見えるようになるのだ。
この世界は普段は目に見えない魔力がある。濃いところもあれば薄いところもあるが、魔力は通常そこにある。この魔力を感知し、上級鑑定すると説明文が出てくる。これはただの鑑定では出てこなかったところだ。
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魔力
この世界を創造した神により設定された力
行使により、様々な現象を引き起こす元になる。
化学反応と混ざると、自身は蓄積型の成長促進作用を持ち、一定値以上の蓄積で遺伝子毒となり、さらに一定以上の蓄積で癌を発病する。この効果はMENの値と毒耐性により減少する。
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この説明文を読んで愕然とした。
化学反応、つまり酸化還元などの反応と混ざると発がん性の毒に変化するということは、自然界では常に何らかの形で化学反応が起きているのだ、常にさらされていることになる。
人の身体の中でも、もちろん常に化学反応は起きている。魔力は体内で消費され、減少すると外界にある魔力を補充し一定値を保とうとする。
さらに言えば、料理は化学反応だ。焼く煮るなど、すべて化学反応と言って良い。食材に含まれる魔力が調理によって変化する。それを食べるわけだ。
つまり、この世界では元の世界の何倍もの速度で細胞が成長し、そしてがん化する。
この世界の平均寿命が30歳代と非常に短いのはこれが主原因だろう。
エルマンドさんを例にすると、すべて説明がつく。
20代ですでに老人のような風貌になるほど、成長が早く、そして、30歳で全身に癌を発症して死んだのだ。
エルドたちも、他の孤児院の子供たちも、10歳前後にして、大人と変わらないくらいにまで成長している。栄養の問題で成長しきれなかったりというのはあるが、それもこの魔力の効果で説明がつく。
この世界で長生きできるのは、MENの値が高く、毒耐性を持つ者。
幸い、エルドたちはこの条件を満たしている。しかし、それでも、かなりの影響を受けているように見える。他の人たちは言うまでもないだろう。
僕自身は全く影響はない。元々不老であり、状態異常無効も持っている。ホムンクルスも状態異常無効があるので影響はない。それは他のダンジョンマスターも同じだ。
女神がこの世界を創るときに魔力に設定したこの性質。女神はなぜ、こんなものをわざわざ設定したのだ。この世界は魂の安息の地ではなかったのか!?
そうか。リュートはこれを知っているから女神を“敵”とみなし、女神を崇める女神教の国を攻めたのだな。少しでも女神のこの世界への影響力を落とすために。
今まで、疑問にも思わなかったこと。疑問に思っても答えがわからなかったこと。たくさんあるが、今回のことだけで一気に答えが出たことも多い。
憤り、それもあるが、今はただ虚しい。
今まで、エルドたちと頑張って国を作り、文明を引き上げようとしたが、今回の判明した問題を解決できねば、寿命は延びない。
今のままでは文明、技術の継承はできても、進化はできない。進化する前に人は死ぬ。
どうすればいい?
少し冷静になって、考えてみよう。こういう時、参考にしているのは、リュート神聖国だ。
リュートはどうした?どう行動した?
思い出すのは、リュート神聖国の国王一族は長寿だということだ。
そのことを思い出した時、城は魔力無効化空間になっていたことを思い出した。
そうか。リュートは魔力を、その影響を極力なくしたんだ。当然、城には王族が住んでいる。魔力の影響がなければ、人は長生きするということだ。
まずは、リュートたちが住む予定の城、そしてその城が建つ丘、そこはすべて魔力の無効化空間にしよう。
これで、外部からの遠距離魔法攻撃に対する防御にもなり、暗殺なども防ぎやすくなるだろう。
次に城下町だ。ここはすべてを魔力無効化空間にすると問題が出そうだ。
まず、ある程度、お金があり、裕福になってくると、日常生活に魔道具を使うようになる。コンロや水道の代わりになるのが魔道具だ。
首都エルドイオでは最近建て終わった家に魔道具が設置されている。魔力無効化空間では魔道具は作動しない。
つまり、日常生活に大きな影響が出る。それにせっかく設置したのに、またやり直しはつらい。
まあ、軍事などに関する重要施設には魔力無効化空間を設置するが、他は設置しない方針で。
あとは、何か手立てはあるかな?
‥食事か?あとはなるべく早く毒耐性を身に着けることか?
なるべく対策はしていこう。
そうして、あちこちに対策をしてと、色々動き回っていたあと、ダンジョンの自室で首都エルドイオの様子をみていた時だった。
エルドイオはすこしずつではあるが、発展、整備してきている。これでもこの世界では発展している都市になった。
そんなエルドイオの一角。食事やお酒などを売っているところ。今でいう喫茶店、しかも野外で優雅にお茶を飲んでいる10歳くらいの子供がいた。
藍色の髪に黒に近い、黒とは違う色で綺麗に仕立てられた一目で貴族、もしくはお金持ちの子だとわかる服を着た子供。このような子は今までにいなかったはず。
そして、なぜか目を離せない。
あれ?
今、この子こっちを見たよ?絶対わからないはずなのだが?
!!?
…僕は即座に鑑定を発動する。
そこで見えたのが、名前と種族のみ。
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名前 ロキ
種族 魔神
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‥‥何やってるんですか?魔神様。
女神の悪意の詳しい説明は魔神様に任せます。次回で
次話更新は1週間後の予定です。