226.ここでも問題が
いつもありがとうございます。
状況が分かったので、手分けして僕らも手伝うことにする。幸い魔物は弱いやつばかりで、今のままでも問題はなさそうだが、エルドとライド、ノフスの3人で魔物退治に、僕とルルで開拓へ手伝いに行く。僕とルルなのは魔法で開拓の手伝いができるからである。
魔物退治組は勇者であるマルコを筆頭に孤児院で戦えるメンバーと傭兵や元傭兵の人たちが戦っている。開拓地が広いのでかなり広く分布している印象がある。その中でマルコのところが比較的手薄なのでエルドたちはまずはそこに手助けに入る。
「オッス!おひさ!とりあえず手伝うよ」
「お久しぶりです。助かります」
「じゃ、俺はちょっくら突っ込むからフォローよろしく!」
「え!?ウソ!?ちょ!ライドさん!?」
エルドがマルコに挨拶をしている隙にライドが魔物たちの真ん中に単身突っ込んで行く。それを見て焦るマルコ。まあライドの行動はいつも通りだ。もちろん格下だからやっている行動であって、あれで状況なり相手を直感で判断しているのでひどい目にあうこともない。
実際、ライドに攻撃が集中するが、すべて避けるなりさばくなりしてライドはノーダメージ。
その間に他の人が隙をついて攻撃することで一気に形勢が傾く。
こうなると、展開が楽になり、あっという間に殲滅が完了する。
「相変わらず、ありえねえっすね。ハハハ」
慣れていないマルコが乾いた笑いをしている。ライドたちはすぐに近くの戦闘地域に乱入して殲滅に向かった。そこでもあっという間に殲滅して、また次へというようにくり返していく。
魔物討伐をしていたのは元傭兵や兵士など戦闘の心得があったものたちが中心で、そこに対魔物特攻効果の『勇者』であるマルコが加わるのだ。しかも今回は僕らも加わったことで過剰戦力もいいところであったらしく、戦闘はあっさり終了。開拓も順調に進んだところで、この日は終了。食事をし、寝ることになる。
開拓している場所の周囲で小屋を建てて寝泊まりする者が大半だが、一部の司令官クラスや見張りは城建設予定の丘の上で建物を建て寝泊まりしている。
今回は僕らとマルコ、ダンカンで僕が新たに小さい家を建てそこに集まることになった。もちろん、魔法建築というやつなのですぐに出来上がる。細部は僕のセンスの問題もあり、お察しレベルであるが。
今まで魔法建築で小屋を建てていたダンカンは
「アリエネーよ。この規模をこんな短時間で作るとか」
などと言って呆然としていた。一応大きさは平屋の1LDKなので大したことはないと思う。まあ、6人くらいならすこし詰めれば余裕で寝泊まりできるくらいの広さであるから問題はないと思うのだが。
台所で火も使えるし、水道はないが、汲んで来た水を貯めることくらいはできるので水も使える。通常の生活をする分には特に困らないだろう。そんなところで食事をした僕らは今までの状況を聞くことにした。
食材は持ち込んでいるし、魔物狩りで手に入ったので食料は潤沢である。大半は村に運ばれることになっていて、そこで消費されるため、残ることはない。
マルコとダンカンの2人に話を聞くと、どうやら人が急に増えた理由は先のワールハイトとユニオンの戦争が関係しているようだ。
戦争で住んでいたところを奪われた人たちが、ユニオンの中心都市であるカルナチョスに入れない人々が街を囲う壁の外に大量の難民として集まっていたが、多数の餓死者も出たり、食料問題を発端として、住民とのトラブルも絶えなかった。
そこを見かねたエルドの父であるエルマンドさんが興したエルマンド商会に所属する行商人たちが“南にここよりも良い暮らし、なんとか食事くらいはさせてあげられる場所がある”というようなことを噂として流して、女子供を連れていき、男たちはこの逃亡者の村を目指し、移住してきたということであった。
