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魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編 ワールハイト・ユニオン戦争
214/287

214.ワールハイト-ユニオン戦争・裏(後編)



 僕とノフスはあらかじめ決めていたエルドたちとの合流地点に着いた。そこにいたのはエルドたち幹部数名だけだった。



「あれ?他の人たちはどこいった?」

「今は別ルートで撤退中。このまま合流すれば問題ない」



 僕の疑問にエルドが答えてくれた。



「じゃ、進みながら話をしよう。この間、何か問題はあった?」

「いや、特にはないな。けが人もアイシャ中心に治癒魔法部隊が治してくれたし、まあ、強いて言うならライドとミーアが少々やり過ぎたくらいだ」

「うぐっ」

「あうっ」

「ふーん。まあ、それはあとで詳しく聞くとして、今は撤退して、ホームに帰るのが先決か」



 僕はエルドに状況を確認しつつ、撤退に入る。アイシャはミーアと学校の寮で同室になった女の子で、治癒魔法が使える。色々教えたりし、実力を伸ばすには実践を経験するのが一番ということで、度々、魔獣狩りやモンスター狩りに付いてきてもらった結果、今ではウチの傭兵団で一番の治癒魔法使いになった。元々治癒魔法使いは数が少ないからというのもあるのだが。



「そっちはどう?」

「ああ、うまくいった。逃がすのも出るかな?と思っていたけど、みんな狩れたよ。な?ノフス」

「うん。ターゲットはみんな狩ったよ」

「じゃ、今頃は報告がワールハイトに行っているところか」



 エルドからの確認も問題ないことを伝える僕とノフス。



 ホーム、傭兵団の本拠地としている建物に戻ってきた僕らはエルラノーア商会の会頭でもあるフラビオ先輩と共にワールハイト領主の館へ行く。同行メンバーはフラビオ先輩の他は僕とエルド、ライドの3人だけだ。他はゆっくり休んでもらいつつ、警備をしてもらうことになっている。





―――ワールハイト領主館の会議室―――



 ワールハイト軍全滅、撤退の報を聞き、領主、その取り巻きたる重鎮たち、さらには戦争のための資金援助をしているワールハイト在住の古参の大商会の会頭たちが集まっている。総勢、12名程度で円卓にて会議が行われていた。最も会議とは名ばかりでこの戦争、特に損害の責は誰にあるかというのを押し付け合い、ののしりあうだけで建設的な話し合いには全くなっていないのだが。



「今回、この戦争に費やされた戦費が大きすぎます。賠償も取れないどころかこのままでは逆にこちらが払うことになる」

「然り、この責任は領主様に取っていただかなくては」

「バカを言うな。この責は私一人のものではない。そもそもそなたらの提案を受けてしたことだ。お前たちも同罪だ。金は税を重くするなり、商会など持っているところから取れば良い」

「領主様、すでに我が商会だけではなく、ワールハイトにあるほとんどの商会にお金はありません。そもそも、今回の資金提供、ワールハイト政府への借金ですぞ。返してもらわなくては」

「然り然り、本来ならすぐに取り立てをしなければいけないところを待っているのです。そこを考慮していただかねば」

「それに借金など金銭の問題だけではなく、より深刻なのは戦争で指揮を執ったワールハイト司令部が全滅したことです。これで次の領主候補だけでなく、我らの跡取りたる者たちも皆、戦死した。これはどうなさるおつもりか?」

「ああ、その通りだ。ウチの可愛い跡取り息子を殺しやがって、無能が。どう責任を取るのだ!?」

「ウチもだ。後方だから安全だと聞いてきたのに。真っ先に後方からの奇襲で全滅。将来のワールハイトのためということで同行させたが、失敗だった」

「子供たちを返せ!」

「ええい。黙れ。子供を失ったのは私も一緒だ。そもそもこちらは領主候補だ。お前らの子供と一緒にするな!」

「「「ハァ!?」」」



 などなど、いつまで経っても話が進みそうにない。ちなみにこの会議室内に今回の戦争へ従軍したものは誰もいない。


 ワールハイト騎士団の団長、副団長以下騎士団はワールハイト本陣にいて、皆、生き残って帰還していたにもかかわらず、この会議へ一切の参加を認められていなかった。つまり、必死で帰還し報告をした彼らだが、この戦争の責任を彼らに押し付けてしまおうという意図が丸見えだった。まあ、今はひたすら罵りあいをしていて、収まる気配がなかったが。



「失礼します」



 非常事態のために伝令の兵が入ってきたのに気が付いた領主一同は



「何用だ!?今は大事な会議の最中であるぞ」

「要件は?くだらないことではあるまいな?」



 など立ち上がって言う。


 伝令の兵の少し後ろからフラビオ先輩、他に僕ら3人が入る。そしてフラビオ先輩は



「この会議ほどくだらないものはないとは思いますが」



 と言いつつ、領主の隣まで近づく。



「ああ?なんか言ったか?ガキども」

「この会議に意味はないとそう言ったんですよ。父上?」

「フラビオ、貴様!」

「ああ、それと、父上とこの会議に参加されている皆さまはワールハイトの政治から引いていただきましょう」

「なんだと!」

「領主の息子とはいえ、一体お前たち子供に何の権限が!」



 フラビオ先輩と父であるワールハイト領主の話合いに割って入ろうとする取り巻きを牽制する僕ら。



「ええい!反逆者だ。兵よ!逆賊どもを捕らえろ!」



 そのワールハイト領主の掛け声とともに入ってきたのはワールハイト騎士団の団長や副団長。その他騎士団員総勢13名ほど。そのすべてが領主含む、会議の参加者すべてに剣を突き付ける。



