212.ワールハイト-ユニオン戦争・表(5)
これでワールハイト-ユニオン戦争・表は終了です
今回のニゴ帝国、何とか漁夫の利を得るべく、戦えるところまで軍を整えるのが精いっぱいの状態だった。その状態ではブフラルを手に入れても、すぐにユニオンに奪い返される可能性が高かった。
そのため、ニゴ帝国は考えた。“どうせ奪い返されるなら、最初から手に入れない方が良い”と。
ブフラルはユニオンにとって西の要となる都市。この都市で徹底した略奪をすることで兵の士気が上がり、帝国の資金も増える。復興には時間と金がかかる。復興しても、以前のような強固な防衛ではなくなる。それは間違いなくユニオンの大きな負担になる。ニゴ帝国はこの時間を有効に使い、国内の引き締めをするのだろう。
後世の歴史家たちはブフラル陥落の要因に戦争への介入の際の用兵のうまさを挙げるだろう。
ワールハイト、ユニオン両陣営の主な戦力を足止めしつつ、一気に本陣を背後から叩く。それは完璧なタイミングで行われた。つまりそれだけの部隊を分けても機能する優秀な指揮官が多くいるということになり、しかもそれをしっかり統率しているということになるからだ。
一方、ワールハイト。
今回の敗戦で相当苦しくなった。
まず、人事面。
次期領主候補が一気にすべていなくなってしまった。しかも領主を支える予定の幹部候補や現幹部の跡取りや大商家の跡取りなども軒並み失ってしまった。
領主への非難轟々といったことになるのは容易に想像がつく。
市民感情も大きく悪化した。今回、多くの市民が戦争に参加していた。学校へ通う学生すら徴兵したのだ。それらの人々が大量に亡くなった。
しかも、給金以外のお金は出ない。葬式すらできない人も多数だ。
経営面も悪化した。
食料、装備、医薬品などなど、とにかく戦争にはお金がかかる。給金が最低限になっていることから、現場の兵士たちからも、財政面の悪化が噂されていた。
貿易も良くない。
戦争開始によりユニオンとの直接の貿易はなくなったが、今回ニゴ帝国との貿易もなくなることが予測される。そうなると、ワールハイトと接している勢力がないことから、物が入ってこなくなる。また当然、売る先もなくなったことになる。
一応、ドラゴンハンターの街があるが、遠く、年数回の交易があるかどうかといったところ、しかも、量も少ない。交易額が大幅に減るのは避けられなかった。
戦争終結後の2日後、ワールハイトから重大な発表があった。
領主の変更とそれに伴う、幹部、組織の再編だ。
新領主はフラビオ・ワールハイト
前ワールハイト領主の6男であり、最近できたばかりながら凄まじい勢いで拡大を続けるエルラノーア商会の会頭である。
フラビオが領主になることにより、エルラノーア商会の会頭は再度変更になる予定だ。
その新領主フラビオが簡易だが声明を出した。
「私が新領主フラビオだ。兄たちがいなくなり、前領主であった父も此度の責任を取り、引退したため私が領主を引き継ぐことになった。今後様々な困難がワールハイトに襲い掛かるだろう。しかし、私は領民の生活を第一に、政治を行っていくことをここに宣言する」
次回はワールハイト-ユニオン戦争・裏になります。こちらはエルド傭兵団視点からの話になります。
次回更新は次の日曜日で文字数を3話分にして更新の予定です。