表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編~エルマンド帝国~
244/287

244.エルマンドさんの死

タイトル通りです。大分引っ張ってしまいましたが。


 会議は続く、ユニオンとの話は、現状維持のまま、時間を稼ぐことに決まった。時間を稼ぐにしても準備はいる。仕込みの状況の確認をする。



「ダンカン、都市および城の建設の状況は?」

「は!現在、城は土台を作成終了し、資材を集めておりましたが、それも間もなく終了します。その後はいつでも建設に入れます。また、周囲は南部、東部の方向に人の集落が広がりつつあり、街道も順調に整備されています。開拓された田畑からの収穫物の2割が今後、継続的に入ってくることになります」

「よし!マルコの状況は?」

「はい!人の集落付近の魔物はあらかた掃討が完了しています。現在は警備を交代でしつつ、さらに範囲を広げて魔物の掃討を続ける予定です」



 ダンカンは前世の知識を基に都市計画を進めてもらっている。それと、人口管理や収穫などをするための帳簿などの記録。そういうことを手分けして行ってもらっている。帳簿に関しては紙なので、かなり手間がかかってしまうのは申し訳ないところだ。


 マルコは勇者の能力を活かして、魔物退治をしてもらっている。警備隊を率いての周辺の警備も任務とし、ぐんぐん能力が上がってきている。このままいけば、魔物退治で右に出る者はいなくなるのではないだろうかと思わせてくれる。実践ではライドやエルドたちには遠く及ばないのだが。


 というより、勇者より強いライドとエルドって一体…ってことになるんだが。



「城に関しては、壁建設後すぐにとりかかろう。遅くとも次の春までには完成させよう。内装も含めてね。魔法建築でいくから、魔法を使える者を集めてほしい。他は資材運びやら、仕事は色々ある」

「了解しました。準備します」



 僕の指示を聞いて、ダンカンはすぐに動いてくれる。マルコは現状維持のため、特に指示はない。その他報告などを聞き、情報収集を継続して行ってもらう。ここでユニオンの思惑通りにはさせない。



「エルドたちはこれから、約1週間でワールハイトと往復してもらう。食料を持ってね」

「了解。イオも来るんだよね?」

「ああ。もちろん。向こうで商会にも確認と指示がいるからね」



 エルドたちの予定はこれで決まり。ワールハイトへ持っていく食料などはすでに準備完了している。この食料を渡すだけだ。

 お金?それは今後数年かけて支払ってもらう。今はツケておく。

 

 これでワールハイトの食料問題は一応の解決になるはずだ。あとは徐々に落ち着いていくはず。これ以上戦争などが起きなければ、だが。


 ニゴ帝国はユニオンとの開戦準備中。その前にユニオンとの国境沿いに巣くうオークやゴブリンたちの退治があるので、こちらもしばらくは様子見だ。まあ、もうワールハイトに仕掛ける余裕はないだろうけど。



 翌日、僕らはワールハイトに出発する。



 魔の森を2日で突破。途中、トトークと話し、協力を得ることに成功。今後は加工品が少しずつ入るようになる。


 トトークは植物由来の物であれば、知っている物であればなんでも作成可能で、よくよく考えると、植物から石油が創れ、そこからプラスチックなどの石油製品までできると思ったので試してもらったところ、なんとできてしまった。

 まあ、プラスチックに関しては時代を先走りすぎて、価値が理解されなかったのだが。


 それと、石油製品は工程を思いっきり省きまくったため、作成に時間がかかり、数量も作れないことがわかった。個人で使う分には十分なため、チートであることには変わりはない。今後はこっそり作ってもらう事にしよう。



 ワールハイトは移動制限を取っ払った結果、人口が増え、壁の中では住む場所が足りなくなったため、拡張工事を始めていた。もちろん、畑なども拡張し、食料対策、自給率を上げている。財政的には火の車なのだが、エルラノーア商会から借金をして凌いでいる。将来的な負担は大きくなるが、返すあてがあるので、僕らはそれまで待てばよい。


