表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編~諸国漫遊~
232/287

232.ダンジョン内にて

今回はダンジョンマスターのダンジョン内におけるモンスターに関してのルールの確認と今まで明らかにしていなかったルールなどの説明回です。


 ミヒャエルの研究所を出た僕は、次の予定地近くまで『転移』する。目的の人物は仕事中であり、僕の用事はその仕事を放り出してまでするようなことではないので、切りのいいところになるまで待つことにした。


 僕は一人考える。



「『限界突破』か。誰に取らせようかな?能力が限界近くまで上がっていないと取る意味はないしなぁ。コスト50億は、今の僕のダンジョンの収入じゃ数人が限界なんだよな。僕が取るのは確定としても、費用を考えると限界まで能力を上げられるほどDPがあるのか?って問題もあるし。ダンジョンマスターはただでさえコスト1000倍かかるのだから」



 ダンジョンマスターの能力を上げる場合、HP、MPなら1上げるのに10万、STRやINTなどなら100万ものDPがかかる。例えば、HPを1000上げるのに必要なDPは1億。

 通常のモンスターなら各ステータス1000くらいのモンスターを喚ぶのに1000万ほどDPがあれば可能ではあるが、他にスキルや種族によって必要DPが変わる。なので、現実的には1億ほど必要になるが、別にそこにDPをかける必要はないと考えている。


 一体生まれたら、保護しつつ、繫殖させた方がDPがかからず大量に生まれてくるからだ。




 僕が人間の世界、エルドたちと色々やっている間に、僕のダンジョンの下層ではモンスターたちが生存競争を繰り広げつつ、繫殖していた。

 数が増えていくのはもちろんだが、能力自体も上がっている。その中で新スキルや戦闘戦術とでも言うべき、戦いにおける定石のようなものが生まれ、各種族ごとに広まりつつあった。



 基本能力が高いに越したことはないが、それをうまく使えることが重要で、いわゆる戦闘経験、どれだけ戦い慣れているか?というのが僅差の勝敗を分けることになり、己の生存確率を上げることになる。


 そして、最近わかったが、ダンジョンマスターは自分のダンジョン内で行われている戦闘を自身が行っているものとして“経験”する。


 どういうことかというと、モンスターが生き残るための戦いで行われた駆け引きであったり、使われた戦術を自分の経験とし、自身が持つスキルレベルの範囲内で最適化した行動を行えるようになる。


 つまり、ダンジョンマスターがDPを払って得たスキルやステータスを何の戦闘経験や実験、修業もなしに使いこなすことができるというわけだ。



 ただDPを使って強いモンスターを生み出しただけでは、これを得ることはできない。




「お待たせしました」



 やって来たのはオーガキングのガキン。僕がダンジョンマスターの代行としている3体のうちの1体であり、僕の待ち人である。


 彼の仕事は新種モンスターの保護と育成、繫殖の補助というのがメインだが、スキルなどの実践での使用報告などもしてもらっている。


 使用報告は本来なら必要ないのだが、外から見ている視点は重要で、見落としていることにも気付くことができる。


 

 ガキンはその仕事の関係でダンジョン下層にいることが多い。『限界突破』スキルを獲得した種を見つけたのが彼だ。



「色々忙しい中、悪いねガキン」

「いえいえ、マスターこそ、お忙しい中わざわざ」

「こっちは皆のおかげでじっくり好き勝手やらせてもらっているからね。今回来たのは天使族と悪魔族についてだね。とくに『限界突破』を覚えたアークエンジェルはどんな感じだい?」



 アークエンジェルはエンジェル系モンスターの中でも上位だと思っている。そもそも『限界突破』スキルを保持している時点で最上位に近いのでは?とも考えている。


 戦闘において、基本のステータスだけで勝敗は決まらない。高いに越したことはないが、毒や麻痺などの状態異常や各種魔法などもあるのだから、それらへの対策ができないといくらステータスが高くともあっさりやられることも珍しくない。


 防御力に関するステータスがないこともあり、例えば麻痺させてしまえば、いかに強大なステータスを持つモンスターでも攻撃を喰らい続けていつかは死ぬ。まあ、ウチの下層で長く生きているモンスターのほとんどは状態異常に対し抵抗スキルを持っているのがほとんどだが。



 エンジェル系や悪魔系は状態異常に対し抵抗力は高い種が多いこともあり、特に『限界突破』したアークエンジェルはかなり強力なモンスターではないかと思っている。しかし、報告ではそうなっていないようなのだ。そこで実際のところをガキンに聞きに来たというわけだ。他にも色々聞きたいこともあったのでちょうどよかった。



「アークエンジェルに限らず、エンジェル系や悪魔系全般的に言えることですが、やつらはスキル系は強力ですが、ステータスの成長が尖っているため、弱点もかなり多いです。そこが現状、あまり生存率が上がらない要因ですね」



 ガキンが言うようにエンジェル系や悪魔系は強力なスキルを保持している個体が多い。例えば、『物理攻撃無効』スキルや『マジックミサイル』のような強力な魔法攻撃スキルなどだ。


 ちなみに『物理攻撃無効』スキルは最大MPの40%のMPを1回の攻撃ごとに消費するため、最大で2回、物理攻撃を無効化できるが、MPの消費が激しく、「ここぞ」というときしか使えない。



