231.ミヒャエルとの話し合い
早めに書き終わったのですが、投稿し忘れるというミス…すいません。
ミヒャエルのところに来たのは報告書を読んで、色々聞きたいことがあったからと、呼ぶより来た方が話が早いからだ。
ミヒャエルの研究室は久しぶりに来たが、助手には人型が良いということで、エルフはもちろん、ドワーフや獣人たちが主で書類を抱えながら忙しそうに動き回っている。ここは入り口付近だから事務所のような側面もある。
ちなみにミヒャエルの研究所は僕のダンジョンのコアルーム横の部屋と言ったが、正確には部屋から転移した先にあるので、ここで万が一大爆発などの事故が起きても安全性は高い。完全に隔離した地下空間となっているミヒャエルの研究所。手狭になるたびに拡張しているが、他に作らないのは機密保持のためであったりする。要はこの研究所そのものが機密になるため、転移のみでしか来られないようになっている。
通常は各入り口となる転移部屋から転移で来て、その時に誰が来たか記録されるようになっている。
直接転移ができるのは僕や他のダンジョンマスター代行たちだけであるが、あくまで緊急時のみとしている。
受付も済ませ、ミヒャエルの居場所を確認。どうやら自室にいるらしく、取り次いでもらい、ミヒャエルの自室へ向かう。
「やあ、待っていましたよ。マスター」
「忙しいところごめんね。報告書を読んで色々聞きたくてね」
僕を待ってくれていたミヒャエルに早速聞く僕。
「まず、竜王から言われていた、ホムンクルスのDPショップへの登録のことだけど」
以前、竜王であるエル爺からホムンクルスが使いたいということで売ってくれと言われていた件だ。
DPショップとは、僕らダンジョンマスターやDPの使用権限を受けた者たちがダンジョンコアを介して利用できるお店のことで、いわゆるオンラインショップである。
DPショップに並んでいる品は様々で食料品や日用品、雑貨はもちろん、各種装備や家具、ポーション類や魔道具、さらにはダンジョンマスター限定だが、ダンジョンコアまである。
DPショップへの登録とはDPショップにない品を発見もしくは開発した場合、登録が可能でアイテムの説明欄に登録者の名前が載り、売り上げの一部が登録料として登録者に入ってくる、著作権のようなものと思っていれば良い。
また、購入に必要なDP量はDPショップで決めているらしく、登録者はそれに従うのみ。異議などは認められない。
ちなみにゴバ君は様々な装備を登録しており、DPショップ内に鍛冶屋ゴバというアイコンまである。
クナも魔道具屋クナというアイコンがある。
この2人はそれくらいの数を登録していて、自領域は広くないが、この印税?にてダンジョン経営をしている。
この2人の印税は大したものですごいときは数千万のDPが入ってきたことがあった。ただし、ダンジョンコアのレベルアップとは別になっているようで、2人のダンジョンコアレベルは上がらなかった。
で、そんなDPショップへの登録だが、ホムンクルスは無事認められた。ドッペルゲンガーは魔物扱いだが、ホムンクルスは魔道具扱いであったためだ。
生物なのにとか、魔物が元になっているんだけどなあ?とか思ったが、生体魔道具とかもあったし、そっちの分類になったのだろうと納得するしかない。何が問題かというと‥
「ホムンクルスの必要購入DPが1億って何かの間違いじゃない?」
「いえ、間違っていませんよ」
そう。購入に必要なDPが1体につき1億とつけられていたのだ。
1億DPというと、ダンジョンコア作成ができるレベル5ですら1つのダンジョンコアには1千万DPしか貯めておけない。それが10個分。実質最低でもダンジョンコアレベルが6ないと購入は不可ということになる。まあ、5でも購入可能だが、そんなにDP貯めるのは非常に厳しい。
「‥ってことは入ってくる登録料は購入DPの15%だったよね?」
「そうです。ホムンクルス1体売れるごとに1500万DPが入ってきますね」
‥マジか。1500万DPってすごいぞ。日収1500万円って考えたら、わけがわからないね。どんな金持ちだよ!?まあ、購入の1億DPもおかしいが。
1500万DPあれば、僕の能力を15あげることができる。HPかMPなら150だ。…あれ?大したことないぞ?
