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魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編~諸国漫遊~
237/287

237.セイツに到着

いつもありがとうございます。


 リュ-ト神聖国へ無事入国したあと、僕は首都セイツを目指す。といっても移動は主要街道に定期的に国営の乗り合い馬車が出ていて、そちらに乗っても良いし、今まで来たように商人の馬車に護衛をしながら乗っても良い。

 今回はそのまま商人の馬車に乗せてもらうことにした。一緒に入国した商人も首都セイツが目的地だったことと、護衛と言ってもリュート神聖国は全体的に非常に治安が良い国で主要街道を行く分には野生の魔物はおろか、野盗さえほぼ出ないから、実質運賃がタダだからだ。それに、ここまで一緒に来たのだ。多少は気心も知れているのが気楽で良い。



 リュート神聖国内の主要街道は今まで来た道より一回り広く、かつすべて石畳でしっかり舗装されている。定期的に騎士団による巡回もされており、非常に進みやすく、安全な道となっている。

 これだけの道にするのにかかる時間と労力を考えると、この時点で強大な国力という物を思い知らされる。


 道中にある街はすべて宿場町として、貿易都市として発展しており、すべてユニオンの主要都市と同等以上に発展している。小さいところでも1つ1つの都市がワールハイトと同等程度の大きさの街となっているのだから、発展具合が違いすぎる。




 ここでリュート神聖国についておさらいをしておこう。



 政治体制はセイツ家を王家とする絶対君主制。王家の下に各貴族家がおり、各地方や領地を治めている。首都セイツに王城があり、そこで政務のほとんどが行われている。王城に努める役人の内、幹部クラスの上級役人はすべて貴族となっており爵位を持っている。


 各地方には国からの補助金が出て、学校が作られている。その学校には一定の年齢の子供が通っており、その中の成績優秀者は首都セイツにある上級学校、いわゆる難関校とか一流大学のような学校に行くことができる。その学校での成績優秀者が上級役人となるため、中には平民出身の上級役人もいる。もちろん、非常に狭き門ではあるが。


 貴族は基本的には世襲制である。しかし、上級役人となれば平民でも貴族になれるとあって競争は熾烈だ。そしてそのことが地方の活性化に一役買っている。



 この制度は地方や多くの人の中から優秀者を探し出して登用することと、長期的には国民に知識を与え、教育することで民主主義への布石とする目的があるのだろうと推察している。


 その教育の成果か、この国の発展具合は他とは次元が違うと言っても過言ではない。経済の発展具合も素晴らしく、この世界で唯一使われているお金はすべてこの国で作られている。


 貨幣を作る技術が他の国にないというのがその原因で、他の国の場合、貨幣を作って流通させたところですぐに偽造され、本物と見分けがつかなくなる。仮に見分けられるほどのものを作ったところでそれを取り締まることができなければ意味がない。


 そういう意味でリュート神聖国は軍事力も世界最大の国であるので取り締まりも可能だというわけだ。国家単位での偽造でも近くの国であれば戦争案件となり、影響力は絶大だ。



 国土も広く、このセントリクス大陸中央部にドンと広大な国土を誇っている。農業も当然盛んで、北側の一部は海にも面しているため漁業もある。


 管理が比較的きっちりしており、税金も重くはない上、減免制度もあるため、人にとっては非常に住みやすい国となっている。住みやすく、移動、移住もしやすいとなれば人は集まる。

 

 なんでも現在の国の人口は、1000万人は下らないとされており、5000万人以上ともいわれている。


 これだけの人口がいれば、ダンジョンマスターとしてのDP収入も大きく、うらやましい限りである。というか、現代知識を生かして内政すると、こう発展するという見本のような国で、僕の理想である。




 リュート神聖国中央部の平野地帯にドンと存在感のある首都セイツ。


 ここから東西南北に主要街道が伸びており、僕らはセイツから見て西の街道を通ってきたことになる。


 この首都セイツ、話には聞いていたが実際はまた凄かった。この首都だけで人口500万人がいるとされ、もちろんリュート神聖国で最も発展している大都市なのだが、街並みが完全に中世時代といった風情で背の高い建物がチラホラ見える。


 近くに大きな川があるらしく、そこから街の飲料水や農業用水などを引っ張ってくる水路があり、その水路が街の周囲を巡っているのが見える。


 街を囲う壁は高く、入り口は警備の騎士の姿が視える。その様は城の周りに堀を巡らした城塞を思わせる。


 当然、街に入るのにチェックを受けるが、入ろうとする人が多いにも関わらず、人の流れは比較的スムーズであった。チェックする側の人間が多く、手早く、しかしきっちりこなしていっていることが要因であろう。当然関所を通らなかった不法入国者はここで別室にて別の担当が取り調べをし、拒否するようなら追放となる。


 実際に何人かそういう者がいたようで、きっちり別室に連れていかれていた。…それでなくとも、ここはダンジョンマスターの領域テリトリー内。そのような人物はどちらにしろ、すぐ捕まる。見つからないわけがないのだ。


