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魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編~諸国漫遊~
228/287

228.エルフの里にて

すいません。予定より投稿が遅くなりました。



 エルフの里に着いた僕らを待ち受けていたのは、臨戦態勢のエルフの里の戦士たち。僕が不可抗力とはいえ、いきなり魔法攻撃をしたようなものだからか、皆殺気立っている。



「大層な歓迎ぶりだね~。皆さんのお出迎えはなかなか壮観!」

「いや、イオ。そんなこと言ってる場合か?わかっててやったよね?元凶、なんとかしろ!」



 余裕を出していたら、エルドに怒られた。いや、心配ないと思うんだよね。…ホラ、出て来た。



「者ども、控えろ!族長のおなりである!!」



 お付きのエルフが周囲にそう言い放ち、その後ろからゆっくり出てくるエルフの少女。見た目は完全な少女なのだが、彼女こそがこのエルフの里の族長であり、僕と同期のダンジョンマスターであり、現配下の一人にして、エルフ族の最高位であるマスターエルフのクナである。

 僕らがここに接近していることくらいとっくに気が付いていたはずで、もし、僕らを里に入る資格なしと判断すれば、ここまで近づく前に攻撃してくるはずで、そうでないのであれば、資格はあるということだろう。



「さて、この騒動の原因は貴方たちね?」



 威厳ある言葉で話すクナだが、少女の姿で胸を張って言われても威厳はないと思うのだが‥。いや、まあ、本来の姿と同じドッペル、つまり戦闘用のドッペルはもっているのだが、相手を不用意に威嚇しないために人相手に使わないという不文律みたいのがあるので、少女の姿のドッペルで来たのはわかるのだが‥。もう少し今の姿を考えてほしい。エルフたちが気にしていない様子があることから、普段からこのような感じなのだろうが。



「おい。イオ!何か言ってやれ」



 そう言って僕を肘で付きつつ、小声で言ってくるエルド。どうでも良いが、ちょっとうまい言い方になっているぞ。



「あ、クナ。久しぶり!」



 軽く右手を挙げてあいさつ。


 周りの空気が固まった。



 クナがこっちにスススッと音もなく近づいてきて、僕に耳打ちする。



「ワタシ、一応ここの族長!せっかく威厳ある感じにしているのに台無し!!しかも、設定とかも色々無視して!!」



 そう怒ったクナは元の位置に戻り、諦めたように



「まあ、いいわ。戦う気はないんでしょうし、こっちについて来なさい」



 そう言って里の中に入っていく。



「お、歓迎してくれるのか!?」

「歓迎はしない!!いいから貴方たちも来なさい」



 聞いてみたが、歓迎はしてくれないようだ。



 先頭にクナとその側近のエルフたち、その後ろに僕らが続き、さらにその後ろに先ほど出て来たエルフの里の戦士たちが続いて里に入っていく。


 里に一歩足を踏み入れた瞬間、景色が変わる。


 今まではただの大きな一本の木しか見えなかったのだが、入った瞬間、周りを木の柵や木そのもので囲まれた村、エルフの里が見える。


 元々、クナのいるエルフの里は周囲を幾重にも結界を重ねて守っている。魔道具作りが得意な種族であり、ドワーフ族のゴバ君と共同で色々開発した物の中に、この里周囲を囲む結界発動の魔道具がある。


 防御用の結界は元より、姿を隠すための隠蔽結界、幻影結界や魔物避けの結界などいくつも重ねて周囲を守っている。


 その中に入ると本当の景色が見えるため、一瞬で周囲の景色が変わったように思える。僕以外のエルド傭兵団の皆も驚いている。エルフたちはそれが当たり前のため、何の思いもないが。



 どうやら、クナは族長の家の隣にある迎賓館に連れていくつもりのようだ。そこまでの道のりで見た里は至って普通の村と言った感じだ。住んでいる人は人がおらず、エルフや獣人族、ドワーフたちが住んでいるので、他の村や街とは明らかに違うのだが。


 皆も周りを見ながら歩いているが、いたって普通の景色のため特に目新しいものはなく、何の驚きもなくただ歩いていく。


 しかし、この里が普通でないのを僕は知っている。



 まず、この里、そのものがクナのダンジョンの一部であるが、この辺りは大規模戦闘時には放棄することが前提で作ってあるため、いたって普通の見た目の村となっているだけで、本当のエルフの里は地下にある。


 つまり、地上の迎賓館に案内ということはなくなっても問題がない場所であり、クナの言葉通り本当に歓迎していないことを表している。まあ、こっちもいきなり族長の家や本当のエルフの里に案内されるとは思っていなかったが。クナは奴隷時代があり、その経験から人を信用していない部分があるから、ある程度予想通りの行動とも言える。里の戦士たちもそのことをなんとなくではあるが、気が付いており、入り口であのような対応になったのだろう。