召喚陣で召喚できるモンスターなら1000倍上げれるのだから、いや、やっぱりすごい量だ。
「マスター、ちなみに、登録初日で100体ほど売れまして、15億ほどDPが入ってきました」
‥は!?いや、あの…、すでに僕の頭は大混乱なのだが。意味がわからん。なんだ、15億って?一瞬で15億DP稼ぐって。
「確か、この稼いだDPはコアのレベルアップ条件には当てはまらないんだよね?惜しいなぁ」
「そうですね。しかし、今のままのDP取得量で行きますと、来年辺りにレベルアップしますよ」
「!!‥マジ!?」
「ええ」
「1兆だったよね?」
「ええ」
ここ数年で僕の領域は拡大した。それに伴いDPの取得量も激増した。コアのレベルが7になった当時は、確か次まで600年とか計算していた気がする。それがあと1年のところまでくるくらいDPの取得量が増えた。
「あれ?…ってことは、海王との対決は来年?」
「でしょうな」
「来年はエルドたちと一緒にリュート神聖国に行こうと思っていたんだけど?」
「だめですね。諦めてください」
「ヤダヤダ!絶対行きたい!」
「諦めてください」
駄々をこねてみたが、ミヒャエルに冷たく返される。まあ、元々通じるとは思っていなかったが。チッ!
「わかった。来年は諦めよう」
「ええ、そうしてください」
「ってことで、今年行く。というか、今から行こう!」
「は?い、いや、お待ちを!」
ミヒャエルが焦っている。よし!珍しいぞ。
「ホムンクルスが食料品を運ぶ仕事から解放されたから暇してる。クナのエルフの里からゴバ君の鍛冶の村まで薄っすら道があるから、そこを通って、鍛冶の村から北上。そのまま山脈沿いにユニオンに入って、5本川を渡ってしまえば、リュート神聖国だ。エルドたちがおそらく今年いっぱいはかかるだろうから、その間にリュート神聖国と逃亡者の村の往復だな」
ミヒャエルは何か言いたそうだが、これは翻意は無理と思ったのか、
「わかりました。表の動きも大事ですから、今年は仕方ないですが、来年はこっちにいてもらわないとだめですよ?それと、ユニオン東部は政情的に不安定ですので、お気を付けください。こっちで旅の手助けはほぼできないと思ってくださいね?」
「わかった」
ミヒャエルがいう気を付けては、戦闘能力的なことではない。政情不安定のため、僕を取り込もうという勢力に気を付けてという意味だ。もちろん、そんなのに目を付けられて、取り込まれると旅どころではなくなる。
現在の僕のホムンクルスの能力はおよそ200台のステータスがある。これは人間の兵士たちの中でも最上級の能力になる。
ステータスで思い出したが、ミヒャエルに聞いておくことがあった。
「そういや、例のスキルが見つかったって?」
「例の?ああ、“限界突破”系のスキルですな?」
そう。RPGのクリア後などで定番とも言える限界突破系のスキル。いわゆるバランスブレイカーだが、この世界にもあるのではないか?と思っていたのだが、案の定見つかった。
あるのではないか?と思った、確信を得たのが竜王を視た時。正確には人間形態ドッペルのエル爺を視た時。
エル爺は一部のステータスが100を超えていた。これはおかしいことで、ドッペル、しかも姿が全くと言って良いほど違うため、本来の能力の100分の1程度しか出せないはずなのだ。つまり、本来の能力は1万を超えていることになる。
僕らが認識していた上限はHPやMPなど一部を除いて9999。どんなにDPをつぎ込んでもここまでしか上げられなかった。
しかし、エル爺を見て、思い当たったのが限界突破スキルだった。
「持っていたのはアークエンジェルという大天使でした。ほかにも持っているモンスターがいると考えられていますが、ウチにいる中ではアークエンジェルだけですね」
報告書を見たのだが、限界突破スキルを所持して生まれて来たのが今のところ、アークエンジェルのみ。だが、ダンジョンマスターが管理している場合、DPを払えば召喚時に好きなスキルを付与することができる。もちろんダンジョンマスター本人にも。だが‥
「これで、他のモンスターにも限界突破スキルを付けることができるようになったのは良いが、必要DPが50億?…ウチだと数名が限界かな?」
「ですね。それだけ希少なスキルだと言うことなのでしょうが。効果を考えればこのコストは仕方がないかと」
これはよくあるゲームの終盤に来ると入るお金も相当な量になるが、必要な量も相当というあれか?
インフレだっけ?
まあ、この必要DPから、付けられるダンジョンマスターはそういないと思うけど。
やっと出せた限界突破スキル。
定番といえば定番かなと。次回は限界突破スキルについて少し解説とモンスター召喚について確認といった話になります。
次回更新は一週間後になります。