 僕の場合はお昼過ぎに到着し、何もなくスムーズに行けるかと思っていたら、担当の人から



「エルラノーア商会のイオ様ですね?大変申し訳ないのですが、後ほど宿の場所と、都合の良いお時間をお聞かせ願えませんでしょうか?お手数ですが、近くの役所へご連絡をいただきたいのです」



 と言ってきた。


 僕はもちろん、エルラノーア商会のことは一言も話をしていない。そもそもリュート神聖国そのものとは取引がない。あっても末端だから、国から直接話があるわけがない。つまりエルラノーア商会はここでは無名の商会のはずなのだが。何!?この丁重な対応。


 まあ、これはリュートが手を打ったと、そういうことだ。元々こっちも会えればダメ元と思っていたから非常にありがたいのだが。それしか考えられないし。だが、こんなことで権力使うなよ。明らかに大ごとに対する対応してるよ?この職員たち。




 セイツの中に入るとまず目にするのが、中央部にデンと構える城である。この城がセイツ城でセイツ家が住み、リュート神聖国の中枢である。


 入り口からまっすぐに石で舗装された大きな道の先に城があり、ここからでも城の周りに柵が張り巡らされ、見張り塔に兵士がいることがわかるくらい厳重に警備されている。



 僕は一緒にきた商人と別れ、宿を探す。


 貿易の中心地でもあり、宿は非常に多い。どこにしようか迷うほどだ。


 値段や内装、サービスもピンキリで、基本的に一番大きな道に近ければ近いほど高級宿になり、城に近くなるほど最上級になる。当然城の周囲は高級住宅街になる。いわゆる貴族や豪商が住む貴族街、もしくは別荘だ。


 この世界背の高い建物ほど高級という価値観らしく、5階建てとか7階建てとかの宿もあるが、すべて高級宿だ。…値段うんぬんより、エレベーターもないのに、そんなところに泊まるのは勘弁してほしい。2階建てくらいの家族で経営しているような宿が理想だ。



 道を外れてブラブラしていくうちに、理想的な、木造だが作りがしっかりしていそうな宿を見つける。早速ここに泊まろうと入っていく。


 入るとすぐ受付のおばさんらしき人がいた。



「こんにちは」

「いらっしゃい。泊まりかい?1人1泊銀貨2枚。食事と風呂は別料金だ」

「じゃあ、とりあえず、僕だけですので1泊でお願いします。お風呂があるんですね?」

「ああ、よそじゃともかく、ここセイツじゃ風呂無しの宿は最下級の宿って扱いになるから、宿泊料金もかなり安くしないといけなくなるんだ。それじゃあ宿はやっていけないさ。リュート神聖国の他の都市もそれに倣って宿の制度を決めたもんだから、最近はどこもおなじようなもんらしいけどね。風呂の場所はここから右の食堂兼酒場を奥に行ったところにある。タオルの貸し出しなんかもそこで行ってくれればするから、一度行ってみるといい」



 リュート神聖国に入ってから宿には大体風呂があった。理由はそういうことだったらしい。もちろん、ここに来る前の街の宿にも風呂があり、僕はしっかり入ってからここに来た。なので、それほど汗臭いということはないはずだ。


 お礼を言って部屋に行こうとする前に、聞かないといけないことがある。



「すみません。役場に行かないといけないのですが、どちらにあるのでしょうか?やはり城まで行かないといけないのですか?」

「ん?あはは。そんなことはないよ。役場なら出張所があちこちにあってね。ここから一番近い役所なら、この宿を出て左に道沿いに行けば建物が見えてくるよ。だから城に直接は絶対行っちゃだめだ。怖い人におこられるよ!」



 おばさんにそんなことを言われた。子供扱いされたようだが、そう言えば今の僕は子供だったと思い直して、お礼を言って部屋がある2階へ行く。


 部屋は綺麗にされており、ベッドもしっかりある。入り口正面に木でできた窓がありカーテンまである。窓の外は住宅と壁が見えるのでお世辞にも景色が良いわけではないが、泊まる分には問題ない。…というか、この宿、ワールハイトやユニオンあたりなら高級宿に分類される。経済格差がひどい。


 

 教えられた通り役場に向かう道中、公営の浴場を見つけた。

 

 そう言えば、先ほどの宿のトイレは共用だが水洗だった。道にも糞尿が落ちているということもなく、非常に綺麗だった。リュートはどうやらセイツに公衆衛生の概念を植え付けたようだ。…転生者らしいな。



 役場にて身分証というか入国証を見せ、止まっている宿と時間はいつでも空いていることを伝えたところ、



「後ほど、使者がお迎えにあがりますので宿でお待ちください」



 と言われた。



 もちろん、事前に言ったわけではないのに、ここまで話が伝わっているとは。やるなリュート。




リュート神聖国は政治、経済、軍事などすべてで世界最大最強国を自認しており、周囲もそのように認めています。当然その王家の権力も大きく、王家からの指示に皆従順です。


そんなわけで、いわば末端に直接、そんな簡単に王命なんぞ出すなよリュート。かわいそうだろうが!

となります。


次回更新は1週間後です。

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