21.春先のダンジョン
ここからはやっと物語が進展していくはず。
雪が大分解けてきて、若草が見え始めたころ、まだ肌寒いときはあるようだ(僕はダンジョンにこもり切りで、ダンジョン内は気温変化があまりないからわからない)が、人が歩く分には問題なくなってきたころ、北の村から20人ほどの傭兵らしき人が僕のダンジョンに近づいてきている。
「予想どおり来たねぇ」
『ええ。主様の棲み処たるダンジョンを荒らしに、愚か者どもが来ましたね。このダンジョン到着までは半日ほどありそうです。では、予定通りせん滅ですね?』
「いや、そんなことしないよ!?前に放置するって決めたでしょ!?なんでそんなに好戦的なの、シャールさん?」
『‥え?あれ本気だったんですか?』
「本気だよ!?あの人らには、こっちから手はださない。無視する」
『‥無視ですか!?では裏から人間どもを意のままに操ってダンジョンで飼うのではないですか?』
「いやいやいや。しないしない。何そのどこぞの大魔王的発想は!?そんな面倒なことはしないし、できないよ。情報何もないし」
『では、人間どもにこのダンジョンを好きにさせると?荒らされるだけですし、下手すると死にますよ!?』
「いやいや、落ち着いて。シャールは過去に人間に対して色々あったんだろうし、人間嫌いなのもわかったけど。今来ている人達のステータス見てるけど、はっきり言って、上層の生まれたばかりのゴブリンならいざしらず、ちょっと下の方にいる普通のゴブリンより弱いよ?しかも数はこっちが圧倒的に上で罠もあるし。ダンジョンコアどころか3層目に来ることさえできないと思うよ。この人達」
そうなのだ。鑑定でステータス見てるけど、スキル含めて本当に大したことないんだ。この人たち。一方うちのダンジョンモンスターたちは3層以降で食糧確保のために戦っている部隊はレベルアップが著しくてかなり強くなっている。各種族にエースと呼ぶべき強者もいる。さらに罠も配置してある。
この状況でダンジョンに突っ込んでくるなら、救いようのないバカだと思う。その場合なら結果的にはせん滅になるけど。
なので、僕はダンジョンにひきこもって、ひたすら観察。彼らは定期的なDP収入源となってもらう予定だ。
「あと、この人間たちは盾にもなってもらうんだから」
『??盾ですか?』
「そう。森にいる。熊とか蜂とか色々からのね。少なくとも時間は稼げるでしょ」
仮に森の魔物が来たとして、最初に戦うことになるのはうちのダンジョンモンスターではなく、ここに拠点を作るだろう人間たちだ。
この辺に拠点を作らない可能性はおそらくない。近くの村から約20km離れているここは彼らにとっては新たな領土という認識をするはずだし、現代日本の20kmは車で3~40分もあれば十分だが、この世界ではほぼ1日がかりの移動となる。
そして、今回はこの周辺地域の技術力、建築力を見ることができるいい機会となる。情報も入るし、DPも獲得できる。いいことしかないと言ってよい。
今回のダンジョンコアのレベルアップでは新機能の追加は特になかったが、機能の強化がされている。
特に注目は召喚石の設置だ。召喚石は1日4体の設定したモンスターをずっと召喚し続ける。破壊はできるが、1日で復活する罠だ。コストはそのかわり高い。設定したモンスター1体の召喚に必要なDPの100倍が設置コストとなる。その分永久召喚のため、いつかは利益が上回る。今回は北の人間が集落を作るであろうダンジョンにもっと近い入り口から入れる階層の1階に最低ステータスのゴブリンを設定したのを1つ置いた。これがしっかり機能してくれると良いのだが。
次回は入植者?開拓民?中心の話となる予定です