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魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編~諸国漫遊~
224/287

224.ニゴ帝国にて

いつもありがとうございます。


今回はなかなかまとめるのに苦労してしまいました‥。

 


 世の中には凡人や凡愚と呼ばれる人ばかりで、秀才や天才と呼ばれる人は、ほんの一握りである。


 秀才や天才と呼ばれる人は凡人と何が違うのか?



 持っている知識?能力?生まれ持っている差?僕が考える答えは知識や能力の使い方だと思う。


 もちろん、知らなければできないこと、できなければそうならないことはたくさんある。誰かが言っていたと思うが、『智は力なり』。僕はこの本当の意味を、言いたいことは知っているだけではだめで、得た知識をいかに使うか?が本当に言いたいことではないかと思っている。この得た知識の使い方で秀才や天才、凡人が分かれるのだと思う。


 そして、これを前提にすれば、まず知識や能力がないとだめであるので、現代日本社会はともかく、この世界では非常に希少な存在であるといえよう。


 具体例としてはエルドや意外かもしれないがライドは天才でノフスやルルは秀才と言って良いだろう。そして、僕自身はただ、魔神様の加護やダンジョンマスターの力があるだけで凡人だと思っている。


 エルドは自分の国を最低限度の知識なり力なりを持つことができるようにしたいと考えている。おそらく、エルドがダンジョンマスターの力を持てば僕なんかより有効に使いこなすのでは?とさえ思っている。


 今はエルドが将来必要になったり役に立つ知識を蓄えたり、貴重な経験を積む期間だと思っていて、本人も賛成している。そのための各地へと行き様々なことを経験している最中である。


 そして、そういう秀才や天才と呼ばれる人は数が少ないだけでいるところにはいるのだ。



 何が言いたいのかというと、僕とエルドの前にいて、座ってお茶を飲んでいるのがニゴ帝国宰相のエドワルド、そしてその隣に座っている偉そうで煌びやかな服を身に纏った老人がニゴ帝国の皇帝ニゴ8世だったりする。

 



 今、僕らはニゴ帝国第2の都市リフにいる。ニゴ帝国は大陸西部の北西にあり海に面している。首都ニゴックは港町でもあり、国の中心地にあるというよりは端にあるがリフはほぼ中心に近いところにあった。現在は国土の拡大で西寄りになってしまっているが。


 現在3月でもうそろそろ冬から春へと変わる頃でワールハイトと比べても雪は多いが、今なら移動にそこまで手間はかからない。主要な街道であればなおさらだ。


 しかし、まさかニゴ帝国の重鎮中の重鎮が2人ともリフにいると思っていなかった。ここしばらくダンジョンマスターの能力が使えなかったため、情報が古くなってしまって使えないものが出るのは仕方ないが、この2人の位置情報くらいは調べておくべきだったと後悔している。



 現在僕とエルドがいるのはリフの領主の屋敷の応接間といったところか。そこで5人が座ってお茶を飲んでいるわけだ。

 ちなみにあと一人はここリフの領主だったりする。皇帝はここの領主と宰相に挟まれる形で座っている。



 ニゴ帝国を今の形にしたのが、現宰相であるエドワルドと皇帝のニゴ8世である。2人とも40間近であるが、平均寿命が短い世界であるので、すでにいつ死んでもおかしくない老人扱いであり、姿も老人である。


 ニゴ8世は整った白髪で皺もあるイケメンだった老人と言った感じで、体は年相応に肥えているが、目は細目で鋭くこちらを見ている。


 宰相は短髪、白髪で皇帝よりも細く、顔はいたって普通のお爺ちゃんといったところ。ちなみにリフの領主は黒髪でバーコードハゲのただのオッサンである。


 もちろん、この3人そう簡単に会えるものではない。


 

 僕らはこの街で特に何かをしたわけではない。調査などはまだまだこれからであるのだが、調査をしようとした今朝がた、宿に使いの者が現れ、領主が呼んでいるので今から来てほしいと言われ、行くしかなかったというわけだ。そして来てみると、皇帝と宰相、領主の3人が来たというわけだ。


 エルド傭兵団団長エルド、エルラノーア商会会頭イオと言っていたから、わかっていて呼んだことは明白だ。

 つまり向こうはこちらのことを理解しているということだ。さて、何を言い出すことやら。



「驚かせたようだな。大儀である。今回は予らの私的な会話故、面倒な挨拶や敬称などは抜きとする。面を上げよ。楽にいたせ」



 部屋に入ってきた早々のニゴ8世の言葉で僕らは椅子に座り、通常の会話となったというわけだ。その後は宰相が主に話し出す。



「まず、我々はお二人に対し、一切の敵意はないことを明白にしておこう。…緊張はするなと言う方が無理があるだろうが。…そもそも我々はお前たちに興味があった。片や少年傭兵団として頭角を現したかと思えば、それらをまとめ、さらに他のいわゆる稼げていない傭兵たちを団員にし、そんな傭兵たちを一流の傭兵へと変えた手腕。商会を立ち上げたかと思えば、魔物の素材を中心に規模を拡大、競争に敗れ、潰れそうな商会を吸収し、立ち直らせつつ、いつの間にやらワールハイト1の大商会へと成長させたこともそうだ。それを成し遂げたのがまだ10歳前後の子供というではないか。素性が一切謎に包まれていることから、元々ワールハイトにいたわけではなく、どこか別の街、あるいは国にいたのであろう?そのような者が現れたと言うからには、我々としても一度会ってみたいと思っていたところだ。できればワールハイトではなくこちらに力を貸してもらいたいということも含めてな」



