211.ワールハイト-ユニオン戦争・表(4)
状況説明回。
ニゴ帝国軍の奇襲。
これで、ワールハイト軍、ユニオン軍ともに大きな損害を受けた。
ワールハイト軍の左翼はユニオン軍とニゴ帝国軍。この2つの勢力からの攻撃を受け瓦解。逃げ切れた者は少なく、敗残兵として生き残った者も少数だった。
中央はユニオン軍により蹴散らされ、その後ろにある本陣はニゴ帝国軍に背後からの奇襲を受け壊滅。 本陣にいたワールハイト領主の長男、3男、4男、5男は全員戦死が確認された。そしてその周囲にいた取り巻きの大半も戦死。生き残ったのは騎士団の者たちだけであった。
そしてこれ以上の戦争の継続は不可能として、生き残ったワールハイト全軍の即時撤退を決める。ワールハイト軍の生き残りはニゴ帝国軍から最も遠いところにいた右翼に配置された兵たちが大半であった。
一方、ユニオン軍はワールハイト軍をせん滅しようと前進して隊列が間延びしたときに横っ腹を突かれた形になったため、こちらも右翼は完全に瓦解。さらにその状況を本陣へ伝えようと兵を送ったが、連絡兵が本陣へ着いたときにはすでに本陣はニゴ帝国軍によって落とされており、生存者は絶望的な状態であった。
ユニオン軍もこれ以上の戦闘継続は不可能として即時撤退を決めた。しかし、彼らにとって不幸だったのは、ニゴ帝国軍はユニオン軍の処理とブフラルの攻略を目標としていたことだった。
撤退をしている最中、ユニオン軍は徹底的にニゴ帝国軍から追撃を受け、数を大きく減らし、ブフラルの領主にユニオン軍の壊滅と司令官である長男の戦死が伝えられた時には、すでにニゴ帝国軍の包囲が完成していた。
さて、本来ならワールハイト、ユニオン、双方ともニゴ帝国からの介入は本来絶対考慮しなくてはいけなかったはずだ。しかし、今回はニゴ帝国の内部での混乱により、動けないと言う前提があったため、双方でぶつかることになったのだが、1年近く経てば、軍を動かせるくらいはできるようになる。
通常なら、そのようなことはワールハイト、ユニオン両陣営とも把握している。しかし、今回のニゴ帝国の混乱、トトークの引き抜きに始まる混乱だが、実はニゴ帝国の皇帝と宰相以外の全幹部が入れ替えとなってようやく収まったほどであった。
つまり、それほどの混乱が1年で収まるわけはない。ニゴ帝国は内乱に陥ると両陣営とも予測していた。だから、雌雄決着をつけようと戦争になったわけだ。
僕が間接的に今回の戦争の引き金をひいてしまったと言えなくはない。しかし、この事態は起こるべくして起きたものだと思う。そう思おう。決して僕が悪いわけではない。悪いのはあくまで戦争を始めた人たちでね。…だめ?
‥などと現実逃避をしたが、ニゴ帝国軍は今回、斥候からの報告でワールハイトが敗走する前のタイミングで侵攻したが、これはユニオンの警備隊とワールハイトへの侵攻部隊との挟撃を嫌ったためだ。また、これ以上介入が遅くなると、ワールハイトは敗退。ユニオン軍がそのまま侵攻してくれれば良いが、ブフラルに戻ってしまう可能性もあったため、ニゴ帝国軍がユニオンを叩く絶好機を逃さないための、この介入のタイミングであった。
さて、ニゴ帝国軍に包囲されたブフラルだが、守備隊の人数が圧倒的に足りなかったこともあり、あっさり陥落。ブフラルの領主は領民を置いて逃げようとしたが、包囲を突破できず戦死。
しかし、一番不幸だったのがブフラルに住む人たち。
ニゴ帝国軍はブフラルの街から略奪の限りを尽くし、井戸や飲料用の水などに毒を混ぜて撤退したのだ。
ブフラルの支援に向かったユニオンの部隊が見たのは荒廃したブフラルの街。建物は壊され、金目のものはすべて持ち去られ、あちこちに死体やごみが散乱した状態の街。
再生には長い年月がかかることは容易に想像がつく有様。いや、そもそもここからの復興が可能なのか?と疑問に思わざるを得ない状態。支援を受けたとしても、ユニオン側の負担がかなり大きいだろうという予測がつく。
これがニゴ帝国の目論見の一つであった。
次回、日曜日に更新の予定ですが、その次は1週間開けて日曜日更新の予定です。その分3話分の文字数とする予定となっております。