 ちなみに、本当のエルフの里はクナの知識や、概念、認識などを具現化しようと配下の者たちが頑張ったために、この世界では考えられない近代都市になっていたりする。



 さて、迎賓館についた僕らはそのまま、会議室へ通される。そこは木でできた丸い大きなテーブルを囲うように木でできた椅子が並んでおり、クナはその一番奥に、両隣は里の幹部たちが座り、僕らは入り口近くの椅子に座らされる。ちなみに、エルフの戦士たちは迎賓館には入って来ず、周りにいるようだ。


 全員が座ったのを見たクナは話し出す。



「あなたたちのことはトトークやイオから聞いているし、見て来たから自己紹介はいらないわ。私はクナ。ここの長をやっているわ。トトークと同じダンジョンマスターの一人よ。だから、あなたたちがここに来た目的も知っているわ。その上で答えも言うわ」



 クナは完全に面倒といった様子で話している。その感じは協力するのが面倒くさいと全身で表している。



「私たちが協力するかどうかは貴方たち次第。こちらの条件をクリアしたらね」

「あの、その条件も気になるのですが、僕らはあなたたちがどういったことができるのかわかっていません。そういったことも教えてもらいたいのですが‥」



 条件を出そうとしたクナにエルドはその前にクナたちがどういったことをしているのか?を知りたいと言った。確かに、こっちはわかっているが、エルドたちはこの急展開についていけていないようだ。



「確かに展開が急すぎたわね。ではこうしましょう。あなたたちの条件は私の作ったダンジョンの攻略なんだけど、すぐにできるわけがないから、その間に貴方たちの村とついでにワールハイト合わせた10年分くらいの食料を渡すわ。それでどう?あ、食料はイオが運ぶでしょ?」

「「は?」」



 エルドたちはそんなに食料があるわけないし、気前よく渡すなんてことないと思っての「は?」で僕はそんなこと何も聞いていない「は?」である。



「ちょっと待ってください。まず、ダンジョン攻略はイオ抜きで行うのは良いとして」

「いいのか?」

「ワールハイトと僕らの村の食料10年分って、失礼ですがこの里にそのような量が備蓄しているようには見えないのですが?」

「食料はあるわよ?ダンジョン攻略するまで、あなたたちに見せるわけにはいかないからイオに運んでもらうしかないけど。イオは知っているわよね?」

「ああ」



 エルドが言う通り、ぱっと見でこの里にそんなに食料があるようには見えないのだが、クナの『農業上手』によって、地下にある大農場からとんでもない量と質の食料が採れる。栽培されている食料も可能な限り品種改良されており、その過程で出た大量の食料は数百万人分にもなる。


 クナはそれを僕一人で運べと?さっきの趣旨返しか?まあ、ありがたく運ばせていただくが。空間収納で何回かに分けて運べば良いだろうし。


 とりあえず、エルドたちに軽く説明しておこう。



「エルド、クナの言っていることは本当だ。地下に大食糧庫があって、そこに数百万人分の食料が保管されている。論より証拠って言うし、クナ少しでいいから食べさせてやってくれ」

「オッケー!カレーで良いよね?持ってきて~!」



 クナが持ってこさせたカレーは絶品だった。ごはんも美味しいが、様々な香辛料が混ざったカレーのルーに色々な野菜が混ざり、鶏肉が良い味を出して、渾然一体となった、正に宇宙!以前食べたものより明らかに味が向上している。

 鶏肉ってこの世界では魔物肉なので、非常に貴重なのだが、まあ、これだけでも美味かった。程よい弾力に噛めば噛むほど味が出てくる。

 皆も大満足だが、ライド以外はこのカレーを作るために必要なものを集めることが、どれほど困難か気が付いて、恐る恐る食べるようになってしまっていた。ライドはそんなことは気にせず、というか気が付かず、もりもり食べているが。


 このカレーだけで十分この里の豊かさが理解できたと思うのだが、さらに付け合わせのサラダやスープも美味かった。ついでにデザートに出て来たのが果実の盛り合わせと、これでもかと豊かさをアピールしてくれた。



 胃袋を掴むって大きいよね?エルドたちはこの後、ダンジョン攻略を「ぜひ行かせてください」と言わんばかりの態度でクナのダンジョンを攻略することに同意した。

 

 ダンジョン攻略の合間でこの里で食事ができるのを聞いてエルドたちのモチベーションが爆上がり中だ。頼むぞ、きちんとダンジョン攻略してくれよ?わざと延ばすとかしないよね?


カレーは正義である!

というわけで豊かさアピールに成功!と食糧問題が解決しました。

ちなみに鶏肉はコカトリスという有名な強いモンスターの肉でした。



次回投稿は来週になります。

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