204.来客
なんとかセーフ
ワールハイトに戻ってきた僕への来客がいるということだった。そもそも僕への来客というのがほぼいないのだから、非常に珍しいことだ。
来客は現在ワールハイトの宿に滞在して僕が帰ってくるまで待つことにしたそうだ。そのため、今は帰ってきた旨を連絡したところ、「これから向かう」と連絡を受けたところだ。
当初、来客は「エルラノーア商会の会頭に用がある」ということで、現会頭であるフラビオ先輩が対応したが、代替わりを知らず、「イオに用がある」と言うのだ。用向きも「申し訳ないが、先にイオに話をしてからでないと話せない」とのこと。
一体、誰で、何の用なのだろうか?しかし、非常に気になる対応と言葉であり、無下に断ることもしない方が良いだろうし。
などと、色々考えているうちに来客が到着した。来客は見覚えのある金髪の美女だった。
いや、別にそういうお店の女性とかそういうのではない。だが、彼女がなぜワールハイトにいるのか。
「久しぶりね。イオ。あなたはここではこの姿なのね」
などと、部屋に案内されて、そう言ってきた女性。ドラゴニュートのルナハーンさんである。
ダンジョンバトルで死んだが、ダンジョンバトルでの死亡はなかったことになるから、現実では生きているのは知っていたが。
「えーとお久しぶりです。ルナハーンさん。…なぜあなたがここに?そしてあの人の直属の部下なのに、どうやってここに来たんですか?」
「アハハ!ハーンで良いさ。私はあのお方直属だけど、領域からは外れて、改めて主従契約を結んでいるからね。こうやって商人としてあちこちに動くのに都合が良いのさ」
「なるほど、えーと、ドラゴニュートというのは黙っているので、僕がダンジョンマスターだと言うのも黙ってもらえると助かるのですが」
「ああ。了解さ!」
今の会話を解説すると、竜王直属の配下であるルナハーンさんが、なぜ、直属の配下のダンジョンマスターではない僕の領域内にいるのか?もちろん、僕は許可を出していない。
その答えとして、一度ダンジョンマスターとモンスターとしての関係を切り、野生の魔物となった上で契約魔法による契約で改めて配下になったということだ。
確かに、ダンジョンマスターの直属のモンスターは他のダンジョンマスターの領域に勝手に入ることはできないが、野生の魔物なら、問題はない。…完全な裏ワザだと思うが。
もちろんデメリットもある。野生の魔物扱いなので、現在以上の力を得ることはできないことや進化もできない。また、ダンジョンマスターの力の行使もできない。
「では、お話を伺いましょう。僕だけじゃないとダメなお話でしょうか?」
「そんなことはない。今回はイオへの挨拶と商談だからね。こっちの部下も連れてきているし、そっちも部下交えて商談といこうかね?」
「わかりました」
そう言って、商談のために人を集めつつ、会議室へ向かう途中、
「あれ、イオさんのコレ?」
「あんな美人うらやましいぜ」
「いつの間に」
とかなんとかヒソヒソ話しているウチの従業員ども、コソコソ見てないで働け。
ルナハーンさんの服装で一部の鱗も隠れているため、人と全く見分けはつきません。