242.これから
ここから新章になります。章題はまだ伏せます。ネタバレになってしまうので。
僕はリュート神聖国からゴバ君のいる村へ戻ってきた。
リュート神聖国とサミーのダンジョン、そしてゴバ君の村とつなぐ道が完成し、サミーのダンジョンの1階に宿場町を作り終えたところだった。
当然、時間がかかるため、すでにもうすぐ冬という時期になってしまっていた。
エルドたちはこの間にクナの試練というか修行を終え、ゴバ君の試練に向き合っており、僕がすべてを終えたタイミングでゴバ君の試練も終えた。そのため久しぶりの再会である。
エルドたちはゴバ君の試練のため、ゴバ君の村、ブラックスミスで小さい家を自分たちで建てて、そこに滞在していた。
「皆、オッスオッス!!」
「あ、イオだ!」
「「オッス!」」
そこにいたのはエルドとライド、ルルだけだった。
「あれ?ノフスとアイシャは?」
「ああ、あの2人は今、買い出しだな。そろそろ村に戻ろうかと思っていたところだからな。その準備をしてもらっている」
エルドに聞いたら、試練も終わり、村、エルドたちが育った孤児院のある村へ戻るところであった。ライドとルルはこういう時は戦力外である。知ってた。
「しかし、パッと見ただけでも、強くなったな~お前ら。クナの試練はどうだった?」
「「キツイ(かった)」」
椅子に座りながら聞いてみたら、やはりきつかったようだ。
「聞いてよ。イオ。きつかったんだよ。本当に。初見殺しもいっぱいされたし。見たことない魔物ばっかりだし。」
ルルが話してくれたが、そりゃそうだ。ダンジョン内での罠やモンスターで知らなかったら、死亡というのを思いつく限りやってもらうのがクナの試練なのだから。
「ゴバ君の試練はどうだった?」
「「‥‥」」
「‥違った意味できつかった」
聞いてみたが、ルルとライドは無言でしかめっ面。
「俺らにああいうのは無理だって」
「うんうん」
ライドの言葉にうなずくルル。それも知ってた。
「話は少し聞いていたけど、色々作ったんだろ?」
「ああ、家からなんから全部な。さすがに、高炉とかは貸してもらえたけど。俺はこういう細かいのは合わないと改めて思った」
ライドはそういうが、ゴバ君からの試練はゴバ君のダンジョンから素材を獲ってきて、自分たちで武器などに加工して、ダンジョンクリアするというもの。
ダンジョンの難易度は通常の武具であれば、今のエルドたちなら余裕でクリアできるくらいの難易度。
住む家などもすべて自作しなくてはいけないため、メンバー全員で作成をしなければいけない。
「聞いたところだと、素材を獲ってきているんだろ?クリアしたってことは、ミスリルゴーレムも倒したんだな?」
「おう!大変だったぞ」
「普段ならなんともないんだけどね。杖が‥」
ライドとルルはさらっと何でもないようにいうが、ゴバ君のダンジョンは採掘場にはすべてゴーレムがおり、それを退治して運んでこなければならない。
ダンジョンのボスであるミスリルゴーレムは高い物理防御力と一定の威力以下の魔法攻撃を無効化する能力を持っている。倒すにはその防御を上回る攻撃をするしかない。
ライドとルルの攻撃力なら、武器無しでも貫通は可能だろうが、当然、大きな威力は出ない。アタッカーがそれではパーティーとしては厳しい。
今回のゴバ君の試練は武具の手入れを学ぶだけでなく、どのようにして作られているのか?や作り手の大変さなどを学ぶことを目的にしている。
クリア後は取ってきたミスリルを使って、ゴバ君お手製の武器を贈られることになっている。
色々話をしているうちにノフスとアイシャが帰ってきたので、本題のこれからの予定を話し合う。
「リュート神聖国に行きたい」
「「行きたい!」」
ノフスにルルとアイシャが乗っかる。
「それは来年だな。今年はもう時間がない」
「そうだね。まずはワールハイトに戻らないといけないからね。その時に間の道にいるトトークさんに話をしないといけないし」
「冬は逃亡者の村で過ごして、翌年の準備なんかもしてもらわないといけない」
僕とエルドが計画を話す。意見が出ないのはいつものことなので、これはもう計画というより通達だな。
「来年、春からはここ、ブラックスミスから北上して5本川を渡ってリュート神聖国に行き、帰りはダンジョン通って、という僕と同じルートだな」
僕から皆への通達。
「国造りはどうするの?」
おっと珍しい。ルルからの質問。
「リュート神聖国の合意は取り付けたから、来年以降なら準備が整い次第ってところだね。そのあとはエルドに任せるよ」
「わかった。未定ってことね」
ええ。そうですよ、ルルさん。なんですかね?その「ふーん」みたいな目は。
「まあ、人事案は考えてあるから、いつでも良いよ?」
エルドはそういうが、そういうことではないと思うんだよな。そして、その言葉に目をキラキラさせないでよ。ルルさん。それもそういう意味ではないから。…こうやって話がどんどんずれていくんだよね。
翌日から皆で逃亡者の村へ移動。狼車なんだが、車部分はエルドたちの手作り。…不安なのは僕だけか?いや、確かにそんなに難しい作りじゃないんだけど。
さてさて、いつもどおりに道を進むこと数日。野宿は慣れたものなので何とも思わないのだが、道が整備されている。ブラックスミスまでの道の半ばまでであるが、順調に整備されてきている。
「仕事、大分進んでいるんだな」
「まあ、約半年だからね。それでもこれは予想外」
「今まで開拓とか全くできなかったんだけどな」
「それだけ人が移住してきているという証拠だね」
エルド、ノフスが雑談をしている。
道中、開拓村というか集落もでき始めていて、畑が広大に作られている。農業技術も徐々に伝えられ、実践されているので数年もすれば大陸有数の農業地域になるはずだと思っている。
ここはすべてユニオンから逃げて来た人の集まり。そういう人が集まり、家族を形成している。守るための防衛力として僕らがいる。だが、これだけ急激に増えると目が行き届かなくなる。
そうなるとどうなるかというと、村に着いたときに、入り口付近で武装した兵士数人を連れた、上質な服で着飾った太ったオッサンが
「ここは我が領土としてユニオンへ加盟させてやる。喜ぶが良い。民たちよ!」
などとアホなことを言っているのが聞こえて来た。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は一週間後になります。本業が色々詰まってきており、ギリギリになってしまいすいません。