 ステータスの尖った成長というのは、エンジェル系はMPやINTなどの魔法系のステータスが上がりやすい反面、他のHPやSTRなどのステータスが上がりにくい。悪魔系は真逆でHP、STRやAGIは上がりやすいが、他は上がりにくい。そういう成長をするのだ。



「なるほど。エンジェル系は接近できれば大したことがなく、悪魔系は逆に距離を取れば、MPの関係上、ほぼ攻撃が来ないわけか」

「そういうことですね。この2種族が組めばかなり強力なのですが、野生の条件下ではお互いを天敵としていますので、難しいでしょう」



 ガキンが言うように、この2種が組めば厄介なのだが、それはダンジョンバトルなど特定の条件下でのみ発生するだけで、普段はあり得ないと。

 

 『限界突破』したアークエンジェルといえども、その性質に変化はなく、エンジェルより多少接近戦ができるとはいえ、接近戦が得意なモンスターからすると大した違いはないと。



「一芸に秀でたタイプか。嫌いじゃないんだけどね」

「マスターはむしろそういうタイプ、好きでしょうけど、実際はかなり厳しいですよ。接近戦、遠距離戦両方ともある程度はできないと」

「肝心の水中戦は両種族とも苦にしないみたいだから、そこは良かったけど」

「環境変化には両種族比較的強いですね。海王とのダンジョンバトルにはこの2種族が主力になりそうです」



 海王との戦いに向けて、水中戦対策は欠かせない。ウチのモンスターたちで水中戦ができるのが少なかったため、エンジェル系と悪魔系を集中的に育成しているところであった。



「報告見たけど、両種族って進化条件がほぼ同じだよね?あの進化条件からそんなに弱点というわけではないと思っていたけど?」

「進化条件が厳しいのですが、あくまで苦手系統ですので。得意な種族からすると大したことないんですよ」



 エンジェル系、悪魔系の進化条件はいくつかのスキルとスキルレベルの他、ステータスが条件となる。


 アークエンジェルを例にすると、エンジェルのステータスのうちHPとSTR、AGIといった近接系に必要とされるところが進化条件になっている。エンジェル自体は先ほど言ったように魔法系のステータスが良く伸びる反面、進化に必要とされる近接系のステータスが上がりにくい。

 一見簡単なようで自然では非常に達成が難しい条件となっている。それに予備知識がないと非常にわかりにくい条件でもある。


 悪魔系はその逆。進化には魔法系のステータスが関わってくる。



 この両種族、繫殖方法?は他と明確に違う。


 自然では、エンジェルやデーモン以上の種族が放つ特殊な魔力の塊からミニエンジェルやミニデーモンが生まれ、増えていく。

 具体的には、育つ中で進化条件を満たした個体が進化するが、その時、能力だけが残り、レベルがリセットされる。この進化が完了した時、特殊な魔力塊が残り、そこからミニエンジェルやミニデーモンが生まれる。

 つまり、進化と繫殖が同時に起きるという珍しい現象を起こす種であった。


 そのため、強い個体が死んでしまうと増えず、種全体が強化されない。ウチのダンジョンでは強化はなんとかなっても、種としての生存そのものが厳しいため、ガキンが手助けをしないとせっかく召喚しても絶滅なんてことになりかねない。



「これは、強いやつが出てくるのを待つより、大量のDPを使って召喚した方が良さそうかな?」

「かもしれませんね。ただ、アークエンジェルでは代行になれませんから、まだ上があることは確実ですね」



 そろそろ新たなダンジョンマスター代行が欲しいと思っていたのだが、アークエンジェルではダンジョンマスター代行になれなかった。ダンジョンマスター代行は各種族の最上位のみがなれるので、まだ上があることはガキンがいうように確実である。



 ガキンをこのまま2種族の面倒を見続けさせるわけにはいかない。他に色々やってもらわないといけないことがあるからだ。

 だが、ガキンが2種族の面倒を見たことでわかったこともあった。




 モンスターの本能は戦闘である。


 一応、ダンジョンマスターがモンスターに命じれば、戦闘はしなくなる。つまりむやみやたらと襲われることはなくなる。しかし、それには多大なストレスが溜まるらしく、どこかでガス抜きをしないと、爆発する。


 つまり、肝心な時に裏切ったり、ダンジョンマスターに対し反抗したりする。特に、ダンジョンマスターが対象モンスターの戦闘能力よりも明らかに劣る場合はよりストレスが大きくなる。そして、反抗しただけなら良いが、マスターを攻撃した場合、配下から外れ、以後一切の命令を受け付けなくなり、野生化するが、DPは一切入らないというデメリットしかない状態になるとコアからの情報にあった。


 これがいわゆるスタンピードってやつだそうだ。



「そうか。となると、DPをどう使うか?だね。僕の強化か、研究しつつのエンジェル系か悪魔系の最上位を生み出すか。今のダンジョンではどちらかしかできないだろう」

「マスターの強化一択かと。これ以上は統率に問題が出ます」



 ダンジョン内に生息するモンスターの能力がダンジョンマスターより上になれない以上マスター自身の能力を少しでも強化しておくべきか。



スタンビートは他の理由でも起きますが、すべてダンジョンマスターの管理失敗が原因です。

魔神様はダンジョンマスターが過度にサボることは許していません。


次回更新は1週間後を予定しています。年末年始も更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