 評価としては今のところ、べた褒めだな。改めて言われると確かにそのとおりで、良く調べていると言うのが本音だな。宰相は続ける



「ああ、我々はワールハイトと断交状態であり、行き来も規制はしているが、君たちがワールハイトからきたということに対し特に何か罰を下すとかそういうことはないから安心してほしい。そういうことを回避するための非公式の会談だからな。そもそも国境などあってないようなもの。完ぺきな規制は無理だしな」



 宰相の言う通り、すでに僕らがワールハイトから来たのはバレている。本来なら不法侵入とかで捕まえるのだが、今回は不問としてくれるようだ。…明確に敵対しなければ、という条件がつくが。



「過分な評価、ご配慮ありがとうございます」

「ああ、よいよい。そのようなもの」



 エルドの言葉に頭を下げた僕らに対し、宰相は気にするなということか?何か見返りがほしいとか?



「さて、本題に入らせてもらうが‥」



 キタキタ!



「おそらく次の夏はないと思うが、来年以降、ユニオンが今回の戦争の報復として我が帝国に攻めてくる。そこで、共闘をしないか?ということをワールハイト政府に伝えてほしい」



 その提案はワールハイト政府にしてほしいが。僕らがワールハイト政府とつながっていることも当然バレているというわけか。味方に引き込めないのであれば、いわゆる使者として使おうということだろう。



「それは、なかなかですね。ちなみにその共闘の中身をお伺いしても?」

「ニゴ帝国、ワールハイト共同軍ができれば一番良いが、それは難しいだろう。おそらく、ブフラル周辺で大規模な戦争になる。そこで西から我々が対峙し、ワールハイト側が南から軍を配置することになるだろう。最低限その時にユニオンに加担しなければそれで良い。これもできれば、だが、お主たちエルド傭兵団がこちらに来てくれれば厚遇を約束しよう」



 エルドの質問に対し、宰相からはエルド傭兵団の引き抜きと不戦協定が目的だと。その説得と調整をしろということか。不戦協定に関してはこちらも異存はない。ユニオンとニゴ帝国どちらが厄介かと言えば、間違いなくユニオンであるのだから。引き抜きは当然応じられないが。


 僕とエルドはお互いを見て無言でうなづく。



「わかりました。引き抜きは応じられませんが、不戦協定に関しては最低限引き受けましょう」

「そうか。頼む。あと、商会に関してはまともな商売をするのであれば、引き続き我々は手を出さんよ。そんなことで国の税収が減るのはバカバカしいからな」



 エルドの答えに対し、宰相はそのように言う。それで僕らの初会談は終わり、僕らは解放された。結局何だったんだ?と思うかもしれないが、やり取り自体は簡単だったが、それはニゴ帝国側が細かく調べ、多大な配慮をした結果である。


 通常僕らを子供と侮ってそこまで調べたりはしない。それだけでニゴ帝国、特に宰相や皇帝は僕らを公平に、決して侮っていないと言うことになる。


 そもそも、非公式の会見とはいえ、敵かもしれない相手に護衛無しはありえない。一国の宰相や皇帝、領主だぞ!?部屋の外にはいたが、中に居ないってありえない。これはこちらをそこまで信用しているわけではない。後ほど帰ってからダンジョンコアの記録を見たところ



「護衛は彼ら相手には何人いても無駄でしょう。ならばいっそいない方が良い」



 という宰相の言葉が決め手だった。



 他の皇帝と宰相のやり取りと見てみると



「奴らの戦闘能力はどの程度なのだ?」

「はっ!皇帝、私の手の者の報告からの推察にはなりますが、個々人の能力は我ら騎士団長より上かと」

「!?本当か?」

「そこは間違いなく。まだ騎士団長も変わったばかりで今一つ信が置けないところもあります故、今回は連れて行かない方がよろしいかと」

「うむ。確かに。腕の問題もそうだが、態度などで余計なことを言うやもしれんからな」



 などというやり取りがあり、



「先の戦争で、証拠こそありませんが、彼らが当時のワールハイト司令部を暗殺したのは間違いありません」



 そう宰相は報告していた。



「確かに朕はワールハイトを襲えと指示はしていない。その後のワールハイトの領主交代の流れや今の領主の関係から考えて、確かに間違いなさそうだな」



 皇帝は状況や情報からそのように結論を出した。うん。当たっている。僕らと会談後は2人のやり取りでこういうことがあった。



「彼らの強化方法は不明ですが、傭兵団の一兵卒すら、ワールハイトや一般の騎士たちと遜色ない程度の戦闘能力があります。我らの知らぬ、異世界の知識かもしれません」

「異世界の知識か。ダンジョンマスターが関係している可能性が高そうだな」

「ええ。ご明察です。トトークが東部に行ったことは間違いありません故、彼らも東部出身であるのは間違いないでしょう。ユニオンとは別ですね」

「ダンジョンマスター、特に明らかに高能力のダンジョンマスターが関わっている可能性が高い以上下手な手出しは厳禁か」

「そのまま泳がせておく方が無難かと」

「うちの皇太子よりエルドと言ったか、あの子の方がはるかに上だな。器が違うのは間違いない。安易に継がせるのは危険だな。孫に期待しよう。全く楽はさせてもらえんものだ」

「そうですな。またしばらく忙しいままですな」



 そんな宰相と皇帝のやりとりがあり、情報の収集と正確な分析、それによる対応に間違いはない。こりゃあ、強敵だわ。



ニゴ帝国はこの一話で終り、次回からワールハイトに戻ります。


次回更新は一週間後になります。

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