 魔の森北に大規模な棲み処があるためか、オークやゴブリンの目撃情報が増えている。


 それらはウチの商会で対応できるところは対応して、食料となるので、良い儲けになる。傘下に入る傭兵団もますます増えている。笑いが止まりませんな。



 ワールハイトで色々処理を終え、再び逃亡者の村へ向けて強行軍だ。


 途中、トトークと話し合い、僕がどういう形で手を貸すか、という話になったのだが、村に着いてからということにさせてもらった。どうするかは僕の中では既に決めている。



 南村にある孤児院に翌日到着。


 孤児院は入所する子供が増え、泊まる場所はないが、休むくらいはできる。


 この孤児院にいる子供たちは、一芸に秀でている子が多く、魔法を使えたり、ダンカンの手伝いをしたりしている子が多い。正直下手な大人よりよほど役に立つ。

 間違いなく今後の支えになってくれるであろう子どもたちだ。


 そんな孤児院で子供たちと遊びつつ休んでいた時、来客が来た。



「良かった。ここにいたか。くわしい話はあとだ。エルマンドさんの容体が悪化した。至急来てくれ」



 エルマンドさんの家にいた人の内の1人が孤児院にエルドを呼びに来た。至急の事らしく、僕もそれについていく。


 エルドは全力で駆け抜ける。速い!僕はついていけるが、連絡に来た人ははるか後ろだ。


 結構な距離があったはずだが、ものの1時間程度で着いてしまった。



 エルドの父であるエルマンドさんはずっと体調が悪かった。特にここ1.2年は。見た目も30歳前後のはずなのにすでに老人のようになってしまっている。まあ、これはこの世界では大抵の者がそうなることではあるのだが。

 平均寿命も間違いなく30歳代であるので、それを考えるとエルマンドさんも普通の人と同じくらい生きたということになるのだろう。



 エルマンドさんの家で、エルマンドさんは静かに寝ていた。とても穏やかに。



「今は鎮痛剤が効いたのだろう。苦しそうだった様子が嘘のように寝ているよ」

「ああ、しばらく見ていなかったが、相当苦しんでいたというのは聞いていたよ。イオが薬を持ってきてくれて助かった。ありがとう」



 そう、エルドは僕に感謝してくれた。その後も、僕とエルドは静かにエルマンドさんを見ていた。


 この状態まで来れば流石にエルマンドさんが何の病気であったのかはわかる。…癌だ。それも現在は全身に転移しており、末期の状態。トトークが創った鎮痛剤というか麻薬が効いて、エルマンドさんは良く眠っている。

 麻薬はこの世界ではまだ広がっていない。今後も広げるつもりはないので、よほどのことがないと使うことはないだろう。



 エルドは父の姿を見つつ、僕に聞いてくる



「このままなら、父はもう長くないんだろ?」

「ああ、医者じゃないから正確なことはわからないが、いつ亡くなってもおかしくない。おそらく年内どころか、今月すら生きれるかどうかというところだろう」

「そうか。治療はすべてだめなんだよな?魔法も」

「ああ、治療法はない。魔法もヒール系はおそらく、逆効果だし、状態異常回復のキュア系もだめだった。どうも癌があることが正常と認識されるようでな」



 僕はエルドにそう答えた。


 この手のことは、うちのミヒャエルが研究していた。ヒール系は体内の活性化をして傷を治すという作用が主なため、癌細胞の活性化をさせるという研究結果が出ていた。もしかすると、僕すら知らない神の完全回復薬のような物があるのかもしれないが、作成はもちろん、入手が不可能だ。



 その2日後、エルマンドさんは安らかに息を引き取った。



 エルマンドさんは前の世界の父に似ていた、姿も声も。なので、僕はこの世界で父を亡くしたような感覚だった。エルドの涙も随分久しぶりに見たな。



 葬式は関係者だけでしめやかに行われ、最後は骨も残らない温度で火葬をした。この世界では火葬は最高級の送り方とされている。土葬ではゾンビなど魔物として復活してしまう可能性があるためだ。また、骨も残らないほどの温度を出せる魔法使いは、そう多くないこともある。


 エルマンドさんの家の裏庭にエルマンドさんの墓石を置いた。中には何も入ってはいないのだが。



 その夜、僕はダンジョンに戻ってきた。



「おかえりなさいませ、マスター。ワインですか?めずらしい」

「今日くらいは飲みたい気分になったんだよ。許してよ」


 

 メイドのシャールさんがワインを持ってきてくれた。僕は書斎にある机で一人、ワインの入ったグラスを掲げる。



「エルマンドさんに!」


エルドたちは修行の結果大幅にパワーアップしています。しばらく出せそうにないのですが。


次回更新は1週間後です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