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魔神配下のダンジョンマスター  作者: にゃーにゅ
建国編 ワールハイト・ユニオン戦争
213/287

213.ワールハイト-ユニオン戦争・裏(前編)

予定より長くなってしまったため前後編に分けました。その分、今回は3話分の文字数より若干少なくなりました。(だいたい2.5話分くらいの文字数です)



 時は少しさかのぼり、開戦後、僕が戦場を離れたあとのエルド傭兵団。



「あー、しんど!!」

「‥というか、あれはないよ」

「行ってすぐに前線が崩れて。撤退だもんな」

「馬鹿の一つ覚えみたいに“突撃”しか言わない指揮官だというのがよく分かった。なんの策もない」



 などなど、傭兵団員から口々に不満が出るほどの状態になっていた。


 それでもエルドの指揮のおかげか傭兵団員に軽度のけが人こそいるが、死亡者はいない。そして、その様子を見て、ライドがエルドに言う。



「うちの団員でも音を上げ始めたな」

「まあ、ただ行って、戻ってきて、しかも夜は寝れない。じゃ休まらないからね」

「この分だと、他のところはもっとひどいことになっていそうだな」

「おそらくね。何も知らないのはウチの司令部とかお偉いさんだけさ」

「‥このままだと明日は負けるぞ?」

「そんなこと言っても、僕はこの戦争の指揮官じゃないからね。せめてウチのかわいい団員たちに被害がないようにするだけさ」

「確かに。こんなところで命を落とさせるわけにはいかねえ」

「それに、そろそろ頃合いだと思うよ。イオも戻ってきたみたいだし」



 エルドが言うように、僕は『憑依』でホムンクルスへと戻ってきたところだ。



「おかえり」

「よう」

「ただいま。明日の動きの確認をするから幹部だけこっそり集まって」



 戦地で指揮官以外の兵が集まって話をするのは内乱などの疑いをもたれる可能性があるため、こっそりと集まることにした。普通はこっそりとすらできないのだが、軍規も緩んでいるので、集まることができる。


 僕はそこで、翌日の戦闘中にほぼ間違いない確率でニゴ帝国の介入が起きると伝え、あらかじめ決めてあった動きをすることになった。


 そう。僕らはニゴ帝国の動きを普段の商業活動の傍らで掴んでいた。あとは僕がダンジョンマスターの力を使って情報収集すれば、完ぺきに詳細な動きはわかる。この情報を持って、傭兵団としてどう動くか?をエルドが決める。最近はこのような役割分担ができつつある。



 そして翌日の戦闘開始後、ワールハイト軍はユニオン軍に蹴散らされ、撤退しているときに、左翼側からニゴ帝国軍が軍事介入。ワールハイト、ユニオン両軍に攻撃を加え始めた。

 

 一方、エルド傭兵団がいるワールハイト軍右翼はユニオン軍に蹴散らされたものの、ニゴ帝国軍から最も遠い位置にいたこともあり、撤退のみに全力を注ぐことができた。しかし、それはユニオン側も同じで、追撃のみに全力を注いできたため、ワールハイト側からすると激しい撤退戦を繰り広げることになった。



「チッ!!ユニオン側は状況がわかっていないようだな!仕方ない俺が出る。殿しんがりはまかせろ!!」



 そう言って、ライドは逃げ遅れている団員を救うべく殿しんがりでユニオン軍の追撃を遅らせるためエルドたちがいたところから出ていく。



「あの馬鹿虎だけだと不安だから私も行くニャ!!」

「オッケー!ミーア、任せた。僕とルルは今までどおり撤退しつつ、逃げてくる団員たちの援護だ」



 エルドは指示を出しつつ、逃げてくる団員の援護とルルたち後衛の護衛をする。


 そして、僕とノフスはワールハイト本陣がある高台の左後方200mほどのところにある木の上にいた。



「では、始めようか?ノフス」

「了解!しっかり狙うよ!」



 そういってノフスはワールハイト本陣・・・・・・・・を狙い撃つ。


 通常の腕や弓矢ではこの距離を狙い通りに当てることはおろか、狙い撃つのさえ難しいが、ノフスは両腕に魔力を纏い弓矢を強化することと自身が持つ『狩人』の特性と風魔法を使うことで、この程度の距離なら楽々正確に狙い撃てる。しかも、強化されているので矢の威力も通常とは全く異なる。


 実際に、僕が魔力を多めにつぎ込んで距離を伸ばした『ファイアボール』の魔法をワールハイト本陣に叩き込み、混乱させつつ、司令官たちをテントから出したあと、ノフスは鉄の兜や鎧などを着ていてもおかまいなく、矢を貫通・・させている。



