201.村の状況
切りが良かったので、ここで投稿しました。
首都候補地の丘にある泉の水は、元々モンテス山脈とサウザンビーク山脈からの雪解け水が伏流水としてセントリクス大陸西部平原を流れている。その支流の比較的大きな1本から出て来た水が溜まったもので、栄養価が高く、湧出量も継続的に多めである。
その水は泉に溜まったあと、実は一部、僕のダンジョンへと流れてきて、腐敗湖へと流れる。そういうルートがあるのだ。
人が住む場合は泉の水を飲用もしくは農業用などに使い、下水をその腐敗湖へと流れるルートに戻せば、下水路の完成である。
丘は元々あった地形だが、泉はダンジョンマスターの力で作った物である。現状、魔物の棲み処となっている部分もあるので、今後、大規模な討伐が必要ではあるが。
僕らは丘から降りエルマンドさんのところへ。
エルマンドさんは最近さらに体が弱ってきている。以前は孤児院に頻繁に顔を出していたが、今では孤児院どころか、住んでいる家からすらほとんど出なくなっていた。エルドは食材などをエルドさんへ送っていたが、今回の戦争で送れなくなってしまっていた。よって、自分で持ってきたというわけだ。
エルマンドさんとは話をして、たいそう喜んでいたが、体が辛いらしく、しばらく話をすると眠ってしまった。そのため、僕らは居間でエルマンドさんの世話をする人や、行商人の人たちと話をする。
話題の中心はエルマンドさんの体調のことやユニオンの情勢、そして村の状況など。
「現在のユニオンは段々、状態が悪くなってきている。西は戦争で、東は貧富の格差が広がりつつある」
「そこを中心のカルナチョスがまとめようとしているが、意見がどんどん違ってきて対立しつつあるらしい」
「情勢不安で孤児や失業者が増えている。治安も悪化していて、街道には野盗なんかも良く出るし」
「東側で商売に一度失敗すると後は徹底的に叩かれ、再起ができなくなるから、余計野盗などになる人が後を絶たない」
「その分、この村へ移住者がどんどん増えている」
「良い人なら問題はないが、本気でどうしようもないのが入ってきている。まあ、そういう輩は出て行ってもらうだけなんだが」
「今はそうでもないぞ。とにかく村の人口が急に増えて、食べる物がなくなりつつある。元々仕事らしい仕事はほとんどないんだ。畑の開拓だって時間がかかる」
村の表のまとめ役はエルマンドさんになってはいるが、本当の犯罪者や逃げた野盗などといった人も村には来る。そういう裏の世界のまとめ役のような人が村にはいるが、彼もなかなか高齢になりつつあり、元々それほど人がいるわけではないので、まとめきれなくなってきたというところのようだ。
「これは一度カミロさんのところへ行って、話を聞いて、手伝えるところは手伝った方がよさそうだな」
エルドの言葉に皆頷く。カミロさんというのが先ほど出た村の裏の顔役とも呼べる人のことだ。
元傭兵で、野盗になりかけていたらしいが、この村、(集落?)の噂を聞いて賭けたというのは聞いたことがある。昔はともかく、今はただの気の良いお爺ちゃんという感じの人だ。
今週も金曜日に投稿予定です。