冷静に考えると、胡散臭い話で乗ったりはしない話だが、生活環境がひどく、冬も近くなってきて寒くなってきたことで、今よりは温かい南、つまり逃亡者の村へ移住する人が多かった。
冬になる頃には噂が“南には食事に困らない楽園がある”だの“今までの暮らしを取り戻すことができる夢の国がある”だの現実とは乖離した噂になっていたが、それを信じたのか、春になるころにはさらに移住者が増えて今の状況になったということであった。
「ってことは、今孤児院のある南村であの状況だ。北の逃亡者の村はもっと人がいるってことか?」
「というより、逃亡者の村でも入りきらず、南村への道に小屋を建ててそこで住んでもらっていますよ」
ライドの質問にダンカンが答える。もちろん小屋を建てたのはダンカンだ。そして、今は開拓の部隊長みたいなことをしている。
「移住者は農民やら傭兵、下っ端の兵士などがほとんどですね。その分開拓に人が集まって助かっていますよ」
そういうのはマルコ。今では、勇者の特性もあって、魔物討伐部隊のエースになっている。
「実は、今困っていまして。開拓は進んでいて、畑や住むところは作っているのですが、作物が収穫できるのが秋以降なんですよね」
「つまり?」
「それまでの食料に不安がありまして。しかも収穫に失敗したら、冬に食べるものがない可能性もありまして‥」
ダンカンの相談に困る僕ら。なにせ、ワールハイトも食料が潤沢にあるわけではない。むしろ、足りないくらいなのだ。一応、この辺りでも魔物狩りや開拓することで食料の確保をしていて、そこそこ食料事情は良いのだが、冬の備えができるほど潤沢なわけではないらしく、しかも、狩りすぎて魔物がいなくなれば、一気に食料問題が噴出する。
皆、考えているが、当然良い策は浮かばない。
「最悪は魔の森で狩りかな?」
「それ、絶対ヤバいやつですよね?ノフスさん」
「そうだね~。わかっているじゃないマルコ!」
「シャレにならないって!!」
などというノフスとマルコの会話があったり、
「北のユニオンにでも戦争吹っ掛けて、食料奪ってくるか?」
「それはこっちの犠牲が多すぎんで却下です。ライドさん」
「それはまだ早いから、その手段は取らないよ」
「まだ早いって、いつかやるんですか?エルドさん?」
そういうライドとダンカンとエルドの会話があったりとしている。
「エルドの言う通り、ユニオンとの戦争はまだ早いから避ける方向で」
僕もそこに混ざる。
「状況はわかった。そうなると城の建設も進んでいないだろ?」
「そうですね。開拓で精一杯です」
「むしろ、今は城の建設は進めなくて良い。開拓に全力を注いでくれ。開拓はこの丘から見て東の方向と南の方向で。絶対北には開拓するなよ?戦争になるからな」
「わかりました。その方向で開拓を進めます。」
エルドはダンカンにそう伝え、再び食料問題を考えるが、いい案が出ないので話が脱線気味になっていくのは仕方がないことか。
「まあ、今考えてもいい考えが浮かばないなら、一旦保留しかないな。それより、僕らの今後の予定を話しておくか」
そういって予定を話始める。
「まずは南部のエルフの里か東のドワーフの村かどっちに行く?」
「「南」」
僕が聞くとエルド、ノフスから南と回答がある。ルルとライドはこういう時は口を出さないので南で決定だ。
「エルフの里?南にそんなのがあるんですか?聞いたことないですよ?」
「ああ、そりゃそうだ。隠されているらしいしな。ただ、僕らは行かなくてはいけない。それが僕らがここに来た目的でもあるわけだし」
ダンカンの言葉にエルドはこのように言う。
「あ、この家はお前ら好きに使っていいぞ。僕らはここに来た時に使わせてもらえれば良いし」
エルドはダンカンとマルコにそう言った。確かに僕らはほぼここにいないからな。せっかく作ったんだし、有意義に活用してもらいたい。
前話で少し早めに進めると言って様な気が‥進んでない。
次話更新は来週になります。