「しかし、これバレたら大問題だよね?大丈夫?」

「大丈夫だよ。ノフス。ここでの俺たちがやっていることは全部ニゴ帝国軍がやったことになるから。伝令役の騎士団の人以外、取り巻き含めてどんどんやっちゃって!あと、ワールハイト領主の子供たちは確実にね!」



 そう言って、適度にこっちの位置がばれないように、かつ、ターゲットが逃げられないように本陣に魔法を当てつつ、伝令が出たあと、全軍撤退の指示が出るまで続ける。



「じゃ、帰ろうか。エルドたちのところへ」

「エルドたちはうまく撤退できたかな?」

「大丈夫でしょ。むしろライドあたりがやりすぎないか不安だけど」



 そんなことを言いながら僕とノフスはあらかじめ決めていた合流地点へ向かう。



 そう、表ではニゴ帝国軍によりワールハイト、ユニオン軍ともに壊滅させられたことになっているが、実際はニゴ帝国軍の狙いはユニオンのみであった。ワールハイト軍左翼はユニオン軍の逃げ道を塞ぐことと、邪魔をされないように徹底して攻撃されることになったが。

 しかし、その行為がニゴ帝国軍漁夫の利作戦として、ワールハイトも徹底して攻撃したことの信ぴょう性を高める結果になった。




 その頃、殿でライドは僕の懸念通り、暴れまわって、いや暴れまわり過ぎていた。



「なんだなんだ。物足りねーぞ!」

「もっと来いや!!」

「こんなぬるい動きで良く今まで生き残っていたな?」

「はい、残念!」

「ホラ!もっと真剣にやれよ!」



 などなどライド絶好調。(笑)


 一人でユニオン兵100以上を相手に暴れまわっていた。武器は自分のを使わず、敵兵が持っているものや戦場に落ちていたのを拾って使い、駄目になったら別のを拾うなどを繰り返しているうちに、押し寄せるユニオン兵たちもだんだんビビり始めて遠巻きに見ているだけの者が増えて来た。だが、戦場は広い。ライドの戦いの様子を見て、回り込んでワールハイト軍の追撃に出る者たちもいる。


 そういった者たちの間を“紅い光”が稲妻のように駆け抜ける。そして“紅い光”が通り抜けたあとバタバタと倒れ、動ける者はいなくなる。


 正体は猫人族のミーアである。


 ミーアは他の獣人族同様、放出系の魔法‥『ファイアボール』や『ファイアランス』などは苦手だが、その分、体内系の魔法、特に身体能力強化が得意な猫格闘家だ。

 その強力な身体能力強化を素早さであるAGIに振ると、大抵の人は視認不可な速度での行動が可能になる。


 視認が不可なのだから、ミーアは急所を突いたり、手にはめた手甲についた爪で切り裂いたりと、こちらもやりたい放題。


 ちなみに傭兵団内でも最初は「猫パンチ」と呼んでからかっていた連中も実際にその「猫パンチ」をくらって胃の中身を全部ぶちまけた奴が結構いたりする。


 そうこうしているうちに追撃してくるユニオン兵もいなくなり、ライドは仕上げとばかりに持っている大きな木槌を地面に叩きつける。



「『ランドインパクト』!」



 槌術Lv2の技で攻撃力に応じた範囲を攻撃する技で、今のライドが使うと直径3mほどの範囲で小さいクレーターができる。持っていた木槌は反動に耐えられず折れたが、元々戦場で拾った物なのでライドにそれを気にする様子はなく、ユニオン兵の動きをじっと観察している。


 これをみて残り少なくなっていたユニオン兵は完全に戦意を喪失。追撃を止め撤退する。



「ほら、バカ虎帰るよ!」

「バカ虎はやめろ。バカ猫のくせに!」

「なんだと!!やり過ぎるなって言われていたのにやり過ぎなバカ虎のくせに!!」

「うるせー!いいから帰るぞ!!」

 


 などと仲良く?帰ってきたミーアとライドだが、



「2人ともやり過ぎ。まだあるんだからね?これで疲れて動けませんとか言ったら怒るからね?」


 

 一部始終を見ていたエルドに、そう注意されていた。まあ、注意されて反省はしても、忘れて、また同じことを繰り返すからお互いのことをバカだと罵りあうのだが。



 ちなみに、余談ではあるが、この様子を見ていたエルド傭兵団やワールハイト軍の生き残りから“暴虎”ライド、“紅い稲妻”ミーアと呼ばれるようになる。(ユニオン軍はこの後、ただでさえ残り少ないところをニゴ帝国軍の追撃に遭い、ほぼ全滅したので広まらなかった)



次回はまた一週間後でワールハイト―ユニオン戦争・裏(後編)を予定しています。

文字数はまた3話分で予定をしていますが、また2.5話分くらいになるかも。

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