202.新規入植者の処遇
「最近は儂も耄碌してもうてなぁ。今じゃできんことの方が多くなってしまった。ほんに歳はとりたくないものじゃ」
そんなことを言う白髪の目立つお爺ちゃんがカミロさんという元傭兵で、逃亡者の村へ流れてくる犯罪者などの性質のあまりよくない人たちへ仕事を与えたり、暗黙のルールを教えたり、違反者の処罰などをしている、村の裏の顔と言って良い人だ。
カミロさんの話を要約すると、人の流入速度、人数共に多すぎて手が回らないところが出てきているため、一部が暴走して荒らし回っているということのようだ。そもそも仕事と言っても村にはほとんど仕事らしい仕事はない。
開拓をして新たな農地を作るなどをしない限り、食料は手に入らない。
食料が手に入らない者はどうするのかというと、そのまま餓死するか盗むか、するしかない。どちらにせよ治安は悪くなる一方だ。
「食料確保に問題があるのが一番の原因と思っていいのかな?」
「エルド坊の言う通りじゃ。そこが今も昔も一番の問題じゃ。周囲の魔物の関係もあってなかなか開拓は上手くいかんからの」
カミロさんの言う通り、村周辺の土地は比較的温暖な気候で地下水なども豊富、土地そのものも畑にするには良い土なのだが、魔の森が近いことや、今までほぼ人が入ったことがないため、弱いとはいえ魔物が非常に多い。
いや、弱い魔物だからこそ、繁殖能力は高い。そういったことで開拓は困難で、現在は村の周囲を少しずつ開拓している状況になっているが、あまり大きくは開拓できない。
カミロさんは、新規入植者に対して、開拓の支援、つまり食料が栽培されるまで、食事の面倒を見て、開拓が上手くいき、食料が生産されると、できた食料の一部をもらう。そうして集めた食料をさらに別の入植者の支援に回す。ということをしている。まあ、村唯一の大地主のような者と思って間違いない。
僕はこの地の発展を望んではいるが、それはあくまでこの地に住む人たちによる発展であって、僕がすべて、与えるだけ与えて発展させるつもりはない。そのことはエルドたちには、はっきりと言ってある。
「どうする?何かいい案はあるかいエルド」
「‥そうだな。とりあえずシメるか。その新規入植して暴れている奴ら」
聞いてみたら、‥力業な答えがエルドから返ってきた。なので、僕はこう返す。
「何?そのライド的脳筋な発想」
「オイ!誰が脳筋だ。イオ!」
ライドからの抗議は無視するとして。というより、自覚無かったんかいライド
「その驚愕の顔やめろ。スゲーむかつくから。ってか皆かよ!?」
皆から驚きの顔を向けられて、若干落ち込むライド。
「ライドのせいで話が横道に逸れたけど、エルド、どうしてそうしようと思った?」
「話が逸れたのはオレのせいなのか?」
ライドのつぶやきは聞かなかったことにして、エルドは答える。
「食糧支援はカミロさんや俺たちがするとして、仕事として城の建設や周囲の開拓をしてもらうのにちょうど良いだろ?周囲の魔物の掃討は俺たちがすれば良いわけだし」
これで城建設の労働力の入手のめどがたちました。
次回投稿は日曜日の予定ですが、自分の諸事情により月曜日にずれ込むかもしれません。すいません。