241.魔王について、大陸横断トンネル完成
後半です。それと、サミーのダンジョンを通す話を入れました。
「さて、他に何か聞きたいことはある?」
リュートがこちらに聞いてくれた。
「魔王についてなんだけど、どんなやつ?」
僕はリュートに聞いてみた。
「魔王…ジャギアスっていうんだけど、どんなやつ?と言われてもな」
「ん?つながりはあるんでしょ?」
「直接はないよ?ああ!北の港町のことなら、違うよ。あれこっちの管轄じゃないし」
「んん?」
「そもそも、ジャギアスは魔大陸に来て、挑みに来る人間、特に勇者とか英雄とかがお気に入りでね。まあ、呼び込んで死ぬまでDPを搾り取るんだけど。だからイオは絶対行っちゃダメだよ?」
「いや、行かないし」
「それなら良いけど、こっちの港町と魔大陸の港町、その間の海峡は海王の部下が領域にしていて、私たちは関与しないと取り決めている。そういうわけで、完全な範囲外の話さ。まあ、そのさらに北は魔王の右腕のダンジョンマスターが領域にしているんだけどな。そことは直接領域が接しているよ」
そうなんだ。間に別のダンジョンマスターが入ることで間接的にリュート、海王、魔王がつながっているわけだ。
「魔王の右腕は、気にならないけど、リュートの配下のダンジョンマスターは?見たことないけど」
「ん?いないよ?」
「‥支配型だよな?リュート」
「そうだよ。正確には“今は”いないだけで、前はいたんだよ」
「‥やられた感じ?」
「そうじゃなくて、めんどくさいから解放したんだよ。南にいるエルフの森の女王エルフとさらに南の荒野にいる獣王が元配下」
「そうなのか!面倒って‥」
「いや。本当に面倒なんだよ。イオ。サミーから色々聞いていただろ?」
「なんだっけ?…ああ、アホとしか覚えてないや。なんかアホの女王エルフがいるとかなんとか」
「それで十分。アホ過ぎて面倒見切れないから解放したんだよ」
「獣王も?」
「うん!」
‥そうですか。この瞬間、女王エルフと獣王には関わり合いにならないことに決めた。
「その時の記憶があるから、二度とこっちに仕掛けてくることはないけど、人間には仕掛けてくるのでね。むかついたからやり返したら、それもなくなったってだけの関係だね。今は。正直、生きてても死んでいても、どっちでもよい連中だよ」
リュートがこれだけ言うって、相当なんだろうな。
「そいつらはこっちも無視させてもらうよ」
「ああ、その方が良い」
「じゃあ、帰りはサミーのダンジョン経由で帰るよ」
「お!それなら、少し待ってくれ、今、工作兵部隊の用意をしているから、2日ほど時間くれ」
「工作兵?…道の整備?」
「ああ、それもあるが、サミーのダンジョン前に宿場町を作る。それと、あそこは入り口から上り坂になっているから、交渉が上手くいったらトロッコをつけるように手配する」
「トロッコ?よくトンネルとか鉱山とかで物を運ぶ用の?」
「おう。それ!最近簡単なのはできるようになったから実地試験がてらやってみようかと。あった方が絶対に良いしね」
その後、リュート神聖国から南西のサミーのダンジョンまで、工作兵とその護衛で騎士団、開拓希望の農家の3男や4男たち数十人と移動を開始。作業拠点の開拓村の設置を終わらせ、そこまでの道の整備、そこからサミーのダンジョンまでの道の整備とどんどん進めていく。
サミーからは「1階部分だけなら好きにして良いぜ。こっちに降りてきたら全力で迎撃させてもらうけどな?」ということであっさり交渉成立。
サミーのダンジョン1階の中央の大広間を休憩用の宿場町とすることでリュート神聖国側と合意。
後日エルラノーア商会が資材を用意して宿場町を作った。トロッコはリュート神聖国から買い、リュート神聖国と反対側の入り口にもつけさせてもらった。
これで、比較的安全な山脈横断トンネルができたことになる。あとはここを整備、発展させつつ宣伝をしていけば、少しずつだが、使われるようになっていくだろう。
トロッコのおかげで物を持っての移動が非常に楽になっているのがありがたい。今はレールが1本でところどころすれ違うことができるようになっているだけだが、行き帰りで2本はつけたいところだ。
これでリュート神聖国との直接の貿易路ができた。エルドたち次第ではあるが、一応、建国の準備が整った。
さて、エルドたちの様子を見にいきますか。今はクナのダンジョンでの修行が終わり、ゴバ君のところで試練を受けているということだった。
前話が中途半端になり申し訳ありませんでした。
これで、リュート神聖国編は終了です。次話から本格的な建国に入る予定です。