「な?何を?逆賊はコイツラだぞ?」

「あなたはもうワールハイトの領主ではない。ワールハイトに逆らう逆賊は貴方たちです」

「ふざけるな!」

「おっと、大人しくしてください。切らなければいけなくなります」



 領主と騎士団長のやり取りだが、取り巻き立ちも取り押さえられているため、身動きが取れない状況。それを見て、領主は少し落ち着いたのか、座りだし、フラビオ先輩に問いただす。



「フラビオ、お前はいつからだ?」

「はい?」

「いつから、コイツらウチの騎士団を掌握していた?」

「‥そうですねぇ。去年の夏ごろですかねぇ。私は彼らに聞いたんですよ。“あなたたちはワールハイト領主を守るためにいるのか?それともワールハイトを守るためにいるのか?”とね。そしたら、彼らは答えてくれましたよ。“我らはワールハイトを守るために存在する”と」

「そうか。だが、このままで済むと思うなよ?フラビオ。我らがいなくなればあっという間にワールハイトの政治は難しくなる。周辺の都市も黙ってはいないだろう」

「ああ、そっちは大丈夫ですよ?ユニオン、ニゴ帝国ともに絶縁状態ですし、ワールハイト連合に参加している都市たちはすべてウチの商会の傘下にありますから。まあ、聞き分けの無い人たちには出て行ってもらいましたけど。父上。あなたも大人しくしてくれさえすれば、隠居生活くらいはさせてあげますよ」

「ぐむむ‥」



 僕らは、この戦争が始まる前から、商会の規模拡大とともに、ワールハイト連合に参加する都市へ金銭の貸付をしていた。どこも財務面では厳しく、とにかくお金を必要としていた。中にはその状態でも贅沢をやめようとしないところもあったが。


 お金を借りたら、返さなければいけない。当たり前の話だ。しかし、どこの都市も返済のあてはなかった。そのことはある程度の規模の商会であれば予測が付くため、どこも貸さなかった。貸しても踏み倒される結果が見えているからだ。実際過去に何度も起きていることだ。


 そこを僕らは敢えて貸した。


 当然のように返済はできないと言われる。普通の商会ならこのまま泣き寝入りするしかないが、エルラノーア商会の場合は、担保として都市そのもの。行政権や街の運営権を取る契約をしていた。力で抵抗するなら、こちらも思う存分力で対抗するだけで、秘密裏にワールハイト連合に参加している都市を掌握していった。


 フラビオ先輩は続けて言う。



「ああ、そうそう。父上は隠居で済ませますが、他の人たちはそうもいかないですよ。貴方たち、ニゴ帝国とつながっていますよね?」

「「「!!?」」」

「あ、何も言わなくても結構ですよ。証拠となる金銭のやり取りなどをしている帳簿とか証拠は色々ありますから」

「これ写しです。ご確認を」



 そう言って写しを配る僕。アイテムボックスに入れていたから手ぶらにみえるだろうけど。写しなので、なくなっても構わないやつ。これだけで証拠としては十分でしょう。


 取り巻きたちは以前から戦争の形勢不利を見て、ニゴ帝国に情報と金銭の提供をし、敗戦後すべての責任を領主に押し付け、自分たちは亡命するつもりだったようだ。中には領主の子供たちを戦場で暗殺することも計画している者すらいた。


 そりゃ、領主の息子たちに特に意見するわけでもなく、放っておくよ。下手に意見して処分されたくはないからね。

 

 取り巻き立ちを全員、騎士団が連行していき、残ったのは僕らと騎士団長、副団長、前領主だけ。

 自分に味方がいなかったことに気が付いて、落ち込んでいるような様子の前領主。ぽつんと漏らす。



「これも因果応報というやつか」



 そのつぶやきに反応したのはフラビオ先輩。



「そうですね。父上も領主の地位を兄たちから奪ったのでしょうし」



 前領主は元々3男。兄2人は成人後、病死となっている。今となっては証拠はないが、そういうことなのだ。

 そして支持をしたのが、取り巻きとして中心にいた者たち。彼らはその時から色々悪事を働いていたが、もみ消した。または、どちらに転んでも良いように日和見な動きをしていた。



 騎士団長、副団長に連れられて退出する前領主。それを見ながらエルドがフラビオ先輩に声をかける。



「フラビオ先輩、ここからですよ」

「ああ、わかっているよ。まずは捜査と、文官たちの仕事の確認だな。加担していたのが他にもいるだろうし」

「それと、新領主就任のあいさつもですね」

「あ~、そんなのあったな。は~。めんどくさい。やっぱりエルド代わってよ」

「無理です。あと10年以内には国作りますから、それまで頑張ってください」


 こうして11歳にしてワールハイト領主となったフラビオ先輩だった。

次回更新もまた日曜日で文字数も同じくらいになるかと思います。

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